第4回〜真夜中の雨音と僕が見た夢〜

夜の雨音は静かに、僕を眠りの淵へと誘う。
アスファルトを叩く軽い音や、走る車の音なんかに耳を澄ませてみると、なんだか落ち着かなかった気持ちも安らかになってくる。目を閉じると、幼少期に部屋から見下ろした、雨に濡れてキラキラ光る夜の環状線の姿がありありと浮かんでくるのだ—。

ある日の真夜中、僕は眠れずにいた。明け方に台風が直撃をする予報であった。テレビを点けると、台風情報と選挙速報が代わる代わる流れていて、盆と正月が一緒に来たような夜だった。
フッと意識を失って、その後どれくらい時間が経っただろうか、僕は夢を見ていた。康司と近所の中華屋で食事をしている夢。
康司は僕の顔を見て、ただニヤニヤと笑っていた。弛んだ口元が恐ろしく気味の悪い顔だった。夢の中の僕は、その場を取り繕う様に他愛のない話を続けていた。康司は頷くことなく、弛緩した口元をこちらに向けている。やがて僕の話も枯れてくる頃、突然康司は口を開いた。

「お前は弟なんだから自由に生きてみたらいいんだ。好きな事を見つけて一生懸命続けるのだって、大変なことなんだろ?」「俺は囚われてる、楽しいこともないよ。でも失くすことは怖いことなんだ。」「20年後にこうなるなんて、誰が予想しただろうな。」
そう言って康司は店の扉を開けて、外から差し込む光の先に消えて行った—。

アラームの音で目が醒めてカーテンを開けると、台風一過の青空が広がっている。
僕は「台風予報なんていつも当てにならないな」なんて独り言を言いながら、誰の声も聞こえない家を後にする。

—「みんな、元気でやってるのかな。」

#小説 #家族 #連載

4

そこには無数の息吹があって

東京に住まう、とあるネオ核家族のお話。不定期連載。
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