夏の終わり
「夏の終わりは自分で決めるんだよ。」
蝉の声が日に日に減ってきた散歩道の途中で夫は言った。
なんでも昔好きで見ていたテレビドラマの主人公が言っていたセリフだという。
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日が延びて気持ちが高揚する夏が好きだ。汗ばむことさえ心地よい。
夏というだけで、人はどう過ごすか計画を立てる。
毎年訪れる夏は、みんな特別なのだ。
よって私の夏も、特別だ。
生まれた月がある。こんな暑い中でよく生んでくれたな、と毎年母に思いを馳せる。
そんな私ももうすぐ母になる。
季節が変わるたびにカウントダウンの日が近づく。
この夏は、いよいよ最後の季節。
「ねえ、じゃあ夏はいつ終わるの?」
「蝉の声が聞こえなくなったら終わりかな。それまで俺は夏を楽しむよ。」
蝉よ、もうすこしだけ鳴いていてはくれないだろうか。
もうすこしだけ、ゆっくり刻まれる穏やかな時間を楽しみたい。
夏のその先にある不安と希望が入り乱れた秋を目の前にして惜しむように祈る自分がいる。
書いているとエネルギーを使うのか、甘いものか揚げ物が欲しくなるんです。 健康を害さない程度につまみたいと思います。