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飲食店の舞台裏

昨日、一年間働いた飲食店を卒業した。西荻窪にある「食べごと屋 のらぼう」という居酒屋だ。

のらぼうには、大学生の頃から通い始めた。野菜がとにかく新鮮で、エビとイチヂクのフリット、ナッツとにんじんのかきあげなど組み合わせのセンスにも毎回唸った。季節の土鍋ごはんがお店の売りで、いつも多めに頼んでは余った分をおにぎりにして持って帰った。外なのに家のような居心地の良さを感じるお店。店主の牧夫さんとお話するようになり、お料理や野菜のこと、いろんな話を聞かせてもらい店に通う楽しさを知ったお店でもある。働くずっと前に書いたnoteはこちら。

去年の今頃、会社員を辞めてアメリカにいた私は、「帰国したら料理の仕事を始めたい。けれど修行経験もないし、何十人分の料理を作るなんて自分にはできない」と思った。じゃあ、自分が学びたいお料理を出す店で働こう、と思った瞬間のらぼうのことを思い出した

食べ歩き好きなので好きな店は数えきれないが、「このお店のお料理を学びたい」と思ったのは、何度考えてものらぼうしか思いつかなかった。バイト募集していないのに「働きたいです!」とお願いし、熱意を買ってくださって1年間、週に数回働くことになった。

お店で働いてみて、驚くことは本当にたくさんあった。営業が始まると飲食店は舞台になる。お客さんは次々やってくるし、ビールは早く出さないといけないし、料理は熱々のうちに持っていかなければならない。手が空いたら皿を下げ、洗い物をし、伝票を打つ。あらゆることが同時進行し、デスクワークの会社員時代と比べて10倍くらい「マルチタスク力」を求められた。最初のうちは、終わるたびにへろへろだった。

そして、舞台の裏側には壮大な仕込みの時間がある。野菜は、店主自ら毎日三鷹の農家さんのもとへ足を運び、季節の移ろいを肌で感じながら野菜を仕入れている。だから、野菜が新鮮なのだ。私も畑に同行させてもらったことがあり、三鷹にこんなに大きな畑があったんだ!と驚いた。

お店に着いたら野菜や魚の下ごしらえが始まる。手早くお料理を提供するための下準備、店の掃除、醤油さしの補充、花の手入れ、窓拭き。全てはお客さんが気持ちよく、楽しく過ごせるために。自分がお客として来ていた頃に感じていた居心地の良さの理由が、ゆっくりと紐解かれていく。舞台裏の小さな積み重ねから、このお店が出来上がっている。今日くるお客さんの誰かも、私と同じように感じてもらえたらいいなと、毎回必死で働いた。

一年しか働いていないけれど、知らず知らずのうちに包丁の腕は上がったし、30人分の料理も作れるようになった。このお店での経験が、今の私の料理を作っている。お客さんに喜んでもらうために一生懸命なお店で働けて、本当に、幸せだった。

最終日に友達がお店に来てくれた。みんな、忙しいのにありがとうね。

最後に

のらぼうは、野菜が主役の素朴な料理を出すお店です。家庭料理のような優しさをかかえながら、手間暇をかけた繊細さがある。素朴だけど華やかなのらぼうの味は、他のどこにもないユニークさがあります。

友達とのご飯、デート、会食、一人飲み、どんなお客さんも楽しめるお店です。そしてぜひ来ていただきたいのが小さいお子さん連れのお客さん。小上がりのお席があり、小さなお客さんにも楽しんでいただけるようおもちゃや折り紙などをご用意しています。子供連れだと外食しづらいと思っている方、どうぞどうぞお越しください。私も今日からお客として、またお店に通います。どこかで会えたら一緒に乾杯しましょう!

みなさんのサポートが励みになります。 「おいしい」の入り口を開拓すべく、精進します!