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エンディングのない世界。

「ゲームセンター=不良の溜まり場」と親に教え込まれて育った自分が高校時代、部活を通じて巡り合った親友(悪友とも言えるが)に誘われ、「ストリートファイターII」を始めたのが運のツキ。

そこからアーケードゲームにドップリとハマり、「対戦格闘ゲーム」は生活の一部になっていった。

高校2年時の修学旅行初日は、横浜中華街に到着し、自由行動タイムになったら近くのゲーセンに猛ダッシュ(ただ「チャイナドレスのおねいさんを生で見たい!」の一心で、点心の店には行った)。

次の日は東京ディズニーランドで自由行動。
その頃は「スプラッシュマウンテン」が登場したばかりで、乗るために120分待ちという状況。
せっかく来たなら並んで乗ろうとする同じ班のメンバーを尻目に、ここでもゲーセンへ猛ダッシュ。

小遣いはゲーム代と、当時唯一の情報源だった、アーケードゲーム専門雑誌「ゲーメスト」代として消えていく日々。

スーパーファミコンで「ストリートファイターII」が出たら、指にマメが出来るまで、ひたすら遊び倒す。

ゲーセンや家では飽き足らず、ゲームショップや玩具屋、本屋などの軒先に置かれたNEOGEO筐体(厳密に言うとMVS筐体)でもアレコレ遊んだ。
今はなき中古ゲームチェーンの前に置かれていたMVS筐体で、後輩が見せてくれた「龍虎の拳」の隠し超必殺技「龍虎乱舞」の衝撃は今なお鮮明に覚えている。

まさに「ハイスコアガール」を地で行く高校生活だった。
ただひとつ、ハルオと違うのは……。

男子校だったことだーーーー!!!
女っ気まるでナシ!!!

さて、そのゲーム漬けの日々に誘ってくれた親友(悪友)は、高校卒業間近、重篤な病に侵されてしまった。
最初はただの風邪だと聞いていたが、病院へ見舞いに行くと、感染症にかからぬよう厳重に囲われた、ICUのベッドに、意識のない状態で横たわっていた。

病気の影響か、それとも薬の副作用か、体中にカサブタが出来ていて、あまりに痛々しい姿に言葉を失う。

絵も達者なうえ、仲間内で誰よりも頑丈な身体を持ち、割と本気でプロレスラーになろうかと言っていたヤツが、何故…?

感染症の危険もあるため、身体にすら触れられない。
なので、眠り続ける親友(悪友)には「元気になったら、またゲーセンへ行こうな。」と声をかけるのが精一杯だった。

それから程なくして、彼の訃報を受けた。

彼の頑丈さを知っている自分としては「冗談が過ぎる」という思いしか湧かなかった。

親から香典を渡され、電車を乗り継ぎ、半信半疑のまま、たどり着いた斎場で待っていたのは、棺桶の中で横たわる、息をしていない親友(悪友)の姿。
信じたくなかった「現実」を叩きつけられた瞬間だった。

そのとき、彼と出会って過ごした、高校時代の約3年にわたる記憶が凄まじいスピードで頭の中を駆け巡った。

直後、大量の涙と一緒に、

「何でだよ!!何で○○(親友であり悪友の名前)が死ななきゃならねぇんだよ!!」

という、やり場のない怒りが込み上げてきて、斎場の外に飛び出し、そこから記憶がない。
後で聞くと、斎場のそばにあった電柱を、号泣しながら、ひたすら殴り続けていたらしい。

血が出るほど殴っていたが、不思議と痛みは感じなかった。
見かねた他の友達数名が泣きながら自分の腕を掴み、止めに入ってくれたそうだ。

その後の記憶はあやふやだが、最終的には親友(悪友)がいつも溜まり場にしていた別の友達の家に仲間内で集まり、時効なのでご容赦願いたいが、酒を飲み、亡くなった親友(悪友)の弔いとして、一箇所、親友(悪友)の座るスペースを空けて、思い出話をしながら、朝までゲームで遊び続けた。

あれから、もう20年以上が経過した。
親友(悪友)が誘ってくれた「ストリートファイター」シリーズは、シリーズ5作目「V」がつい先日、アーケードにリリースされた。

ゲームを取り巻く環境もすっかり変わり、自分も年を取った。
そして、その「V」を今日初めて遊んだ。

予備知識のない状態で対戦台に入り、2勝して負けた後、CPU戦を始め、初プレイでワンコインクリアーしてしまった。

そこには、シリーズのお約束である、キャラクターごとのエンディングはなかった。スタッフロールが流れるだけ。

あぁ、もはや対戦格闘ゲームに、キャラクター個別のエンディングは不要ということかぁ…。

なんかさ、寂しいね。
でも、それも時流なのかもしれない。

…あ、そうそう。

自分が「ストII」を始めることになった際、親友(悪友)が薦めてくれたキャラクターが、ブランカなんだよね。

俺、今もまだブランカ使ってるよ(笑)。
もっとも、一時期は本田やザンギ、ダンに乗り換えたけど。

ただ、一番シックリくるのは、不思議とブランカなんだよなぁ。

対戦もさ、今じゃあ家から見ず知らずの相手と出来るようになってるよ。

あと、高嶺の花だったNEOGEOな、40本のゲームが入ったミニサイズのゲーム機が、1万ちょいで買える時代になったよ。
某玩具メーカーのアレな移植を掴まされた身としては、にわかに信じられないよなぁ。

いつになるかわからんけど、そっちに行ったら山ほど土産話持ってくからな!待ってろよ!!

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