見出し画像

関西フィルハーモニー管弦楽団 第341回定期演奏会

■2023年10月27日(金) 開演 19:00 / 開場 18:00
大阪:ザ・シンフォニーホール

Artist
指揮:藤岡 幸夫(関西フィル首席指揮者)
ピアノ:角野 隼斗

Program
モーツァルト:ピアノ協奏曲第26番 ニ長調 K.537 「戴冠式」
エルガー:交響曲第1番 変イ長調 作品55


Tickets
詳細:https://kansaiphil.jp/concert/

主催:公益財団法人 関西フィルハーモニー管弦楽団
協賛:上野製薬株式会社
協賛:株式会社マイティワイン
特別協賛:ダイキン工業株式会社
文化庁文化芸術振興費補助金
(舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))
独立行政法人日本芸術文化振興会


はじめに

戴冠式は少し前に東京でも、藤岡マエストロ✖︎角野さん✖︎東京シティ・フィルでお披露目されており、その時にも聴きに行って、束の間天国を垣間見たと大感動。

↑その時の感想。

ソリストの角野さんは即興の名手。大阪は絶対変えてくるだろうなと思い、居ても立っても居られず、再び聴きに行ってしまいましたが……演奏、変えた所ではなかったです。より自由に音で遊ぶような、でもちゃんとモーツァルトなカデンツァがもう素晴らしすぎて、感動が止まらない……!

↑共演者の方のコメントが熱い……!

当日、忘れないうちにと、スマホにポチポチメモした内容を整理しながら、こちらに綴って行きます。
※記憶違いも多々あるかと思いますが、ご容赦下さいませ。

プレトーク

開演は19時からでしたが、18時40分より、藤岡マエストロよりプレトークがありました。

入った時に気付いて良かった!

最初に今回の公演に協賛された企業さん、上野製薬株式会社と株式会社マイティワインのお名前と、年間を通じて協賛されているダイキン工業株式会社のお名前を挙げた後に、角野さんの思い出から、お話を始められました。

・初共演は、二年ほど前に群馬の別のオケと。その時に、角野さんのタッチの美しさから、彼は良いモーツァルト弾きになると確信。彼もその意見を受け入れてくれて、この度それが実現。
先に東京シティ・フィルと戴冠式を披露したが、今日はその時よりも編成を絞って、室内楽のようにしている。

モーツァルトの曲は弾き手を選ぶ。タッチが美しい人が良い。

・モーツァルトは楽譜にピアノパートをちゃんと書かず、演奏会では即興で弾いていた。ベートーヴェンもそう。今回の戴冠式は特にピアノ譜が未完成な部分が多い曲。
皆さん、もうご存知だとは思うけど、角野さんは即興の名手で、この曲は彼に合うと思っていた。
普通に弾いただけだとつまらない演奏になる。

続いて、エルガーの交響曲第1番の話題に。
その内容について、事前にSNSにも載せられていたので、リンクを貼っておきます。

私の中では、エルガーは愛の挨拶の優雅なイメージだったので、びっくり。
今回は直前までバタバタしていて、曲の予習も出来ていなかったので、事前にこのお話を聞けたのは、本当に良かったです。
もし何も知らずに聞いていたら、冒頭から予想外すぎるサウンドの衝撃でノックアウトされて、ちゃんと曲を味わえなかったかも……と思います。

後、聴き所として、各パートの一番後ろの二人だけがそのパートの演奏をする箇所がいくつかあって、そうすると、その二人の音が少し遠くから聴こえるような形になり、立体的なサウンドになるんだよ、とのお話も。
その他、名前を忘れてしまったのですが、打楽器も古いものを使われていると言われていたように思います。(記憶が曖昧ですみません)

戴冠式

オケの皆さんが入場する際に、ハッとある方に目が止まりました。
先にも引用させて頂いた、チェロの向井航さん。
昨年、那智勝浦で、角野隼斗さんとヴァイオリンの寺下真理子さんの三人で共演されていたっけ、と記憶が蘇りました。

一度出来たご縁が再び繋がったんだなと、角野さんのファンとしては何だか感慨深く思っていると、最初の音出しが始まりました。
いよいよ楽しい音楽の時間の幕開けです。

第一楽章

最初、オケのみの演奏かと思いきや、角野さん弾いてる……?
ピアノを奏でる手元は見えない席だったので、気付くのが遅れましたが、耳をすませば、オケの音に溶け込むように微かにピアノの音が。

冒頭から、何だか楽しそう。
時折、微笑みを浮かべながら弾いている角野さん。

その様子を眺めながら、向井さんの右隣りのチェロの男性が終始ニコニコ。
そのお隣りのヴィオラの女性も笑顔。
第二ヴァイオリンの男性、角野さんの即興部分に差し掛かるとニヤリ。

とってもハッピーな雰囲気の中で生み出される音色は温かく、その中でコロコロと遊び心溢れる音を散りばめるピアノが何とも耳に心地良い。

編成を絞ったオケの音だからか、何だかモーツァルトが生きていた当時の、どこかの宮廷か貴族の屋敷にタイムスリップして、演奏を聴いているような感覚にもなりました。

穏やかな雰囲気がずっと続くかと思いきや、最後に角野さんがカデンツァで仕掛けてきましたよ……!
軽快なテンポで、音で遊ぶように楽しそうに駆け回る、駆け回る。
でも、モーツァルトっぽい!

そう言えば、プレトークで藤岡マエストロが、
モーツァルトらしいギリギリを攻めるカデンツァもありますので、その辺りもお楽しみ頂ければ……」
なんて仰っていたような。
このことか! と心中、膝を打ちました。

モーツァルトも活躍していた頃は、自身で即興演奏していたそうですが、実際こんな感じだったのかもと思わず想像しちゃいました。

以前に、角野さんとのだめカンタービレのコンサートで共演された茂木大輔さんも、角野さんを「モーツァルトが生まれ変わったら彼みたいな人になるかも」と言った趣旨のことを述べられていたような……と思っていたら、後日、チェロの向井さんのポストに茂木さんご本人がコメントを寄せておられました。(びっくり!)

第二楽章

ここから、雰囲気は少し変わります。
私の中のイメージだと、のんびり過ごしている昼下がり。
第一楽章では屋内で室内楽を楽しんでいる感じですが、第二楽章だと外で寛いでいるイメージ。

※ここから、私の頭の中の妄想が爆発しますので、ご注意下さい。あくまでも、個人のイメージです。

あまりにも穏やかな音色に、お城の中庭でゴロンと大の字になって昼寝でもしようかと言う妄想をしかけた時に、またもや来ましたよ。
中盤に、角野隼斗のカデンツァが!

どこか哀愁の漂う音色が、辺りの景色をガラリと一変。
今まで新緑だった庭園がじわじわと紅葉に染め上げられ、秋の彩りに。
そのあまりの絶景っぷりに、見惚れる私。

しかし、ハッと我を取り戻した時には、既に元の演奏に戻っていて、はて、今私は束の間の夢を見ていたのだろうかと、何やら不思議な体験をした感覚になりました。

この時の演奏の美しさは本当に格別で、私的にこの日一番感動した所だったかと思います。

角野さんのカデンツァの妙技が冴え渡った、素晴らしい演奏でした。

第三楽章

聴いている間、ずっと思い浮かんでいたのは、明るいオケの演奏の中、ずっと、ほわっとした光を纏った音楽の精霊が、ピアノの音と共にホールをくるくると円を描きながら飛び回ってるイメージ。

ここでの角野さんのカデンツァは、何か新しいものが今この瞬間、ここで生まれて来そうな、わくわくする、希望を感じるような演奏。
キラキラした光が鍵盤から溢れ出して、光の粒がホールに広がる、夢のような美しさ。

この時の記憶を言葉にするのが難しいのですが、私が自分の中のフィルターを通して受け取ったのは、そんなイメージでした。
この体験は、形にして残しておかねば、と強く思ったので、何とか文字に起こしております。

幸せな雰囲気のまま、ラストへ。
もしかして、今まで私は天国の入り口辺りを歩いていたのかも、と感じるような、至福の時間でした。

アンコール きらきら星変奏曲

ブラボーとスタンディングで興奮覚めやらない中、藤岡マエストロのピアノを弾くポーズ(アンコール弾きなよ、の意味かと思わます)に促され、角野さんが再び椅子に着席。

開口一番、「指笛の音が大きいですね」とのコメントに、みんなでウンウンと笑いながら頷きました。

この時、本当にお手本みたいに美しく、はっきりと高らかに聴こえる指笛が鳴り響いていたのです(笑)。
もはやプロの所業なんじゃないかと思う程に素晴らしい指笛。
この日のハイライトの一つとして、記憶に残る出来事でした。

「一曲弾きたいと思います。きらきら星」

おっしゃるや否や、少ない音数で始まった演奏に客席から笑い声が。
YouTubeでも彼が公開してる演奏動画の、レベル1のあれです。

笑い声が出ると言うことは、おそらく今日の客席には、角野さんにあまり馴染みのない方がたくさんいるのかも。

ここからの変貌ぶりがすごいのですよ。
しかも毎回違う演奏を聴かせてくれる、特別な時間なのです。

それを知っていると、耳をダンボにして、一音たりとも聴き逃すまいと必死になるあまり、笑う余裕がないファンは、私だけじゃないはず(笑)。

レベル1の間、私の後ろの男性は音色に合わせるように鼻唄を歌っていましたが、レベル2に上がるや否や、鼻唄が止まりました(笑)。

YouTubeとも全然違うバージョンで、モーツァルト風味マシマシ。
絶対音感をお持ちの観客の皆さんの感想によると、戴冠式とおんなじ調に変えて弾いていた模様。

モーツァルト自身が即興で遊ぶように弾いているのではと錯覚するような音色にうっとりしていると、今度はレベル3でジャズ風に変化。

これも、YouTubeのバージョンよりめちゃくちゃパワーアップしていて、最近、彼が活動拠点をNYに構えたことによる影響も感じさせました。
本場のジャズを彷彿とさせる、洒脱なアレンジが光る演奏でした。

レベル4からは概ねYouTubeの雰囲気が残っていましたが、全体的に音の厚みと迫力が凄くて、パワーアップ感が半端ない……!

コンマスの方が身体を揺らしながら、ノリノリで聴いていたのも印象的。

めちゃくちゃワクワクする、楽しいアンコール演奏でした!

エルガー:交響曲第1番

モーツァルトの興奮が凄すぎたので、ちょっと感想のボリュームが控えめになってしまって申し訳ないのですが、こちらも素晴らしい演奏でした。

人間って一面的じゃなく、多面的な生き物。エルガーの生き様がそのまま曲になってる感じ。

「人生って山あり、谷ありだよね。生きるってこんな感じだわ」と頷きながら聴きました。

曲自体が好みかと言われると、正直そこまででもないのですが、それでも感動したのは、藤岡マエストロと関西フィルの皆さんの気迫に圧倒されたから。

美しい音色に酔っていると、パワフルなサウンドにやられる、と言う波の繰り返しが、だんだんと癖になる心地良さで。

その内、もしやこの曲は、演奏のパワーにやられるのを楽しみながら聴くものなのでは、と途中から思ってみたり。

生で聴いたからこその感動があったと思う一曲でした。

おわりに

何とか、ここまで書き終えました。

コンサートに行くのは本当に至福なのですが、そのための休みを確保するために、直前まで大体仕事を詰め込んで、終わったらグッタリ……となりがちで、いざ身体を休めてからレポを書こうにも、もう記憶は霞の中、と言うのがお決まりのパターン。

思い出を形に残すのはなかなか大変。
X(旧Twitter)に呟く形だと気軽に残しやすい反面、後々読み返したいと思った時に探しづらい。

無理せず良い感じにすべての記憶を形に出来れば、と思うのですが、この辺はまだまだ手探りです。

個人的な思い出日記ですが、ここまで楽しんでもらえたなら幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?