リピーテッド

 ベストセラーミステリーの『わたしが眠りにつく前に』の映画化作品らしく、主演はコリン・ファースに、ニコール・キッドマン、マーク・ストロングと有名どころらずらり。
 目覚めるたびに自分が何処にいるのか、隣に寝ているのが誰なのか分からなくなる女性クリスティーン(ニコール・キッドマン)が主人公で、彼女は事故で頭に負った傷がもとで寝るたびに記憶が十数年前に戻る症状と、彼女の夫だと自己紹介する隣にいた男性のベン(コリン・ファース)から告げられる。
 にわかには信じられないが、ベンが出勤後に家の電話が鳴り、それはナッシュと言う医者(マーク・ストロング)で同じことを告げるが、ベンには知られないように記憶に関する治療をしていると、内緒でデジカメに昨日までの記録あるから観るように促す。
 いわゆる記憶消失物だが、この冒頭はこの先を感じさせてぐっと引き込まれることに。こういう場合、だいたいが一緒に暮らしている人物か、治療する人物のどちらかが怪しいのだけど、この段階では分からないというのも当然。
 が、観ているうちに少し違和感が。そもそも主人公自身が『信頼できない語り手』なので、こういう場合は彼女の感覚にはらはらどきどきしつつ、彼女を取り巻く人物の発言から謎を解くのだと思う。むろん、彼らも嘘をついている可能性は考慮しつつ。
 例えば、実はクリスティーンは事故じゃなく、犯罪被害で頭に傷を負ったというを医師ナッシュより告げられるが、なぜベンは事故だったと伝えたのかとか。またアダムという息子がいたけど、彼は早くに亡くなってしまったのでベンは伝えられなかったとか。また実はベンとクリスティーンは四年も前に離婚していたとか。さらには親友にクレアという女性がいたが、彼女の存在をもベンは伝えず、さらに医師ナッシュよりクレアの連絡先を聞いたクリスティーンはクレアに電話して会うと、ベンとクレアは一度だけ浮気をしたなど、衝撃的な事実が波状攻撃のように告げられていく。
 そういう中で、ベンがクリスティーンと分かれた理由は「子供を失ったから」だというが、じゃあなぜ、またクリスティーンの元に戻ったのかの説明がなく「おや、これはもしかして伏線か?」などと期待してしまう。
 また医師ナッシュにベンに内緒で治療していた事実に激昂したベンに殴られたクリスティーンが、クレアに電話すると彼女はベンと話してみると約束する。しかし、再びクレアからの電話で「ベンは離婚してからあなたとは会ってない」というかなり衝撃的な事実を告げ、クレアの知るベンと、クリスティーンと一緒に暮らすベンはルックスも違っていたりする。
 しかし寝たら忘れるクリスティーンの症状を利用して、翌朝には何もなかったことに成功した一緒に暮らしているベンのもとに、クレアから携帯電話での着信があったり「え、クレアも嘘ついてたの!?」と、これって大どんでん返しで面白くなってくるところだと思うのだが、実はこれら小出しにされた伏線的謎の回収がなされないまま、そのまま普通に↓↓↓ネタバレ注意↓↓↓


 一緒に暮らしていた男がクリスティーンの浮気相手で、別れを告げられたときにかっとして暴力を働いた人物で、実際の夫のベンとは医師の言う通りに四年前に離婚し、理由は自分のことを忘れる母親と一緒にいるのは幼い子供にはしんどいから。なのでアダムも死んではいない。という、なんのひねりもない落ちに。医師ナッシュも普通にいい奴だった。


 じゃあ、この男のもとにクレアから電話あったのなんで? ベンは元妻がそんな状態なのに入院先に連絡すらせんかった(普通「あなたが迎えに来ましたが?」となれば大問題になるんじゃない)? クレアも「退院してから連絡先不明であなたからの電話を待っていた」とかって話なのに、ベンに連絡先聞かなかったのはなんで(ベンの電話番号は知ってた訳で)? と、ちょい謎をそれっぽくするために、登場人物全員の信頼性薄めたらアカンよなぁと。
 一人だけでも「最初から最後まで一貫して正しいことを伝えている」んだけど、主人公の『一日で記憶の無くなる』症状からするとその意見こそが大嘘に聞こえるみたいなのじゃないと、終わったときの「ああ、そうか、やられた!」ってのにつながらない。
 ただただ、「え、あの思わせぶりな発言はなんだったの? 結局関係のない話?」と、戸惑う原因に。実は原作読んでないので、映画化にあたってだいぶんと端折られたところに書いてあるんかなぁ。原作読まないとなぁと思いながら、読むかどうかは分からない。

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内藤万博

映画評 No.2

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