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東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第352回 定期演奏会

プログラム
出演者
指揮:藤岡 幸夫(首席客演指揮者)
ピアノ:角野 隼斗
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

曲目
ラヴェル:組曲「マ・メール・ロワ」
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
ガーシュウィン:スワニー(アンコール)
黛 敏郎:シンフォニック・ムード
黛 敏郎:BUGAKU

藤岡幸夫さんによる、プレ・トーク


 開始二十分前に始まったトークコーナー。
 たまたま早めに着いたので、聞けてラッキーでした!

 曲について、事前にレクチャーしてもらっておくと、やっぱり聴き方が変わって来ると思うんですよね。

 トーク内容について、覚えてる部分を思い出に書き残しておきます。(あまり正確ではないかと思います。予めご了承下さいませ)

・「マ・メール・ロワ」

 「絵本みたいな感じ」の曲と言われて納得。どんな物語があるのかについては、各曲の感想の方をどうぞ。
 藤岡さんは「美女と野獣」「妖精の園」が特にお気に入りだそうです。

・「ピアノ協奏曲 ト長調」

 「角野くんのタッチが、とにかく美しい。リハでは聴き惚れて、指揮を忘れそうになったんだけど、今日は忘れないようにしないと(笑)」

 第二楽章を聴いている時に、この時の藤岡さんのコメントを思い出して、「わかります! めちゃくちゃ共感します!」と心の中で叫んでいました。

 「彼は、会う度に、凄い勢いで進化しているのを感じる」

 これまた、めっちゃ同意。
 最近、みんな感じていることだと思います。
 周りに自然とそう思わせる程なので……陰でめちゃくちゃ努力されているのは、間違いないでしょう。
 生き様が、本当に格好良い方です。

 「角野くんは、パッション、熱いものを持っているけど、力任せに弾くことはしないんだよね」

 これも、何となくわかる気がします。
 彼の演奏は生き生きとして、勢いがありつつも、音色は繊細で美しく、静かな感動を覚えることが多いように思います。

・「シンフォニック・ムード」「BUGAKU」

 「角野くんをきっかけに、黛 敏郎さんの曲をたくさんの人に聴いてもらえてうれしい。お願いだから、途中で帰らないでね(笑)」
 もちろん、ちゃんと聴きましたとも!
 どちらの曲も楽しかったです。


マ・メール・ロワ



「眠りの森の美女のパヴァーヌ」
「親指小僧」
「パゴダの女王レドロネット」
「美女と野獣の対話」
「妖精の園」

 以上、五つの世界が広がっており、プレ・トークで藤岡さんがおっしゃっていた通り、絵本を読んでいるような感覚になる曲。

 「パゴダの女王レドロネット」では、中華風のメロディが流れたり、「美女と野獣の対話」で、野獣がハンサムな王子に変わる時に、キラキラした音色が奏でられたり……終始、ワクワクしっぱなしでした!

 最後の「妖精の園」は、王子がキスをして王女を目覚めさせるシーンなのですが、藤岡さんがオケの皆さんに、そっと優しく、でもゆっくり口付ける感じで演奏するように、お願いしたそうです♪
 キスの仕方も色々あるから、とのこと(笑)。

 全体を通して聴いて感じたのは、ラヴェルという人は、めちゃくちゃロマンチストではないか、ということ。
 彼の創造した世界は甘美で、本当に素敵でした。

ピアノ協奏曲 ト長調

 私はクラシックを聴く時に、色々とイメージが思い浮かびがちなのですが、この曲で見えたイメージは、ディズニー映画の「バンビ」に出て来る森でした。
 昔見た時に、精緻に描かれた森の美しさに息を呑みましたが、その時と同じような感動を覚えました。

第一楽章

 冒頭、鞭の(ような)音を皮切りに演奏がスタート。

 楽しげな旋律は、まるでディズニー映画の歌唱シーンの場面に迷い込んだかのよう。
 森の中を歩いていたら、色んな動物が出て来た! みたいな感じ。
 動物の鳴き声みたいに聴こえる音があって、そこからビジョンが広がっていったのかも。

 音色が醸し出す雰囲気は、これまで、楽しそうに演奏されている時の角野さんから感じていたオーラと、何やら近しいものを感じます。
 少年のような純粋さ、ワクワク感、ファンタジックな雰囲気がベースにありつつも、大人の粋な一面も顔を覗かせる。

 演奏を聴きながら、もしかしたら、作曲者のラヴェルと角野さんには、どこか似たところがあるのではないか、と思いました。

第二楽章

 ピアノのソロ演奏からスタート。
 角野さんの繊細かつ穏やかな音色は、水を思わせるようで、私個人のイメージとしては、森の奥深くにある湖面に、月が映り込んでるような印象を受けました。

 特に、後半の角野さんが奏でる高音のキラキラ具合が、美しすぎます……!
音の粒が、クリスタルの煌めきのようでした。

第三楽章

 ふたたび、第一楽章を思わせるような、軽やかな旋律。
 でも、勢いは第三楽章の方がありそう。
 角野さんのピアノがギューンと唸りを上げて、エンジン全開な感じ!

 そして時々、聞き覚えがあるような気がするメロディが。
 これってもしかして、あの有名な「ゴジラ」の曲……?

 後でわかったことですが、「ゴジラ」のテーマ曲を作曲した伊福部昭さんが、ラヴェルのファンだったとのこと。

 最後、演奏が終わった瞬間に、パッと夢から覚めたような、不思議な感覚に陥りました。

スワニー

 ピアノ協奏曲演奏後、ずっと鳴り止まない拍手。
 そこでアンコールに演奏されたのは、スワニー。

 少し前に、札幌で演奏されたと聞いて、ずっと気になっていたので、今回聴けて、うれしかったです。

 角野さんは、終始ノリノリな感じで、楽しげに身体を揺らしながら、のびのびと弾いている姿が印象的でした。

 ご本人の喜びの感情が、飛んでくる音に乗って伝わって来るようで、聴いていると、こっちまでワクワクしちゃう感じ。

 彼のYouTubeチャンネルにアップされている、アイガットリズムを演奏している時と、似た雰囲気を纏っているように見えました。

シンフォニック・ムード

 今回、事前予習なしで、初めて拝聴。
 かなり楽しくてドラマチックな、エネルギーに満ち溢れた曲でびっくり。
 テンション爆上げ曲でした!

 角野さんがアンコールに弾いた「スワニー」が、ちょうどこの曲へバトンを渡すのに、ぴったりな雰囲気の曲だったな、と冒頭部分を聴きながら、思いました。
 そのセンスが素敵です!

 曲を聴いていると、色んな物語が想像出来そうな感じで、前に演奏してラヴェルの曲と同様に、ファンタジーの世界に誘われるような、パワーのある曲だと言う印象でした。

BUGAKU

 こちらも、本日初めて拝聴。
 冒頭は、雅楽のような、不思議な響きからスタート。

 私は、聴きながら、平安時代の都で繰り広げられるドラマを観ているような、そんな感覚になりました。

 テイストは和風に変わったものの、これまで演奏された曲たちと同様に、この曲もファンタジー要素のある、面白い感じでした。

おわりに


 どの曲も、御伽噺の世界を覗き込んでるような、ファンタジックな雰囲気を持っていて、開演から終演まで、ずっと夢の中にいるような、不思議な感覚でした。

 「マ・メール・ロワ」の演奏が始まった瞬間から、魔法にかかっていたような感じ。

 非日常を味わえるのも、コンサートの醍醐味ですが、今回は別の世界にトリップする感覚が強めの演奏会だったように思います。

 文字通り、夢のような夜を過ごせて、感謝です!

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