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【オペラ日記 2】表も裏も楽しめる『のだめカンタービレ』アンコール オペラ編

遅ればせながら、オペラ好きとして読みたいと思っていた、二ノ宮知子作『のだめカンタービレ』の「アンコール オペラ編」をやっと読みました。

『のだめ』は大好きで、ドラマや映画は全て観ていましたが、原作漫画の方は途中まで読んで放置してしまっていました。オペラ編だけを読むよりも、本編の方も読み直そうと思って、2021年~2022年に発行された「新装版」(全13巻)をこのほど読破しました。

「新装版」には、書下ろしページも多数含まれていて、未収録ストーリーも入っているので、すでに『のだめ』を連載や単行本で読んだという方も改めて楽しめると思います。

本編はもちろん、『のだめ』の世界観に入り込んで味わいました。そして、「オペラ編」(新装版だと12~13巻。オリジナル単行本だと24~25巻)も楽しかった。

オペラ編では、主人公「のだめ」こと野田恵はすでに世界的に活躍するピアニスト。日本の音大でのだめが追いかけていた先輩で指揮者の千秋真一は、今ではれっきとしたのだめの彼氏です。まだまだ若手指揮者である千秋が、本場の欧州で振れないオペラ公演のチャンスが、日本で友人たちが運営する古巣の「R☆Sオーケストラ」との共演という形でやってきます。のだめと千秋と同じ音大出身のソプラノ、菅沼沙也が主宰する「白い薔薇歌劇団」による、モーツアルト作曲「魔笛」の公演です。

オペラの指揮は、駆け出しの指揮者の千秋にとって憧れであることが描かれています。キャリアをある程度築いた指揮者がやっと挑戦できる、クラシック音楽における大きな山が、オペラということなのですね。オーケストラだけとの演奏とも、オケとソリストとの協奏曲とも全く違う音楽作りで、まず歌手たちがいて、舞台装置・衣装を含めた演出もあって、必要となる準備も膨大です。

オペラの制作過程を描きながら、主要なシーンやその歌詞(日本語訳)も紹介されていて、これを読めばきっとオペラ「魔笛」が観たくなります。

音楽面でのけいこの進め方はオペラ独特のものですし、演出に対する歌手たちの思い、音楽と衣装・芝居・振り付けとのリンクなど、オペラを観る上でのポイントを裏方視点で知ることができます。

ここに出てくる歌手は皆一筋縄ではいかない人たちばかり... リアルのオペラ歌手たちはどうなのかしら、と想像が膨らみます。歌手のダイエットや体作り、共演歌手の調子の良さに影響されて良くなっていく歌手の様子など、オペラあるあるも描かれています。

単行本になる前の雑誌連載時の区切りには、扉絵が挿入されているのですが、すべて、のだめを中心としたキャラクターがオペラの役に扮した絵です。何の演目のどの場面なのか考えるのも楽しいです。『のだめ』新装版の締めとなる書下ろしエピソードも、プッチーニ作曲オペラ「ジャンニ・スキッキ」にちなんでいます。

下の映像の曲 “Ach, ich fühl’s”は、「魔笛」の主役パミーナ姫役の菅沼沙也が歌っていたアリア(独唱曲)。沈黙の試練に臨んでいるタミーノ王子に無視され、もう愛されていないと勘違いしたパミーナが、その悲しい気持ちを歌います。静かにゆったりと美しく、リハーサル時に千秋が菅沼の歌にオケの伴奏を合わせるのに苦労するものです。そして、千秋にキレる菅沼😆さて、本番はどうなるでしょうか。

この映像は、ニューヨークにあるメトロポリタン歌劇場で今年から上演されているヴァージョンの「魔笛」です。「魔笛」は場面転換が多く、さまざまなタイプのシーンがいっぺんに観られ、ファンタジーの要素もあって、演出家が腕をふるった面白い公演が多くあります。この演出もなかなか凝った作りで、大掛かりなセットと手作りの魅力の両方が楽しめるものでした。初めて映画版でオペラを観た友人が、「本物を観てみたい」との感想でしたので、オペラをよく知らない方やお子さんにもおすすめです。

今月、この映画版「魔笛」のアンコール上映があります。「魔笛」の音楽やストーリーが気になってきた方、まだ何回かチャンスがありますので、『のだめ』オペラ編を片手に楽しんでください。

METライブビューイング
東劇(東銀座)アンコール上映2023
「魔笛」の上映 9/23(土)14:50~

なんば、神戸、名古屋アンコール上映2023
「魔笛」の上映 9/27(水)11:30~、9/28(木)11:30~

ではでは、また!


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