「煎茶道×ビジネス×テクノロジー」を融合した新しいライフワークをされている、沼野利和さん

小笠原流煎茶道とビジネススクールで教鞭をとられ、「煎茶道×ビジネス×テクノロジー」を組みあわせたユニークなライフスタイルを過ごされている沼野利和さんにお話しをお伺いしました。

沼野利和さんのプロフィール
沼野利和事務所 代表
グロービス経営大学院准教授
公益財団法人小笠原流煎茶道 評議委員・教授

ライフワークとして日本文化の普及にも積極的に関わっておられ、国際茶文化検討会(中国青島)、パリ日本文化会館(フランス)、黄檗文化訪日団歓迎茶会(京都宇治)等で煎茶道点前披露をする。現在、神戸にて煎茶道の教場を定期的に開催。

記者 国内外とさまざまな国際的なイベントで煎茶道のお点前を披露されてらっしゃいますが、最初に煎茶道をはじめられたきっかけを教えてください。
沼野利和さん(以降敬称略) もともと私は日本ヒューレット・パッカード株式会社で電子計測事業部のマーケティング部で勤務してましたが、今はグロービス経営大学院のマーケティングの講師をしています。
そんな私が煎茶道に接点を持ったきっかけは本当に偶然でした。ビジネスの場でお会いした経営者の方にご紹介いただいたのが最初のきっかけでした。最初、日本茶のおいしさにびっくりしましたね。お稽古をしてどんどんはまっていきました。

以前、家元と一緒に、南カリフォルニアの煎茶道の総支部の35周年記念祝賀会へ参加したことがありました。そこで日系何世みたいに代々、日本文化を現地で守り続けている人と出会って、日本で日本文化を学べる環境にいることがすごく恵まれていると感じました。これが私の日本文化の再発見でした。

記者 そうですね、日本にいると日本の文化が当たり前なので、それが貴重だとかあまり感じないですよね。煎茶道のどんな魅力に惹かれたんですか?

沼野 私が煎茶道にはまった具体的なポイントは、お道具の見た目の美しさ、可愛さや、お作法を通してお道具をきちんと並べたり、そういうのが自分の好みに合ってたんですね。几帳面じゃないですが、そういうのに心地良さを感じるんだと思います。

私が思う煎茶道の面白さが3つあります。
1つ目は、非日常のお抹茶と比べて、お茶の葉を入れる煎茶は日常的です。日常が、所作がお点前として美しい文化になりえるということです。2つ目は、そのお点前をすぐに自分でもお稽古として経験できるということです。道具の並べ方、お道具のもち方、手の運び方など、ひとつひとつに手を触れて感じることができるという点です。でも先生と同じように美しくできるかというとできないんです。これが3つ目の面白さです。何度もお稽古しないと簡単に身に着けることができないし、お点前に集中しないと上手くできない、だからこそ上達の達成感があるのです。

記者 ありがとうございます。日常にあるものが美しい文化になってしまう、すごいですね。当たり前が美しい、とても深いですね。煎茶道を通してご自身の深い体験などあったら教えてください。

沼野 お点前をしているときです。間違えずにやるのは当たり前で、間の取り方、手の動かし方。意識を集中させてお点前をすることが楽しくてしかたがない。フロー体験みたいな感じ。精神統一していて考えてるけど考えてない。体が勝手に動いているような、夢中になる感じです。

以前、お稽古でこんなことがありました。ある生徒さんが会社帰りにお稽古に来られたのですが、その日の仕事が大変だった様でとてもイライラしている様子だったんです。でもお稽古が終わったあとに、「気持ちが落ち着きました」って言ってくれたことがあったんです。他のことを考えず、集中するとリフレッシュするっていうのを人に伝えられた気がして嬉しかったです。日常でのストレスが癒されたり、そういうのを周りの人に伝えることで人の役に立てるのかなと思います。

煎茶道の中には、今を生きる人たちにとって大切な考え方があると思います。お稽古を何のためにするのか。それは、美しいことを美しいと感じるセンスを磨くこと。どういうものが美しいのかの基準を知らないと美しいと思えない。夕日、山、朝日の美しさもありますが、人の手をかけた工芸品とか、その形の意味がわかることで美しさをわかるようになります。花の形のデザインをなぜ使うのか、とか。決まり事には理由、背景があるということをわかるようになるんですね。

記者 今、煎茶道の教室をされてらっしゃいますが、どんなきっかけで始められたんですか?
沼野 去年から自分の教室を始めたんですが、自分の教室をやってみようと思ったきっかけは、日本文化に関心を持っていても、多くの人がその接点を持ってないことを知ったからなんです。例えば、30人くらいのグロービス(社会人向けのビジネススクール)のクラスで、煎茶道、知ってる人いますか?って聞くと、多くて2人とかです。煎茶道の話をすると、多くのビジネスパーソンの方も興味、関心をもつ人は多いけど、なかなか一歩踏み出せないんですね。そういう人たちに機会を提供したいと思ったのがきっかけでした。

記者 これからどんな美しい時代を創っていきたいですか?
沼野 そうですね、人をちゃんと思いやることができる、心の美しさを忘れない社会ですね。それが周りに広がったらもっといい世の中になると思います。

実は、ビジネスの世界で、相手を思いやることがマーケティングの本質でもあるんです。インターナルマーケティング。社員をどこまで思いやっているのかとか、相手のわがままを全部聞くのではなく、相手のことを理解していくこと。これがおもてなしにも通じるんですね

日常の中で煎茶道文化を身近なものとして、大人だけでなく子供にも伝えていきたいと思います。普段見慣れた風景や子どもの頃の経験って、いつまで経っても無意識に残ってるんですね。

それを感じたエピソードがあるんです。私の祖父母が趣味で表千家のお茶をやっていて、小さい頃から私の日常の中にお抹茶がありました。家に茶室があって、お茶をいただくときの礼儀とか、お正月もそこでお茶を頂いたりしていました。その小さい頃に無意識に経験してたんだって感じたことがあったんです。県民会館の和室を借りたとき、床の間に飾ってある「お軸」の高さを変えたことがあったんです。それを見た生徒さんから「お軸の高さってどのくらいですか?」と聞かれたんですが、言語化できなかったんですよ。「何となくこれぐらい」としか言えない(笑)。小さいころ毎日見ていた、お軸の掛かっている床の間の風景、その記憶が感覚的な判断基準になっていたんですね。小さい頃の経験や日常で目に触れる風景が自分の中に染みついているのかなと思うんです。だから日常の中で身近なものとして子どもたちにも大人にも伝えていきたいと思うんです。

記者 ありがとうございます。お話をお伺いしていて、本当に煎茶道のおもてなしとビジネスのマーケティングの世界がつながって、とてもビックリしました。一見、全然違うように見えるものでも、奥深い本質はつながっているんですね。今後の沼野さんの煎茶道の展開が楽しみですね!本日はお忙しい中、ありがとうございました。

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沼野利和さんの活動はこちら↓↓
●グロービス経営大学院  https://mba.globis.ac.jp/
●公益財団法人小笠原流煎茶道  http://www.ogasawararyuu.o
●マーケティング用語をシャワーのように次々つぶやくmarketing shower      https://twitter.com/marketingshower

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【編集後記】
本日インタビューを担当した泊、川名です。沼野さんのお話をお伺いして、静かな語り口調の中にある煎茶道に対する熱い想いを感じました。とても楽しそうな煎茶道に心が惹かれます。皆さんもぜひ煎茶道を日常に取り入れてみてはいかがでしょうか? 華やかなお道具にワクワクします!本日はありがとうございました。


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泊由美子

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