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恐怖のブルデス〜地獄のBrutal Death Metal10選〜

どうも皆さん、YU-TOです。

ここ最近、というか例の騒動が始まった辺りからSNSで"バトン"なるものが流行りだしている。

何かお題を決め、それにまつわるものを投稿するのを友達同士で回し合うというものだ。

別にやりたくなかったら自分のところで止めれば良いのだが、如何せん"ノリの悪い奴"と思われそうだし(そこまで気にしてるわけでは無いが 笑)、中には結構"面白そうだな"と思えるものも無くはない。

今回、自分のところにも、「影響を受けた10枚のアルバム」というお題でバトンがきた。

面白そうなお題ではあるが、"うーん、ちょっと前に「影響を受けたドラマー」でnote記事投稿したしなー"とやるかやらないか考えていたが、ちょっと色々なご縁もありBrutal Death Metal、ここ日本ではブルデスと呼ばれるものに絞ってやってみることにした。

この記事を回してくれたのはInherited truthというバンドのドラマー、金井さん。ちょうど自分がInfected malignityというブルデスバンドをやっている時に知り合った人だ。

厳密に言うと仲良くなったのは自分がInfected malignityを解散させてからだがまあ細かいことは良い。

だから今回はそんなブルデスに関する記事を書き、バトンの回答代わりにさせてもらう事にした。

バトンはここで終わらせます。

ちょっとの間お付き合い下さい。

序章 ブルデスの個人的定義

はっきりと言おう。

自分はもうブルデスには殆ど興味がない。

世間でそう呼ばれているバンドの音源はもうほぼ一切聴かないし、持っていたCDも大半は売ってしまった。

それは何故なのだろう?

単純に飽きてしまったのである。

ブルデスという音楽は本当に限られた表現しかできない音楽だと思っている。死、残虐、地獄、露悪といった醜いものを全て音に詰めこみ、放出させた芸術だ。

映画で言うとスプラッター映画みたいなものだと思っている。

そして世に言う"デスメタル"というのとも少し違う。

そのデスメタルを更に過激にし、例外はあるにせよもはや音楽と呼ぶか雑音と呼ぶかのギリギリのところを攻めた音楽がブルータルデスメタルだと思っている。

ボーカルはガテラルボイスという言葉がほぼ聞き取れない程の声で、当たり前だがメロディはない。

ギターメロディはほんの少しあるが、基本は叩きつけるような打楽器的ギターリフで、ベースもそれにユニゾンする形になる。

ドラムは基本的にブラスト、2バスを駆使して音壁を作り、ほぼ隙間が無いパターンが多い。グルーヴは基本的には皆無だ。

"スラミングスタイル"と呼ばれるブルデスも、テンポはミドルテンポながら2バスで隙間を埋めていたり、オフビートがないズルズルしたノリのもので、世間が言うグルーヴ的なビートとは全く別ものだ。

そこに他の表現が入る余地はなく、"泣ける"要素など入ったものなら一気にブルデスという枠組みから振るい落とされる。

そして生々しく、ドロドロしていて残虐性が高いものほど面白い。

だから何かそれとは違う表現をしたくなったら、もうブルデスは出来ない。いくらこっちが新しい表現法を用いたブルデスを提示したところで、ブルデスのファン達はそんな事は求めていない。

彼らが求めるものは徹底した残虐性と露悪性で、その他の要素などブルデスという枠組みの中に求めていないのだ。

偏見もあるかもしれないが、Infected malignityやその他のところでブルデスをプレイして感じた事はそういう事だった。

だから自分はブルデスを辞めた。聴くのも演るのも。

数年ではあるが、Infected malignityや他バンドでプレイし続けたブルデスという音楽。

Brutal Death Metalガイドブックという本も出版されているが、そこにInfected malignityやかつて自分が在籍したバンド、自分自身の名前もしっかりと刻まれている。

もうプレイする事はないと思うが、一つの音楽スタイルの歴史に名前を残せた事はアンダーグラウンドなものとはいえ、中々嬉しいことではある。

だから今回はそんな自分が選んだ、"聴かなくなった今でも覚えてるくらいのブルデス"や、"本気でこの世の地獄が味わえる恐怖のブルデス"を10枚紹介していこうと思う。

残虐と憎悪と露悪に満ちた恐怖の地獄世界へ、、さあどうぞ。

地獄1. DEVOURMENT 「1.3.8」

ジャケットからして地獄である。

見て不快になった方はごめんなさい。しかし、これがブルデスの世界だ。

DEVOURMENTはブルデスの中でも更にドロドロした音楽性の"スラミングデスメタル"の代表格であり、パイオニア。

彼らの出身地がテキサスである事から、スラミングデスメタルはTXDMと呼ばれる事もある。メンバーに逮捕暦があるなど、割とガチに"悪い"人達のバンドである。

音楽性はひたすらミドルテンポでズンズンズンと進んでいき、ボーカルはただひたすらにボォーボォーと地獄の呻き声を上げる。

また、時折入るブラストビートが強烈な地獄感を煽る。

スココココココ、、とBPM300くらい(恐らくクリック未使用)で繰り出されるブラストはもやは気が狂ったのかと思うほどである。

極めつけはバズロール(順位発表!の時に使う小太鼓のザァーーーってやつ)を駆使したフレーズはもはやドラムの音ではなく、テレビの砂嵐的な効果音と化している。

最初聴いた時はCDが壊れたかと本気で思った、、

スローに畳み掛ける曲の連続は、まるで拘束された胴体の皮を少しずつ剥がされてなぶり殺しにされるような地獄が味わえる。

覚悟して聴け。

地獄2.DISGORGE(US)「She lay gutted」

またもやジャケが地獄である。

もう不快になった方は読むのをやめてもらっていい。このように人を選ぶのがブルデスという音楽だ。

実はメキシコにも同じ名前のバンドがいるが、全く別のバンドである。

先ほどのDEVOULMENTとは打って変わり、DISGORGEはひたすらにブラストで攻め立てるスタイル。

ブラストといっても全てダダダダダという表打ちブラストで疾走感はあまり無い。しかしそれが逆に地獄感を倍増させている。

高速でストップ&ゴーを繰り返し、目まぐるしく展開が変わる曲のスタイルは彼らの出身地がカリフォルニアである事から"カリフォルニアスタイル"や"CADM"と呼ばれている。

来日したイベントで対バンしたが、前につんのめってフルストロークでブラストを叩きまくるドラマーRickyは本当にただの鬼神だった。

1曲目の終わり、雷雨の音をバックにしたVo.Mattiの"アカペラガテラル"は正に"悪魔"。これはかなりカッコイイ。

ズタズタに切り裂かれ、グラインダーでミンチにされるが如き地獄。

地獄3.BRODEQUIN 「Festival of death」

大分ジャケットが落ち着いてきた。安心安心。

と思ってはいけない。

正にこの世の地獄の一枚である。

この音楽には、音階もリズムも歌も存在しない。あるのは音の壁、ただそれだけである。

"死の祭り"というタイトル通り、もはや救いようの無い、出口の見えない地獄の扉を開けてしまったかのようなサウンド。

まるで伝説的露悪映画、「ソドムの市」のような世界観。

マジで正気の沙汰では無いです。

地獄4.DECREPIT BIRTH 「...AND TIME BEGINS」

のちにメロディックなテクニカルデスメタル的方向に舵を取ったが、この1stでは問答無用の地獄のブルデスサウンドを叩きつけている。

サウンドはとにかく目まぐるしい。同じリフやリズムが繰り返されることはほとんど無く、何度聴いても全く曲が覚えられない、、、

リリース当時、こんなドラム本当に叩けるのか?と思ったが、今聴くと割とリズムは揺れてるので恐らく本当に叩いてると思われる。

ドラマーはDevine heresyなどでも知られるTim。ブルデスドラマー、出世頭の一人である。

バンド自体もこの後、NUCLEAR BLASTと契約するなど一気に躍進する。

ジャケットに描かれた嵐に、自分の全てが壊されるのをただ立ち尽くして見ているしか無い、、、そんな地獄が味わえるサウンド。

地獄5.SAPROGENIC 「The Wet Sound of Flesh on Concrete」

再びジャケが地獄です。

もうアルバムタイトルも完全な地獄。

当時、確かメンバーは20歳とかそれくらいだったと思う。若いフレッシュなブルデスバンドである。

また"ビィーーーー"っという不快感マックスなガテラルヴォイスが全編に渡って響き渡るのだが曲調は結構オールドスクールなデスメタル味もあるし、リフも割とキャッチー。

しかし、聴きやすくなってるといったらそんなことはなく、正にこのジャケ通りな地獄サウンド。

このコンクリートにへばり付いた死体達に埋もれらながら自らの死を待ち、絶望するかのような地獄が味わえる。

地獄6.GORATORY 「Orgasm Induced Diarrhea」

ここまで紹介した作品ほどでは無いが、よく見たら結構地獄なジャケ。

にしてもアルバムタイトルが酷い(笑)何を思ってこんなタイトルを付けたんだ(笑)

速いだけではなく、ノリやすいミドルなテンポも多用する割とわかりやすい方のブルデス。演奏は結構荒っぽいが、生々しいグルーヴがある。

こちらもメンバーは当時まだ20歳そこそこ。来日公演を観に行ったが、メンバーがみんな若々しかった記憶がある。

解散後にメンバーがBurn in silenceやArsisといったメタルコア寄りのバンドをやっていることから、メンバーの趣向は割とブルデス一辺倒ではなかったと思われる。

ドロドロしてはいるが、所々のリフはメロディアスで聴きやすい。

そんな割とスタイリッシュな地獄感(なんだそれ 笑)が味わえる一枚。

地獄7.ETERNAL SUFFERING 「Drowning in tragedy」

ハードコアなどのミドルテンポのストンピーなノリを取り入れたブルデスを"ニュースクールデスメタル"と呼んでいた時代もあるが、それの隠れた代表格。

展開はわかりやすくは無いが、スラミングデスメタルとは違うノリの良いテンポ感は聴いていて気持ち良い。

またジリジリギスギスした音質もなかなか味わい深い。スネアの軽めなサウンドが何ともこのシーンのバンドっぽくて良い。

ちなみにSuicide Silenceを初めて聴いた時、"まんまETERNAL SUFFERINGやんけ"と思った。まあ、Suicide Silenceの方が全然キャッチーでわかりやすいのだが、、、

いわゆるデスコアの元祖とも言えるかもしれない。

ストリート感のある地獄の極悪サウンド。

地獄8.INTERNAL BLEEDING 「Onward to Mecca」

ニューヨークのブルデス。ジャケの通り、ハードコア感が強い。

しかし複雑な曲展開はかなりブルデス的であり、ヴォーカルの声質もハードコアに近くはあるが、完全にハードコアかと言われれば違う。

なかなか立ち位置がわからないアルバムだが、リリース当初は中々他とは違うベクトルを示していて面白いアルバムだなと思った。

デスメタル寄りでありつつもちゃんとグルーヴがあるサウンドなので聴きやすい。

ドラマーのBillは消防士の仕事で2017年に殉職。結構衝撃的な事件だった。

ドロドロした雰囲気はないが、治安の悪い厳つい雰囲気は中々の地獄感。

NYの悪なサウンドが味わえる。

地獄9.DEEDS OF FLESH 「Trading Pieces」

ブルデス界の帝王

腹を掻っ捌かれてるであろう断末魔の叫びSEから畳み掛けられる地獄のサウンドのオンパレード。

テンポはそこまで速くないがブラストの疾走感が凄い。

ドラムは多分、全て生音と思われる。テンポチェンジを多用している為、恐らくクリック未使用とも思われるが全く荒々しい感じはなく、完璧なタイム感で繰り出される超絶プレイが素晴らしい。

Vo &GuのErikはブルデス名門レーベル、Unique leaderのオーナーでもあるが、2018年に他界。

演奏的に荒々しいものが多いブルデスだが、このアルバムはキッチリと整合感があり、今聴いても素晴らしい演奏力。

正にブルデス地獄の帝王に相応しいサウンドである。

地獄10.VOMIT REMNANTS 「Indefensible vehemence」

国内ブルデス最高峰

恐らく最も世界的に認知された国内ブルデスバンド。

"Hyper groove brutality"を提唱していて、全くもってその言葉通りのサウンドとなっている。恐らく本当の意味でグルーヴがある唯一のブルデス。

今回紹介したバンドの中で一番"音楽的"なサウンドで、キャッチーさもずば抜けている。今聴いてもというか今の方が久々に聴き返したときの衝撃が当時よりも強い。

ブルデスという枠組みを飛び越えつつも、ガッチリとブルデスファンのハートをも掴めるという正に奇跡のサウンドである。

ドラマーの坪井さんには自分が国内シーンに入るきっかけというか橋渡し的なことをして頂き、今だに感謝している。

素晴らしき日本の地獄サウンド。

最後に

とまあバトンを繋ぐ代わりにここでブルデスの印象に残ってる音源10枚を紹介してみた。

今回これを書くために改めてこの10枚を聴き返してみたが、聴いていた当時とはまた違う印象を持つものもあり、とても面白かった。

特にDeeds of fleshの卓越された演奏力は改めて半端じゃないと痛感させられたし、このブルデスというものは本当に人間の持つ醜さと残虐性というところだけにスポットを当てた正に"エクストリーム"な音楽だということも感じた。

今の自分は音楽でもっと多種多様な表現をしたいし、出来るようになりたいので、もう恐らく今回紹介したような典型的なブルデスはプレイしないだろう。

正直、Infected malignityやその他のバンドで全てやり尽くしてしまったという感覚もある。

しかし、このブルデスの持つ強靭かつ得体の知れないパワーを享受出来たことは自分の音楽人生の誇りであるし、このマニアックな世界は改めて客観視してみると結構奥が深い。

スプラッター映画のような偏った音楽だが、それはそれで芸術の表現でもある。

もし、ドロドロしたグロテスクで狂気に満ちた世界をちょっとでも垣間見たく(聴きたく)なったら是非ともここで紹介したブルデスを聴いてみて欲しい。

何か違った世界が見えてくるかも知れない。

この恐怖の世界から抜け出せなくなったら、、、

後の事は自己責任で、、、

                                                                                     2020/5/25 YU-TO SUGANO


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