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絵本ゼミ3期1回目振り返り

修論を書いていたときはゼミの振り返りを免除にさせてもらっていたので、久しぶりにnoteを書きます!

修論を無事に書き終わって、4月から主に子ども向けの本を作っている編集プロダクションで働き始めました。
社会人になっても学ぶ姿勢を忘れないために、絵本ゼミを続けることにしました。

まず感想

体調を崩してしまってゼミを欠席したので、録画を見ました。
修論を書いているときから大学院の講義はあまりなかったので、久しぶりにがっつり講義を受けて、疲れたけどやっぱり楽しかった!心に残った絵本もあって、とても充実していました。

絵本紹介で心を奪われた1冊

自己紹介もかねて、みなさんはチームに分かれて講座当日のために選んだ絵本を紹介していました。
その中で、心が揺さぶられて、深く刻み込まれた絵本が↓


『わたしは樹だ』松田素子 文、nakaban 絵、アノニマ・スタジオ、2014

紹介してくださった方は、

「屋久島の樹齢何千年も経っているであろう樹についての物語。
支えられ、支え合いながら成長し、種子から大木になって、他の命を育む場にどうやってなっていったのかが描かれている」

といったことをおっしゃっていて、こんな風に絵本を紹介できるようになりたいなと思うと同時に、この絵本にすい込まれていきました。

『わたしは樹だ』を実際に手にとって読む時間はなかったのですが、絵本ナビの「全ページためしよみ」を利用して、読みました。

「わたしは ただ
生きることを やめなかっただけだ」(p4)

小さな種が大木に成長したのは、この種が特別だったわけではなく、「ただ生きることをやめなかった」から。
周りの菌や他の木々に支えられ、支え合いながら生きていったから。

わたしは、他者を思いやったり助けるという意味でのケアという概念?に最近興味があるのですが、この絵本にはケアが流れているように思いました。
樹も人間も、他の生物や人間とつながりあって、助け合いながら生きている。そのつながりは、上下関係のある階層構造ではなく、キャロル・ギリガンの言う、横に広がっていく網状のつながりであり、それをこの絵本は示唆しているのではと考えました。
なんだか涙があふれて止まらなくなりました。
Amazonでこのあと買おうと思います。

コールデコット賞に至るまで

絵本ゼミ3期は世界の絵本賞がテーマで、第1回目はコールデコット賞について、絵本が発展した経緯の概略、コールデコット賞が創設されるまでを学びました。
ノートをとったことの中で自分にとって大事だと思うものを書いてみます。

・Thomas Bewick(1753-1828)
18世紀の後半に、木口木版を改良した。当時、印刷物は銅板によって作られていたが、木版が改良されたことで、銅板よりも安く短時間で複製できるようになった。
有名なものが、Lewis Carroll作、The Nursery Alice(1890)に入っているJohn Tenniel(1820-1914)の挿絵。
このように、簡単に複製できる木版があったから、挿絵入りの本や絵本が発達した。

・Edmond Evance(1826-1905)
ヴィクトリア朝、絵本の黄金期と言われる時代に活躍した挿絵本や絵本のプロデューサーみたいな人。Evanceに見出された画家が、Walter Crane(1845-1915)、Randolph Caldecott(1846-1886)、Kate Greenaway(1846-1901)。
この3人の活躍によって、近代絵本は発展した。

Evanceは、現在の編集者のような立ち位置だったのでしょうか。Evanceによってこの3人が見出されたことを考えると、編集者の持つ力が分かります。
誰を使ってどのような本を出すか、プロデューサーのような立場の編集者も、絵本の黄金時代を築いた一人と言えるそう。

画家だけでなく、Bewickのように技術を発展させた人や、Evanceのようにすばらしい画家を発掘する編集者がいてこそ、絵本が花開き、現在があることを知って、絵本の世界がより広がった感じがしました。

特に、仕事でイラストレーターやライターさんを決めるプロセスを目の当たりにしたあとだったので、Evanceの話を聞いて、編集者の力の大きさを感じながら仕事をしなければいけないと思いました。

講義の中で取り上げられていた、モーリス・センダックの編集者アーシュラ・ノードストロムについての本『伝説の編集者 ノードストロムの手紙―アメリカ児童書の舞台裏』(レナード・S・マーカス著、児島なおみ訳、偕成社、2010)を読もうと思います。

コールデコットはイギリス人だが、Caldecott Medal コルデコット賞は1937年に全米図書館協会によって創設された。絵本がイギリスで花開いたあと、戦争に突入してヨーロッパが戦争の舞台になり、絵本を作っていられなくなった。そのときにアメリカでは絵本が黄金時代を迎え、コールデコット賞が設立されたという。

その後、1956年に英国図書館協会がケイト・グリーナウェイ賞を創設した。

Astrid Lindgren Memorial AwardとCaldecott Medalの比較

わたしは修論でリンドグレーンの作品について書いたので、講義を受講して、まずアストリッド・リンドグレーン記念児童文学賞(ALMA)とコールデコット賞の違い、リンドグレーン賞の特異性は何かが気になりました。

選考過程など細かいところは見れていませんが、大きな違いは、授賞の対象だと思います。
コールデコット賞は、その年にアメリカで出版された絵本の中で、最も優れた絵本を描いた画家に贈られる賞。

一方ALMAは、“The literary award will be awarded to authors whose writing has produced literature for children and young adult of the highest artistic quality and in the deeply humanistic spirit associated with Astrid Lindgren. The award may also be awarded to individuals or others who have made a particularly valuable contribution to promoting reading among children and young people. It may also be awarded for storytelling and to illustrators.” (Ordinance. Astrid Lindgren Memorial Award. https://alma.se/en/nomination/nominating-bodies/
つまり、リンドグレーンにつながる深いヒューマニズムの精神にあり、最高の芸術性をもつ子どもとYAのための本を書く作家、子どもと若者の読書を促進することに特に価値ある貢献をした個人や団体、ストーリーテリング、イラストレーターに授与されるということです。

ALMAについて調べたつもりになっていたのですが、授賞金額やbackgroundとなっているリンドグレーン自身にばかり目がいっていました。コールデコット賞と比較すると、ALMAは授賞の対象が広いことが分かります。その理由は調べられていませんが、晩年、リンドグレーンが社会活動家として有名になったり、1978年にドイツ書店協会平和賞を受賞した際のスピーチで子どもへの暴力を根絶するように訴えたりしたことが関係しているのかもしれません。
子どもの本だけでなく、子どもを取り巻く環境や社会も気にかけていたリンドグレーン。その精神を受け継いだALMAは、本やイラストレーターだけでなく、広い視野で受賞者を決めようという考えがあるのかもしれません。このことについては、今後もリサーチをしていこうと思います。

受講の目標

絵本ゼミ3期の目標は、

得た知識を編プロの仕事でどのように活かせるか、考えながら受講する。

それを実践できるように、学んだことをどのように活かせそうか、振り返りで書こうと思います。

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