2023年5月 上州湯治紀行②【霧積温泉 金湯館 前編】
前回
5/21 群馬県みなかみ町〜群馬県安中市
7時半まで泥のように寝ていた
ぼんやりとした頭のまま朝風呂。42℃無色透明の硫酸塩泉が全身にキマり、一定の域まで達した。
湯上がりに玄米ご飯を頂戴した。御年78歳の親父さんの健康の為に炊いてあるものらしいが、存在を知っている客には出してくれるそう
珈琲処で親父さんともう1人の女性従業員(娘さんなのかな…? ヨシタカさんより義理の娘さんとの情報を頂きました)とまったりと談笑。親父さんからは様々な話を聴いた。
秘湯を守る会にお試し期間で入会したものの、ネット予約がほぼ主流の現代において確固たる優位性が見出せず入会をお断りしたこと、地元民の生活に根付いた共同浴場がある温泉街は良いこと、1人旅をして自分と向き合うことの重要性………etc
口コミでの訪問客も居るとの話題になった際、お二人の口からヨシタカさんの名前が出た。「愛車は1126(イイフロ)号」と言っていたので間違い無い。とても印象深いお客さんの一人であるようだった
「一人旅は自分と向き合える。人間は生まれる時も1人、死ぬ時も1人ですから」
親父さんが仰ったこの言葉、自分が言うのも烏滸がましいが、親父さんの人生のひとつの指針なのだと思う。
ひたすら話し込み、10時ちょうどにチェックアウト。中腰の姿勢で見送る親父をドアミラー越しに見ながら、金田屋をあとにした
本来食べるはずだった朝餉。川古温泉へと向かう前に、赤谷湖畔のローソンの駐車場で消費した
ぬる湯の名湯として気になっていた「川古温泉 浜屋旅館」は日帰り入浴休業日だった。外観のみ確認して、踵を返した
金田屋の親父さんにお薦めされた酒を購入すべく、たくみの里にほど近い「小松屋商店」へ立ち寄り
購入したのは精米歩合90%という異色の「香取」。ほぼ精米しないからこその米の雑味を楽しむ玄人向けの日本酒。自分はとても好みでした
県道36号へ入り、中山盆地を抜けた。「道の駅 中山盆地」にて発見した除雪車(多分)。現役なのかしら
道中、渋川市某所で見かけた味のある建築
R18に出てからは西へ。碓氷峠入口の「玉屋ドライブイン」にて、この日の宿へ到着予告の電話を入れる
県道56号へと入ると忽ち電波は圏外に。ここで事故る訳にはいかないと、一層注意を払い車を走らせた
県道56号の終点に宿の駐車場がある。ここからは一般車両の立ち入りが不可能な為、宿の送迎が来るのを待つ
「ホイホイ坂」なる山道を登り、徒歩で訪問するのも可能。普段であれば山登りを選ぶかもしれないが、今回の目的はおやすみ旅なので迷わず送迎をお願いしました
とてもシャイな中年男性スタッフがジムニーに乗って迎えに来て下すった。マニュアル車で極狭道路を力強く登っていく。
宿までの道のりには所々に雨水を逃す為の窪みがあり、ギリギリまで速度を落として乗客への負担を減らす配慮がみられる。ちょっとしたアトラクションのようだった
10〜15分ほど車に揺られると、眼下に見事な建屋が現れた。ついに来た、と気持ちが昂るのを感じた
送迎は宿の上手の道沿いまで。荷物を掲げながら急で不安定な階段を降りる
この日の宿、安中市「霧積温泉 金湯館」
明治17年創業の一軒宿。かねてから憧憬の念を抱いていた、秘湯中の秘湯
憧れの宿で行李を解く悦び。眼球をきらきらさせながらの投宿と相成った
平成になってから建てられたという新館101号室に通された。こちらも至る所を直し直しやっているそうで、部屋はとても綺麗
新館へ至る本館2階の廊下。ぎしぎしと鳴る床板と低い天井が、昔年の旅情を感じさせる
改めて玄関付近を徘徊。喜びに打ち震える心身をなんとか抑えながら、夢中でシャッターを切っていた
玄関脇の談話スペース
屋号入りのだるま。高崎産かしら
帳場付近。帳場の中では大女将がテレビジョンを見ていた
玄関から浴室へ通じる廊下は、明治16年から現存しているとのこと。意図的に創り出された「レトロ」には醸し出せない鄙び感
廊下にはこれまでの霧積温泉の歩みを記した手作りの年表が掲示されていた
念願叶っての沈没、即昇天。約束された優勝
38〜39℃の泡付き豊富なぬる湯がザーザーとかけ流され、常にオーバーフローしている
世間の喧騒から隔離された霧積川上流の山奥で、湯口の前に陣取りウヒラウヒラと異常な笑みを浮かべていました。
シャンプーとボディーソープは備え付けられている。水栓も有るが、自分は豊富な源泉を贅沢に使って身体を洗いました。
脱衣所の壁に吊るされていた分析表
こちらは廊下の壁に掲示されていたものです
入浴→布団の上で静止…を複数回繰り返した。楽しみな夕餉に備え、入念にコンディションを整える
夕餉。噂には聞いていたが、目の前にするとそのヴォリュームに少々たじろぐ
特に天ぷらの量がヤバい。写真では確認できないが、茄子や椎茸の下にも山菜の天ぷらが敷き詰められていた
極めつけはこの豚汁。米櫃よりもデカい器になみなみと盛られている。具沢山どころの話ではない
生酒「霧積」を頂きながらの夕餉だったが、食事に必死で酒が進まないという自分としては珍しい事態に陥った
昼食を抜いたこともあり、無事完食。「ご馳走様」と云って虚空を見上げました。
満腹のあまり、食後はこの位置で30分以上動けずにいた。
何とか落ち着き、再び浴室へ。自分が私淑する某TBSアナウンサーの色紙が玄関に飾られていた。翌日主人に話を聞いたところ、プライベートで訪問した時のものだという
終浴すると、21時前にも関わらず館内の灯りが落ちていた。この空間に存在しているという事実をひしひしと噛み締め、幸せな時を過ごした
身体が寝を欲したので、22時前には床に付いた
続く
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?