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小倉ヒラクさんと旅した、沖縄発酵探訪記

発酵デザイナーの小倉ヒラクさんが沖縄にやってきた。私は先月まで開催されていた発酵の展覧会のイベントでヒラクさんに声をかけていただき、簡単発酵料理レッスンの講師を担当させてもらった縁で、沖縄の発酵探訪にご一緒させてもらった。ヒラクさんに発酵の現場を案内してもらう貴重な機会に恵まれたので、道中の記録を書き残しておきますね。

たった一日(8時間)で味噌蔵、泡盛蔵三つ、種麹屋、合計5つを巡るハードスケジュールな発酵旅。行った先々で「次訪れるべきはどこか」を聞いて次を訪ねる、行き当たりバッタリスタイルが旅感あって楽しすぎました。

味噌蔵・玉那覇味噌

玉那覇味噌は前回の沖縄旅の際に購入し、自宅でも愛用している味噌。口当たりがまろやかで、しつこくなくどんな料理にも使いやすいのが特徴だと思っています。

首里城の近くに170年ほど前から蔵を構える玉那覇味噌。ヒラクさんは「僕が知る限りもっともコンパクトな味噌蔵」と言っていました。3年前にヒラクさんが蔵を訪れた時は、全部の木樽の半分ほどしか味噌を作っておらず先行きがちょっと不安だったとのこと。しかし料理研究家の土井善晴先生が「徹子の部屋」に出演した際に紹介したり、「ブラタモリ」でタモリさんが蔵を訪れるなどテレビに取り上げられるタイミングが重なってめっちゃ売れているそう。木樽は全てぱんぱんに味噌が仕込まれていました。味噌を詰めていたおばあちゃんが「生産が間に合わないのよ〜」嬉しそうな困り顔をしていました。素晴らしい。那覇市内で「味噌飯や まるたま」も経営されていて、とてもおいしいですよ。味噌はネットでも買えます

ちなみにこちらの味噌蔵は戦争で空爆され、焼けてしまったもののなんとか残った蔵の柱を穴を掘って埋めておき、戦争を逃れるために疎開。戦後にその柱を掘り起こし、柱から採取した麹菌を培養し味噌作りを再開したのだとか……!

泡盛蔵①北谷長老

ヒラクさんが前日の夕食で古酒(3年以上寝かせた泡盛)の「北谷長老」を飲み、「この古酒は香りが素晴らしい、ぜひ蔵を見たい…!」と訪れた蔵。びっくりするくらい急な坂の上に建っていて、もうもうと米を蒸す煙が立ちのぼる外観。北谷長老の酒造りは細かな成分分析はせず、全て職人の経験値で作っているというから驚き。

対応してくださった営業の方が「発酵のことに興味があるなら、泡盛のもとになる黒麹専門の種麹屋があるので行ってみたらいいですよ」と教えてくださり、石川種麹店さんへ。

種麹屋・石川種麹店

石川種麹店は、沖縄県内で唯一(!)黒麹を作る会社。戦争で酒造所がほとんど焼けてしまうが、泡盛の原料である麹菌を復活させるために創業者が与那国島へ行き、蔵元の土壌を譲り受けて培養し、沖縄の黒麹菌を再び再生させたそう。沖縄の発酵食品は戦争を潜り抜けてきたものがたくさんあって、こういう話がごろごろあるのです。

47蔵ある泡盛蔵の8割がここの黒麹を使っていて、親子3人で経営されているというから驚き。一番右が黒麹の液体で、クエン酸の爽やかな酸味とフルーティな香りが印象的。真ん中は会社オリジナルの黒麹玄米ドリンク、一番左はそれを練りこんだアイスクリーム。さっぱりしていて、暑い夏にぴったりでした。

泡盛蔵②崎山酒造

ヒラクさんと仲良しな女将さんがいる崎山酒造さん。ここは通常2日間で作る麹を、昔ながらの木製の室で3日間かけてゆっくり作るのが特徴。ここでは泡盛を蒸留した後の醪を絞った「もろみ酢」を購入しました。女将さんが教えてくれた、豚肉や鶏肉をもろみ酢:泡盛=2:1と塩を入れた煮汁でコトコト煮込む料理、さっそく実践してみたら超絶美味!!これはハマりそうです。(写真はソーキのもろみ酢煮)

泡盛蔵③神村酒造

うるま市の神村酒造さんも行きました。ここで印象に残っているのは、泡盛を地下蔵で預かってくれるサービスがあること。沖縄では出産祝いに泡盛を甕で購入し、二十歳になったら封を開け成人を祝う風習が今なお残っており「育てる酒」として認知されています。観光客でも泡盛を育てる経験ができる(しかも酒造がバッチリ温度管理してくれる)のは、素晴らしいなと思いました。

そして夜、ヒラクさんは発酵のトークイベントに登壇。47都道府県の発酵旅を経たヒラクさんの体力に圧倒されました。

おしまい。

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