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機能を満たすデザインは美しい

建物でバリアフリーというとついつい車椅子や目が見えない人などにとって使いやすい、もしくは「バリアフリー=段差がないこと」だと思っている人が多いようですが、本来はバリアフリーというのは0歳から110歳まで、足が悪い人も、目が悪い人も、性格が悪い人も、日本語を話す人もフランス語を話す人もなるべく多くの人にとって、使いやすいことを意味しています。(性格が悪い人というのは冗談ですが)

単純にスロープをつければいいという話ではないのです。

実は3月に入って急にある小さなハウスメーカーから頼まれた現場があり、すでに外構の図面があったので、最初はその通り施工するだけだろうと思って、私の出番がないと思っていたのですが、どうも図面をみて「鼻が効いた」というか。

着工前にお客様と打ち合わせしていいかと確認して、昨日初めて現場をみてお客様と打ち合わせしたところ、書いてある図面では全くお客様が要望することが成立しないことがわかりました。

お洒落じゃないとかそういうレベル以前の問題が多すぎたのです。

そのご家族は4人家族で、奥様が体調が悪い時は車椅子を利用する(普段は歩ける)という状況です。

1階部分は玄関ホールから部屋までも段差がなく、全て段差無く車椅子で自走で動けるようになっています。
道路から玄関ドアまでも通常より低く20センチくらいの段差しかありません。玄関ドアまで2.5mくらいの距離で20センチ一直線のスロープ(斜路)になっていました。実はこれはよくやりがちな過ちなのですが、スロープを作る時目的地点では立ち止まって(車椅子を停止して)ドアを開けられるだけの平らなスペース(踊り場)が必要なのです。

それなのに、ドアまでずっと斜めの計画でした。下の図の赤い楕円の範囲は踊り場になっていないと使いづらいのですが、元の計画ではドアの近くまでずっとスロープとなる図になっていたのです。職人に何も言わないでこの図面を渡せば図面の通り作るので非常に使いづらいことになってしまいます。

また赤い三角の部分は右側の車庫から車が出るときに後輪が乗り上げる可能性があるとお客様から言われていたのに、車庫の舗装(白い部分)と段差がありました。

と言っても、上のグレーの台形の部分だけをスロープにしたのでは登る時はまだしも降りるときにちょっと危ないスロープです。

そこで

1.介助される場合車椅子が乗利上げる段差は何センチまで可能か
2.車が腹をすらないギリギリの勾配はどのくらいか

を1については車椅子を実際に押しているご主人にお聞きして、4センチと回答いただきました。2についてはいろんな資料を調べると11%の勾配なら腹をすらないとわかりました。

何しろ工事は木曜から始めることは決まっているので、早くプランを考えないといけません。

1,2の条件がはっきりしたので、やっとプランニングの始まりでした。
昨日持ち帰り、早速本日、上の図のように変更してお持ちしました。

グレーの部分はほぼ水平です。少し変測的な形ですが玄関ポーチです。その登る所は浮かし階段として、そこに間接照明を仕込みます。

時間があまりなかったので、スケッチは白黒になってしまいました。それでもこれで納得していただけました。妥協せずに考え抜いて良かったです。

門構えは家の顔です。スロープを意識するあまり、デザインは犠牲にしたくない。それにスロープは実は健康な人にとってはあまり気持ちが良いものではありません。バリアフリーは健康な人にとっても心地よいのが本質です。

あの図面のまま着工しないで良かったと思っています。

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