無色の少々ながい詩

すべりだす
ながれだす
無色

ボクは
無色


歩道
車道
色々な車
様々な人
信号手前

車より すろうりぃ
天より ふろーぃん


左前方 
桜の木の横
チャリンコに またがったまま
幹に1輪 咲いた花を
一眼レフで 接写してる
ひとり
ニッカポッカの おじちゃん

工事用足袋
片足 地面
片方ペダルに乗せたまま
覗き込む レンズ
周りの空気が 
止まってる
おじちゃんの 時間も
止まってる

ニッカポッカの 上には
見たことない ケミカルな
赤色の Tシャツ
淡いさくら色 ぶっとばす色
コントラスト ありがと


彼の横 過ぎ去り
車道を また
滑りだし
滑りだす

スロウ
フロウ
アラウ
フロウ
スロウ


今度は
おじちゃんが 
ボクを
追い越した


からから からから
チャリンコ ペダル
こぐ 彼の リズム
淡いピンクの 波間
漕ぎ 彼の タイム
ゆらゆら ゆらゆら
ケミカルレッドの背中
陽気のなか 揺れる
揺れる
揺れる


春に
溶け込んで
ゆく 
ゆく 
ゆく


車輪行く 前方から
シルバーランナー
おばあちゃんが
ショッキングピンクの
キャップと
ランニングシューズ
あきらかに ガチンコで
コーディネートして
ひとり 走ってきた

超絶 幸せそうに
口角 あげまくり
ランニング しながら
こちらに 向かってくる


ケミカル レッドと
ショッキング ピンクが
ビビットに
ブリリアントして
風景を 
シビれさす
シビれさす

町の 景色は
それらを
ゆるく
ゆるく
うつしてる

あわく
あわく
緩している



ランナーおばあちゃんが
チャリンコおじちゃんの横を
通りすぎた その瞬間
おじちゃんは 
チャリンコを止め
乗ったまま
そのまま
即座に 
振り返り
後ろ姿の ピンクな彼女へ
レンズを 構えた

彼のセンスな 審美眼に
かなった 彼女は
それと 知らず
笑った まま
走り去って いく


街路樹のさくら色と
彼女のピンクが
重なった写真、
撮れたのかな



ボクは
かれらを連写した
灰色のアスファルトを
滑りゆく
無色の
消える


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?