【短期集中連載第5回】落ちないための二回試験対策 検察③ 具体的戦略(例)

 一日に何本更新するんだという感じですが第5回です。これまでは検察起案の書き方について一般的な部分に多少(?)個人的な発想を交えながら簡潔に記載してきましたが,今回は検察起案当日の流れ,動きについて個人的にこういう方針でやっていこうと考えているものを提示していきます。これまで以上に多分に個人的な見解を含むものになるため,あくまで1つの例として参考までに読んでいただけたらと思います。

1 時間配分

 まずは当日の時間配分について。どこかで書きましたが筆者は検察が最も時間に追われる(時間配分が下手)科目です。理由はいたってシンプルで,午前中に記録を読んで間接事実を練り上げていくのですが,それに時間を費やしすぎていたためです。それで午後になって書き始めるのはいいのですが,その後の犯罪の成否等の検討が不十分のまま見切り発車してしまうために最後カツカツになる,というのが今までの失敗例です。というわけで,犯罪の成否等の検討に時間を割かなければならないのですが,そうなると犯人性の検討時間及び論述時間をこれまでよりも削らざるを得ないことになります。したがって,結局のところ,

①小問は最初の15~30分で早く終わらせてしまう
②午前中に記録を読んで犯人性(間接事実)と犯罪の成否等に用いる事実の振り分けを済ませる
③午後から(昼食後くらいから)はひたすら書く

という方針に落ち着きました。
 ①小問は悩むだけ時間の無駄なので,わかる範囲でさっさと済ませてしまうに限ります。ここでドンピシャの解答をしても,それで終局処分起案がスカスカになればトータルではむしろマイナスなんじゃないかと思います。
 ②③についてはこうならざるを得ないかなという感じ。検察起案はとにかく量が多いので午後一杯くらいは起案時間を確保しておきたいところ。そのために記録検討時間は今までくらいしか確保できないため,スピーディーに処理できるような工夫を考えなければならないですね(後述)。起案時間に関しても,犯人性で力尽きてしまわないように,なるべく冗長な記載は避けて端的に最低限のことだけ書いて,後で時間が余ったら挿入していく方針が(見栄えは悪いけど)安全だろうという結論に達しました。さて,吉と出るか凶と出るか。

2 記録の読み方

 時間の制約上,記録をじっくり読み込むのは1回か2回しか無理だと考えられます。そのため後で容易に情報にアクセスできるように,自分なりに記録を加工する工夫が必要です。一例としては,

①まずは起案要領の指示を確認(マーカーだけでなくどこかに大きく書く)
②信用性検討しなくてよいKS・PSがあれば記録に目印
③冒頭のVKSを読んで事案概要把握
④逮捕・勾留・弁録と記録終盤のAKS・APSを読んで自白の有無,変遷の有無を確認
⑤記録冒頭から読みつつ,間接事実にあたりをつけながら,犯人側の事情に赤マーカー,Aの事情に青マーカー,構成要件等に関する事情に緑ボールペン,のように色分け加工
⑥重要そうな事実には付箋を付けで概要と証拠をメモ

です。①はめちゃくちゃ重要です。マーカーするだけではド忘れするおそれがあるため,白紙の構成用紙などにペンで大きく条件を書いておくのも有益だと思います。書いたという行為自体が後で思い出すきっかけにもなりえますし。②も余計な記載をしてしまわないように,初めに分かりやすくメモなり付箋なりしておくといいです。また,起案に書くべき重要な事実を見つける手掛かりにもなりえます。
 ③④あたりは集合起案での時間の浪費の結果を踏まえて新たに取り入れたものです。初めに大枠を押さえてしまった方が分かりやすいよねという発想です。頭から読んでいると事案の詳細がつかめなかったり,変な先入観をもって読み進め,あとで違うことに気付くといった事態が生じえるので,どうせ読むのだから先に結末を確認したほうが個人的には早くなるかなと。変遷があるのなら逮捕前よりも逮捕後の捜査資料に重要な証拠があるだろうなという当たりがつけられます。
 ⑤⑥は誰でもやっていることだと思いますが,とにかく自分なりのルールをしっかり確立しておくことが重要かと。1つの事情が犯人性に関わることも犯罪の成否等に関わることもあるため,マーカーとボールペンのように2種類以上のマーキングができるようにしておくといいように思います。あとで事実認定に使うかどうかは置いておいて,とりあえず気になったらマークしておくといいんじゃないかと。また,以前は供述調書が出てきたら後で参照しやすいようにとりあえず付箋をつけるなどしていましたが,ぶっちゃけ開きやすくなるだけで個人的にあまり役に立たなかったため,必要最小限の付箋で済ませる方針に変更しました。

 繰り返しになりますがあくまで一例であり,どう記録を加工するかはいろんなパターンがありうるところです。自分なりのルールを確立しておけばなんでもいいと思います。

3 構成検討

 構成を検討する際には,紙にそのまま書き込んで整理するよりは,付箋に個々の事実を書いて白紙にペタペタ貼り付ける方法がおすすめです。順番を変えることなどもできますし,別のものに差し替えることもできます。付箋は2色配布されるので有効活用したいところ。具体的には,赤と黄が配布されたと仮定すると,

①間接事実として書こうと思っているものを赤の付箋に書いて貼る
②その下に認定プロセスで使う事実を黄の付箋に書いてどんどん貼っていく
③②において信用性検討が必要な供述がある場合には赤字で書くなどして一目でわかるようにしておく
④推認力検討で書きたい事情(反対仮説など)は赤の付箋で②③の下に貼る
⑤Aの弁解があれば赤の付箋に色ボールペンで④の下や①の右に貼る

といった感じです。背景が2色であることと,文字で2色以上使えることから,少なくとも4種類以上のグループを作ることができるため,ルールを決めてうまく情報整理ができるとめちゃくちゃ楽になります。

 この付箋で整理する方法は実務修習中の問研起案ではやらず,集合起案で採用しましたが,めちゃくちゃやりやすくなった(し,なんやかんや成績も上がった)のでかなりおすすめです。

4 起案作成

 書きなぐる段階に入ったら,あとはもう書くだけではありますが,時間の制約がある以上は,

①欲張らずになるべく端的に当たり前のことだけ書く
②内容ごとに時間と分量の目安をつけておく

と沼らずに済むかと。①上述のように,とりあえず書くべき最小限のことをさっさと書いてあとで時間が余れば挿入すれば充分です(し,ここまでしっかりやっていれば,挿入しなくても少なくとも不合格答案にはならないはずだから,何なら帰ってもいいのでは?)。②○時までに書く,〇枚以内目標で書く,といったゴール(上限)を作ってそれに向かって書くように自分を操縦できれば安心よね,という感じです。

5 危機管理

 以上がしっかりできれば何にも問題ないはずですが,世の中そううまくいかないことが多く,なんやかんやあって時間が足りない!という危機的状況に陥る可能性があるわけです。そうなった場合に頭真っ白で何も進まなくなってしまうといよいよやばくなってくるため,そういう最悪のケースが起きた場合にどうするか,という危機管理は常に持っておくともっと最悪の事態を避けることにつながります。いろんな想定ができると思いますので詳細は割愛しますが,とにかく途中答案にだけはならないようにしたいところです(検察集合起案で途中答案になりましたがおそらくお情けで評価をもらっている気がしてならない)。内容スカスカであっても最終的な結論まで到達できるように,残りの時間を最大限有効活用できるような方法を想定しておきましょう。

6 今からできる戦略

 これまで述べたことを踏まえて,超ざっくりとした戦略にも触れておきます。

⑴時間がある場合

 『検察終局処分起案の考え方』起案の講評はよくよく確認しておきましょう。答案再作成するとか,A評価の人の答案を見せてもらうとかして自分の答案を研究するのも有効です。さらに余裕があれば小問対策や構成要件対策で基本書等を読んだりすると良いかと。

⑵時間がない場合

 最低限,これまでのnoteに書いた起案のフォーマットと,自分なりの当日の戦略は確認しておきましょう。直前期は知識の不足が気になって分厚い本を読みたくなりがちですが,それ以上に何を書いたら評価されるのか,どう時間を使うか,見落としのないようにどう処理するかどいったパフォーマンス面に意識を向けた方が結果的によくなると思います。

 

 次回からは民裁です。同じ感じで書きなぐっていきます。


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