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「単語を覚えれば英語は読める」には2通りある

1. パターン1:ただ単に覚えている語彙量が足りない場合

英語を教えていると、
「単語を覚えたい」
「単語を覚えれば何とか読める」
という人たちに出会います。実際にこれはわたしも言っていたことで、イタリアへの5ヶ月ほど留学した際は、なんとなく文法の使い方が体感や体のリズムとしてわかるようになっていたので、「もっと語彙があれば!」と思っていました。現在学習している中国語も同様です。語彙が少ないのでもっと覚えなければと思っています。語彙が増えればもっと話せるようになるのに……。これが、「単語を覚えれば英語を読めるようになる」人の1通り目です。

2. パターン2:アルファベットの読み方の決まりや規則がわかっていない場合

では、2通り目はなんなのか。
それはそもそもアルファベットそのものが読めていないパターンです。
日本語は文字そのものが音を発するので、ひらがなかカタカナを見れば音を発することができます。しかし、アルファベットはそういうわけには行かず、子音+母音という組み合わせなどが必要になってきます。"Track" "cry"などの子音がつながっている場合もありますが、1単語の中に少なくとも一つは母音に該当しそうな文字が含まれています。(trackであればa, cryであればy)

(例1)例えば、「キ」という言葉を書いたり発したい時……
・日本語標記      キ
・アルファベット標記   K + i =Ki (キ)

文字が読めずに苦労している場合は、文字を見ても音を連想できないので、単語を覚えるのに多大な労力がかかります。
その場合、
・アルファベットを音として発する際、子音と母音の組み合わせが必要になるということが理解できていない
・アルファベットの母音と子音という概念があまり理解できていない
・そもそも子音を覚えていないために、読めない
ということが考えられます。

先日あった話では、こんなのがありました。
生徒さんに「公園」という意味の「パーク」を英語で書いてみて、と言った時、生徒さんの書いた答えはprrkでした。(正解はpark)

アルファベットの読み方がわからないので、英語を読んでもただの記号の羅列にしか見えません。単語を読んだ時に音が想像できないがために、アルファベットをただの記号の羅列として覚えて、それに無理やり音をかぶせています。それでは覚えるのも大変だと思います。これは日本語の漢字の読み方や覚え方と似ていますよね。(例えば、「大変」という文字、読む時は「オオへん」とは読まず「タイへん」と読みますよね。日本語教育を受けた私たちは、その漢字1語1語にある音それぞれを覚え、音読み・訓読みなどの規則性を覚えているので、漢字が読めるようになっています。)日本語は文字によって音が変わってくるので覚えるのは大変ですが、アルファベットの場合は文字によって音が決まっているので、規則性さえ覚えてしまえば意味はわからなくても読めるようになります。ただ、「アルファベットそのものが読めていない」ということについて本人も教える側も気がついていないケースが多いため、「単語の並びと音さえ覚えれば読めるようになる」と思っているのだと思います。これが、「単語さえ覚えられれば英語は読める」人の、ふた通り目です。

2-1. 「アルファベットはそのまま読めばいいのでは?」という、「わからない」がわからない人へ


英語……というよりも、アルファベットが読める人は、この二つ目の「アルファベットが読めない」というのはわかりにくいかもしれません。「なぜ? そのまま読めばいいのに」と。そんな時はアイルランド語の名前を思い出してみましょう。アイルランド語は、同じアルファベットを使っていても読み方が全然違いますよね。
例えば、Sean. これは英語読みにすれば「スィーン」ですが、読み方は「ショーン」です。Siobhan, Maeve, Aoife...これらは読み方を教えてもらっていなければ英語話者は読めない単語(人名)でしょう。わたしはアイルランド語の文字の規則性を知らないので、この文字が来たらこの読み方という風にだけ覚えています。なので、応用もできません。

3. 生徒が、語彙力が足りないのか、それとも読み方がわからないのかを判断する方法

では、そういう人たちにはどう教えたらいいか。まず、下の例2のような単語テストをしてみましょう。
その場合、単語テストは英語→日本語に直すものではなく、日本語→英語に直すようにします。なるべくなら、一気に丸つけをするのではなく、生徒と一緒に問題を解くように進めることです。そこで、この人は単語をただ単に覚えていないだけなのか、文字が読めていないかがわかります。単語は、簡単なものや、カタカナ英語として使われているものから初めて構いません。

(例2)
[問題]次の日本語を英語にしてみよう!
仕事 (   )
バス (   )
歩く (   )
走る (   )
フライト (   )

ただ単に単語を覚えていないだけなのか、それともアルファベットの読み方や規則性がわかっていないだけなのか。このテストで、仮に文字の音が取れていないとわかった場合、次は文字の読み方について教えていきます。英語の読み方はローマ字とは全く違う場合が多いです。eeをイーと読んだり、alをオーと読んだり。今度はこの規則性を教えていきます。ここについては、生徒にはがんばって覚えてもらいましょう。

4. 「こんな当たり前のこともできないのか?」と言うのは間違い

さて、ここまで読んできて、英語が読める人は「そんなこともできないの!? 基礎じゃん!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。いいえ、これはある種の学習方法としてはある程度正攻法なのです。なぜなら、パターン2の人たちは、漢字学習をそのまま英語の単語の覚え方に応用しているから。日本語の漢字ように、一つの文字からいくつもの音が発せられる場合、パターン2のやり方で大方あっています。ただし、英語の場合は1文字で出される音がほとんど決まっているので、規則性さえ覚えればかなり省エネして覚えられることを彼らは気がついていないだけです。

アルファベットの読み方について、すんなりと読める人は、パターン2の人の苦労がわかりにくいと思います。英語と日本語は全く異なる言語であり、同じ学習方法は適応されないという分類が頭の中ではっきりできていないと、脳内で多大な混乱を招くと思います。

そして、指導者は生徒に対して「こんなこともできないのか」とは言ってはいけません。言ってもいいけど、それはそのまま自分へブーメランとなって返ってくるでしょう。生徒が大人になって、仮にあなたよりも英語が話せるようになった場合、こう言い返されるかもしれません。
「あなたはこんな初歩すら理解できないような教え方をしていて、しかもそこでつまずいていることに、気がつかなかったのだ。」
「こんなこともできないのか」という言葉は、それだけその人のつまづきを見つける能力のない、自分を責めることになります。

ただし、これは一人が大人数に教えている場合は気がつきにくい点です。そのときは、喜んで他の人に助けを求めましょう。個別でなければわからないつまずきポイントもかならずあります。

人は誰しも可能性があります。それは年には関係ありません。人それぞれが自分と違うということを念頭に置き、でも、自分ができたのならこの人もできるはずだという同じ目線で相手を信じながら進めていくことが、大切なのではないかと思います。

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