陸軍と海軍の文化の違い
人から聞いた話なのだが…陸軍と海軍は文化の違いがあるそうです。
ぼくは、お芝居もチームで行うものだと考えています。
どんな仕事でもその組織で独特の文化があり、そうした文化が色々ある中で…ぼくは陸軍と海軍の文化を織り交ぜたものを劇団の活動、演出活動で目指しています。
▼海軍の文化
海軍は大きな船を動かすと言った特性から、すべてを報告する、という文化があるそうなのです。
例えば、見張り員が何か発見した場合、艦長まで決められた手順ですぐに報告する、といった具合です。
そして、艦長が判断し、艦の動きを決め、オーダーとして伝達します。
艦の外は海だから、外敵に漏れる心配はまずありません。
さらに大きな艦を動かそうと思ったら、ものすごい数の人間が同時に働かないと動きません。
しかし、艦の行動、意志は一つでなければいけません。
でなければ、混乱し、艦は動くどころか沈没してしまうかもしれませんから。
だから、すべてを艦長に報告し、判断があり、伝達されるそうなのです。
そうでなければ、大きい艦は動きません。
▼陸軍の文化
陸軍は一度、作戦実行命令が下れば、最終的には、単体または少人数で行動しするため「報告」はまとめて行われることが多いと言います。
「〇〇を撃破せよ」という命令の下に各自が適宜判断を行い、実行するわけですが、オーダーが完遂でいないような状況になった時に報告が行われ、作戦の変更や人員の移動などが行われるそうです。
各自が見たり聞いたりした状況をいちいち報告して、指示を待っていたら…
状況は刻一刻と変わっていくわけですから、敵にやられてしまうのではないでしょうか。
また、基本的に少人数で行動するので、海軍の文化のように報告や指示のやりとりも最小限にすますことができるというのです。
▼文化の違いがあっても・・・
こうした文化の違いがあっても、陸軍も海軍も普段から判断、実践、行動と言った部分を磨くために並々ならぬ訓練をされています。
ここには詳しく書きませんが、ぼくは、日本の海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊を尊敬してやみません。
何故ならば、ぼくらが知る由もない、見えない脅威から日夜ぼくたちを守ってくれているからです。
そこには色々な人の判断、実践、行動、工夫があるはずです。
自衛官の皆さん、日々、ありがとうございます!
話が少し逸れましたが、軍の人々は日夜の訓練を通じて、任務を遂行されておられます。
そこに任務の内容、特性によりそれぞれの文化が醸成されるのは当然のことだとぼくは考えています。
▼特殊部隊は・・・
そうした陸軍と海軍の文化、双方の特性を持ったが特殊部隊らしいのです。
詳細についてはやはり、特殊部隊の任務によって少しずつ違ってくるそうですが…まるっきり陸軍、まるっきり海軍と言えない文化を合わせもっているということなのです。
つまり、大きいものを動かす文化と各人が瞬時に判断する機動性のある文化、双方の特性を併せ持っているそうです。
▼お芝居の中で・・・
ぼくは自分が所属する劇団をこの「特殊部隊」のような双方の特性をもつ組織であったら良いなぁ、と思い目指しています。
もちろん、軍の皆さんの真似をしようというわけではありませんし、できようはずもありません。
しかしながら、考え方というか…海軍と陸軍の文化には劇団の稽古、制作、上演と言った各行動に沿うものがあるように感じているのです。
▼劇団の中で・・・
ぼくが所属している劇団新和座は活動開始から13年経ちました。
最初は「海軍」のような運用をしてきました。
これは、作られた当初が専門学校の同級生たちと先生(ぼく)だったから・・・学校の流れでそういうような運営の方が、スムーズだったのです。
時は移り、座員ももちろん歳を重ねてきます。
他のメンバーも増えてきました。
そうすると…経験を重ね、座員一人一人が、自分自身の理論も生成されてくるわけです。
この中にはぼくが思いもつかなかった考えももちろんあります。
そうした中で文化が少しずつ変わってきたのです。
海軍式の運営方法に、先に述べた陸軍の文化も融合してきたのです。
稽古でも制作作業でも…各々が自分の理論にのっとり、自分で判断し、行動に移し、何か大きな問題が起こった時には報告が行われる、こうした文化が少しずつ表れてきたのです。
つまり、特殊部隊・・・双方の良いところを合わせたような文化が少しずつ生成されてきたわけです。
▼劇場に入ってからは・・・
しかしながら、劇場に入ってからは、「海軍式」の文化の方が良いと考えていますし、その方が作業が早いのです。
報告を行い、指揮する系統は一つの方が混乱もありません。
もし、複数人判断する人間がいたとしたら…その複数人の意見が常に一致していればいいのですが…人間が違うのであれば・・・そういうことはまず、ありません。
複数人判断する人間がいれば、その数分判断があるわけですから、進みは鈍くなり、時間ばかりが削られていきます。
▼ぼくが目指しているもの。
上記に述べてきたように、稽古場と劇場入りした後では方法、考え方、文化を変えて行っています。
稽古や練習、などは「陸軍式」の文化もないと、多角的に見る事ができず、演出者の目だけではカバーできないところが多くなってくるように考えています。
稽古のやり方、自分たちの技術の磨き方、方法についても・・・議論をしながら、より進化したやり方を模索できるようになってきたのではないか、と感じています。こうすることで、一人だけが判断して他の人間が行動するよりも、より色々な見方ができ、実行できる空間となってくると考えています。
そもそも、稽古場だけでお芝居は創れるものではないと考えています。
稽古がない時は自宅で練習もするでしょうし、制作の作業する場合もあります。そうした、「稽古場にいない」時に、演出者の指示を待っていたら、時間がもったいなし、思うように進みません。
極端な事を言えば、「演出目標」に沿っていれば方法なんてなんでもいいですし、演出目標からはずれない限り、報告などいらないと思っています。
(もちろん、相談やつまったところは一緒に考えるようにしているが・・・)
▼今だからできること。
ここで大事なのは、意思の統一、同じ目標ということだと考えています。
目標が同じだから、行動がたとえ違うとしても、目標に向かって進む、ものすごい手前味噌なのですが…ぼくが新和座が好きなのはこの「目標に向かって進める」ということなのです。
目標に向かって、強制ではなく、自主的に「自分ができることを行う」ということができる環境である、とぼくは考えています。
座長以下ぼくも含めた座員が、目標に向かって、自分ができることをやり、時には提案し、人と協力していく・・・ぼくを含め、座員がある種の連帯感、ある種の信頼感を持ちながら行っていると感じています。
そうした中で…陸軍と海軍の文化を融合した組織、更に強い組織にしていこうと考えています。
確かに今は集まりづらく、公演計画も頓挫してしまっています。
行動計画も頓挫してしまっています。
結果、ウィルスに弱い組織でありました。
しかしながら・・・ぼくらの共通した目標はなくなってもいないわけです。
だから、必ず来る、我々人類がこのコロナ禍を払拭し、自由に活動できる日に向けて、変えるべきは変え、守るべきは守り…研鑽して参ります。
舞台演出家の武藤と申します。お気に召しましたら、サポートのほど、よろしくお願いいたします!