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デザイン組織を作るうえで意識した4つのポイント

ここでいうデザイン組織とは「デザイナーの組織」ではなく、「デザインに向き合う組織」です。職能集団のことではありません。

全員でデザインする組織を目指しました。デザインという曖昧な概念に本気で向き合うためには、デザイナーという職種の人間だけでなく、組織全体で向き合う必要があると考えていたからです。デザイン組織を作ろう!という明確な経営判断があったわけではなく、なんとなく自然とその方向で進んでいました。そのなかで意識した4つのポイントをまとめてみました。

(1) 社長のデザインへの意識を育てる

これがデザイン組織を作るうえで一番重要な要素だと思っています。デザインに関与するパラメータを伸ばすという意味です。

(社長を育てる話ばかりになってしまいますが、、、)組織を育てるには、社長を育てるのが一番早いからです。全ての組織はトップのビジョンや人間の大きさによってキャップが決まるものだし、スタートアップのような小さな組織におけるトップの影響力は大きいはずなので、それをうまく生かすことで組織全体を育てていくのが最良だと考えました。

社長にはデザインへの意識や理解があるだけで良くて、意思決定や実行部分は僕や他デザイナーが補えば良いと思っていました。そのためにも信頼関係を作ることが必要になってきます。デザイン領域において安心して背中を預けてもらえるようにならないと申し訳ないのと、デザイナーの僕が経営に関与することでデザインが事業に貢献できることが証明できると思ったからです。

弊社の代表の場合は、もともとデザインに対する意識が高く、あまり僕が言わなくてもデザイン思考をどんどんアップデートしていくタイプなので、逆に彼の発言によって本質に気付かされることの方が多かった気がします。

(2) デザインはデザイナーだけのものではない

まず、デザイナーの専売特許のように扱われていたものを解放してやる必要がありました。非デザイナーがデザインに関わるために「デザインを決める義務は、デザイナーにあるわけではない」というメッセージを発信し続けました。

とはいえ、デザインに慣れていない人がデザインを容易に扱うのも危険なので、曖昧な言葉をできるだけ使わずに、レイヤー(事業/プロダクト/ユーザー体験/インターフェイス/スタイリング)とプロセス(観察/分析/理解/企画/デザイン)に分解したものをモノサシにしてコミュニケーションしていきました。そもそもの課題がどこにあるのかを明確にできるし、お互いの認識齟齬を埋めることで大きな事故は防ぎたかったからです。

「数字が伸びないのはユーザー体験が悪いからで、そもそもデータ量が少ないことが原因で、色味やレイアウトなどのスタイリングの問題ではなさそう」とか「ここの色を変えると目立つからユーザビリティは良くなるかもしれないけど、ここだけを変えてしまうとプロダクトの全体のバランスが崩れてしまうので、まずは文言変更レベルでテストしてみて、ユーザー行動の変化を観察してみよう」とか課題や手段をできる限り分解して、すり合わせていくようにしました。

(3) みんなをデザインの活動に巻き込む

デザインを決定する義務がデザイナーにあるわけではない、というメッセージを伝えるために非デザイナーをデザインの活動に巻き込んでいきました。活動を体験することで、徐々にデザインへの関心が高まると思ったからです。

デザインは主観ではなく、論理の積み重ねであるということを伝えるために、デザインに対しての正当なフィードバックをするように心がけました。フィードバックするうえで重要なのが「問いかける」ことだと思います。

「ここの改修したいので、まずデザイン作ってもらえますか?」とお願いされたとき、ただ引き受けるだけでなく「どんな感じにすると良いと思います?」とか「◯◯さんのアイディアはどうですか?」とまず問いかけてみる。最初は、なんでそんなこと聞くの?という反応もありましたが、徐々にみんな自分なりの考えを出してくれるようになっていきました。

もしその案がイケてなくても、「それならこっちの方がユーザーが迷わないのでこうしてみたらどうですか?」などの提案ベースにします。否定することは絶対に禁物。

そして良いアイディアが出たときは「それいいですねー!」と必ず賞賛する。褒められて嫌な気分になる人はいないし、何より「あなたでもデザインを作ることができた」という証明になります。

その成功体験を積み重ねることで、デザインに対する活動への関心が徐々に深まっていく、そういう地道な草の根活動を続けていきました。日常の業務や会話などのコミュニケーション、会議やディスカッションでの発言、共有するドキュメントにメッセージを込める、など常にこのメッセージを軸に徹底して伝えるようにしました。

(4) ガイドラインやルールだけでなく文化にする

事業活動の効率化を目的とした、手段としての「文化作り」です。組織全体に思考やスタンスが正しくインストールされている状態がゴールになります。思考やスタンスが同じであれば、あとは個人で勝手に動いていくだけで、軸が大きくぶれることなく前進できるからです。また、誰でも同じように任務を遂行できるような、再現性の高い状態を作らないとスケールしないと感じました。

ただ単にルールがあって、管理者の誰かがチェックする、そんな状態じゃだめだと思っています。ルールは存在するだけでは意味がなく、正しく運用されて初めて価値が生まれるものです。そのためには、文化レベルにまで昇華させる必要があると考えました。みんなが息を吸うようにルールに即した活動を行えれば、管理をする必要もありません。これを目指しました。

スタイルガイドなどのデザイナー向けのものだけではなく、ブランドやサービスを定義したもの、行動規範などの全社ルールに盛り込んだり、様々なルール作りと浸透の活動を行なっていきました。


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