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STUDIOを創る上で大切にしている価値観 ~ 「作品」としてのサービスづくり ~

先日開催された、DIST.26 「Webサービスの個性を支えるデザイン」にて登壇させていただいたのをきっかけに、

・どんなことを大切にして、サービスを作っているのか?
・どんな思想でプロダクト、コミュニティ、ブランドをデザインしているか?

など自分の考えをまとめる機会があったので、せっかくなのでnoteにもまとめてみる。

サービス作りにおいて大切にしていること

僕は学生時代にWebの制作会社を立ち上げ、その後自分のスタートアップを創業するなど、これまでたくさんのWebサイト・Webサービスを作ってきた。そんな僕が一貫して大切にしていることは、

「単なるWebサービスではなく、1つの『作品』を作っているという気概を持つこと」

である。

数十年前まではWebサービス自体が珍しかったので、しっかりと動作し、便利であれさえすれば人気になることは出来たと思う。

しかしここ最近だと、WebサービスやAppは世にありふれている。

なので、一般的にWebサービスは、しっかりと機能さえすればいいと思われがちだが、僕はそんなことないと思っており、

そのサービスを使った人が
・いかに感動してくれるか?
・いかに良い体験をしてくれるか?

というのを意識してサービスを作っている。


「Webサービス」と「作品」の違い

わかりやすく、僕が考えている「Webサービス」と「作品」の違いを説明してみる。

Webサービスにおいて必要なことは主に3つ、

ちゃんと機能すること(バグだらけだと誰も使ってくれません)
・わかりやすいUI(良い機能があっても、理解されないと意味ない)
・見た目が綺麗なこと(やっぱり見た目はアグリーより、綺麗なほうがいい)


この3つがあれば確かにWebサービスとしてリリースすること、使われることは一般的に可能である。

では、それが「作品」になるとどうなってくるか?

作品になると、

・「ちゃんと機能する」だけでなく、使ってて楽しい!と思わせるぐらい圧倒的によく機能する
・「わかりやすいUI」だけでなく、「wow!」と驚くような体験を提供する
・「綺麗な見た目」だけでなく、独自性があって脳裏に焼き付くくらい美しい見た目を提供する

上記のように、すべてがWebサービスの1つ上の次元のレベルで提供することが大切になる。

違う言葉で説明すると、僕が思っている「作品」の定義は3つ。

・オリジナルの価値を提供できているか?
・使った人に感動を与えられるか?
・美の価値観を前進させられたか?


Functionalレベルではなく、「Emotionalレベル」で価値を提供する

わかりやすく、実例で「単なるWebサービス」と「作品」の違いを説明してみる。

単なるWebサービスは、いわゆる「Functionレベル」でサービスを提供出来ているものを指す。

例えば、「タクシー配車サービス」とか」「チケット購入サイト」とか。
こういったサービスはたしかに便利で使うけど、使ったときに別に感動はしない。
機能してあたりまえ」と思われていることが多いと思う。
なので、より便利なものが出てくると、簡単に乗り換えがおこる。

一方作品は、「Emotionalレベル」でサービスを提供できていて、ユーザーをファンに出来ているものを指す。


機能ではなく、「体験」にこそ価値がある

わかりやすい例でいうと、ソフトウェアではないのだがAppleの「Airpods」がいい例だ。
正直、Airpodsの機能自体はぜんぜん珍しくもないし、優れているわけではない。音もそんなに良くないし、バッテリーもすぐ切れる。

だが、「音楽を聴こうと思ってからの体験が、一番スムーズ」である。
これが感動するくらいにスムーズで、僕も含めてみんなこの「体験」にお金を払っているのである。
機能にお金を払うのではなく、体験に価値を感じているからこそ、ちょっと機能が足りなくてもみんな買う。
なのでAirpodsは、感動をする体験を生み出せれば、少し機能が足りなくても選ばれるいい例である。


Airbnbは、旅行体験全体をデザインしている

ソフトウェアの例でいうと「Airbnb」がいい例だ。
Airbnbは機能だけを見ると、単なる宿予約サイト。
しかし、彼らがすごいのは「旅行体験全体をすべてデザインしていること」である。

まずAirbnbはご存知の通りホテルではなく、一般の家や様々な場所に泊まれるサービスである。
なので運が悪いと、質が低い宿に泊まることになったり、嫌なホストに出会ったりすることもある。

しかし、そういったリスクを超えてでも行ってみたい、泊まってみたいと思わせる体験がそこにはあるのがすごい。

例えばこういった場所は、普通にExpediaとかで予約しようとしたら無理。https://www.airbnb.com/rooms/17605808

だが、Airbnbを使えば、こんなユニークな場所に泊まれて、現地に行ったら絶対感動するはずだ。「こんな旅初めて!」みたいに、すごい感動を生むと思う。

その感動を作れるのが本当にすごくて、Airbnbはその「感動を源に」旅行業界をディスラプトしている。

いままでのホテルは機能して当たり前、いわゆる機能的だった。どこいってもそんなに大差ないような。

一方Airbnbは、それを感情レベルで勝負している

なのでAirbnbはその感動を軸に、見てるだけでもワクワクするような感情に訴えるデザインが出来ているし、旅行自体の価値を前進させることが出来ている。

それが「作品」である。


感動をつくれますか?

ちょっと違う分野の例で説明してみる。
ジブリなどの映画の音楽を作曲していることで有名な音楽家「久石譲」さんの本に「感動をつくれますか?」というのがある。

その内容をとても簡単に要約すると、

「久石さんはただ単に音楽を作っているのではなく、音楽を通じて感動するような体験を作っている」

というような内容である。

ジャンルは違うが、「超一流は人の心を動かすような感動を作るのだな」と、その内容に僕の考えはだいぶ影響を受けている。

なので、ただ儲かるとか、ただ便利とか、ただ流行っているとかのサービスではなく、感動するようなサービスを僕も作りたいなぁと日々思い、STUDIOを創っている。


感動の作り方 ~感性とこだわりを磨く~

では、「そんな感動ってどうやったら作れるのか?」と自分なりに考えてまとめてみた。
すごくシンプルにすると、感動の作り方はこうだ。

感動 = 感性 x こだわり

ここでの感性は、いわゆる「センス」と同義語で使っている。

だが、多くの人がセンスと聞くと「私にはセンスがないからダメだ・・」などと言うのだが、そうではない。

感性(センス)は生まれ持った素質ではなく、「知識と経験の蓄積」である。

そのため、感性はいくつになっても磨くことが出来ると僕は考えている。


では、「どうやったら感性を上げれるんだ?」というと、これも3つの要素に分解できる。

1. たくさん良いものに触れること。
2. 自分の常識にとらわれないで、どんどん新しいことに挑戦すること
3. しっかりとこだわりを持って創り上げること。

これを繰り返すうちに、感性は磨かれるのだと思う。


しかし、先程の式にあったように「感性」が高いだけで、そこに「こだわり」がないと感動するものは生まれない。

なにがあっても諦めない、自分が納得いくまで徹底的にこだわり抜くことも「感動」を作るうえで非常に大切である。


~前半終了~

長くなってきたので、前半と後半に分けてまとめることにした。

後半では、

・実際にSTUDIOではどんなことに気をつけてサービスを運営しているか?

・STUDIOを構成する3つのデザイン要素

などについて書こうと思う。


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