追記あり:レペゼン地球DJ社長の「パワハラ」やらせから見えた【もっと大きな問題】


人気YouTuberによる、性的同意をないがしろにした「PR」手法が批判を浴びています。

経緯は以下の通り。

①レペゼン地球のDJ社長の事務所に属していたジャスミンゆまが「ハラスメントを受けていた」とTwitter上で告発

②DJ社長が迅速に事実を認め、本人に電話で謝罪

③謝罪動画…と思いきや、実は全てが話題作りのために仕組まれた嘘だったことを告白


④DJ社長の元には、「聡明」「すごい」などの称賛が集まる一方、ジャスミンさんに対しては、批判が集まる。

Twitterでの反応はこちらのtogetterまとめをご覧ください。

DJ社長のやったこと

今回の件でうんざりした前提として、ジャスミンのようにパワハラ(実際には性交渉を迫る内容だったのでセクシャル・ハラスメント)の被害者に対して、被害者自身の発言を疑ったり、更には「売名行為では」みたいなことを言う人が多い……という現実がある。

ハラスメントや性犯罪の被害者は、そういう「世間の空気」にすごく苦しめられる。だから言えない。言った後も、「嘘なのでは」とい疑いを晴らすため、時には屈辱的なほどの操作や報道にさらされなければなりません。

だから、これまで多くの性暴力被害者や支援者たちは、そういう「世間の空気」と戦ってきたわけです。

今回、レペゼン地球のDJ社長が行ったことは、そういう「世間の空気」を強化することです。今苦しんでいる、いや、将来の被害者をも、苦しめる「呪い」をかけたようなものなのです。

ジャスミンも「女嫌い社会」の被害者

DJ社長にはもしかして一生わからないことかもしれませんね。でも自らも過去にセクハラ・パワハラ・そしてレイプなどの被害にあったというジャスミンには、自分が片棒を担いだ行為の意味をわかってほしいです。なぜならそれはジャスミン自身をも、内面から苦しめてしまうことだからです。

今回、「将来ジャスミンが性被害を訴えても、もう絶対に信じない」というようなつぶやきを目にしました。ジャスミンのやってしまったことは彼女自身を含む性被害にあう可能性のあるすべての人の首を締める行為なのです。

本当は、この企画を持ちかけられた時に、しっかりと断ってほしかった。でも、所属事務所の社長であるDJ社長から持ちかけられた企画を断るのが難しかったであろうこともわかります。一番の責任者はこの企画を主導したDJ社長です。

それなのに、DJ社長は称賛を得、ジャスミンには批判が殺到してしまっている現状を観て、結局この世の中「女嫌い」な雰囲気がまだ蔓延していることを再認識させられました。その中で自分のやり方で適応し、「強く」なって生きのびようとするジャスミンも、またある意味ではこの女性にとってアンフェアな社会の被害者なのです(今回の行動は他のパワハラ・セクハラ被害者に対して間接的の加害とすらいえる行為であり、決して許されるものではありませんが)。

炎上系YouTuberが生まれる理由

ここからは、もう少し広い話をします。

今回のDJ社長の件で改めてクリアに見えてくるのが「【影響力】さえあれば、それがマネタイズできる時代の到来」です。

2017年、青木ヶ原樹海に立ち入り、首吊り自殺者の遺体を流すなどして炎上したローガン・ポールというアメリカのYouTuberがいます。彼は、青木ヶ原以外にも、多くの衝撃的なドッキリ動画をあげていました。また、弟のジェイク・ポールもYouTuberで人種差別的な動画が問題になっていましたが、ローティーンを中心とする若者には人気でした。

青木ヶ原樹海動画以降、ローガン・ポールのチャンネルは、YouTubeの優先広告プログラムGoogle Preferrdから外されたり、オリジナルコンテンツの作成が中止になったり、ビデオブロガーイベントから閉め出されたりしました。しかし、多くの署名活動にも関わらず、YouTube上にはポール兄弟のチャンネルが相変わらず残っています。また、その後も、ボクシングの試合に出たり、音楽を作ったり、映画に出演するなどして、ポール兄弟は、嫌われ者ながらも、順調にB級セレブリティとしてのキャリアを築いています。わたしもかつてジェイク・ポールの出ている映画をうっかり劇場で観てしまったことが(汗)

つまり、今の所「炎上でも何でもして知名度を上げてしまえば、何とかしてお金を稼げる」というのは(長期的なキャリアになるかはさておき)一時的な戦略としてはワークしてしまっているわけです。

今回のレペゼン地球も結果的には露出が増えたため、批判を受けても「結果オーライ」という判断でしょうし、他にもそういう手法でビジネスをしているインフルエンサーの人、日本でも結構見かけますね。この「炎上したもの勝ち」という現状を変えない限り、個別の炎上事案をいくら叩いても、似たような事件を防ぐ効果はないのかなーなんて思います。

この風潮を変えるためには長い時間かかると思いますが、

①YouTubeを始めとする各インターネットプラットフォーム企業による、人権侵害に繋がりかねないアクションのマネタイズの停止

②必要に応じてプラットフォームの使用制限(知名度アップ自体の抑制)

③企業がコマーシャルなどに起用する際、人権軽視をするタレントを起用しない

④受け取る側の意識やリテラシーをアップデート

など様々な角度からのアプローチが必要でしょう。

【7月23日追記】

Change.org上で、レペゼン地球に対して謝罪を求める署名運動が始まっています。呼びかけ人のSEX and the LIVE!!というプロジェクトは、性に関する様々な発信をされています。

#セクハラはネタじゃない ( #SexualHarassmentIsNoJoke )

#なくそうセカンドレイプ ( #NoMoreSecondRape )

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