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今最も"共感"と"カタルシス"、そして"許し"を描いている漫画家の話「パチン娘」「幸せカナコの殺し屋生活」

と言う訳で今回は若林稔弥先生の「パチン娘」を紹介したいと思います。

とは言っても、この漫画を紹介する前に「幸せカナコの殺し屋生活」の話をしなきゃいけません。
この漫画は簡単にいうと影の薄いOL"カナコ"がパワハラを受けて会社を辞め、知らずに殺し屋会社に入社して依頼を受けることで殺しの快感を得ていくって漫画です。

…字面にすると「どんな漫画だよ(笑)」って感じですが、カナコが殺すのは自分をパワハラした上司に始まり、老害、ヤリチン男、痴漢常習犯など誰かが困っている人間を殺す訳で…だから何??って話ではありますが、これは巧妙に我々のストレスの原因、「ストレッサー」を殺してくれてるのです。それに「私は良いことをしている」と殺人の罪悪感で均衡を取って生きていくカナコが読む人の心の支えになるように出来てるのです。
私がこの漫画を読んだ時は職場の人間関係でストレスを抱えていた時で「ころしちゃえばいいんだ!!」という(もちろん内的に)この漫画のテーマにすごく心が軽くなった覚えがあります。
もちろんそれだけじゃなくカナコは殺すことへの葛藤を持って辛い事にもなるのですがそれでも強く生きていくカナコの姿にも元気づけられる漫画なのでストレスを抱えてて少しでも軽減したい人には是非読んで欲しい。

…と言う事でパチン娘の話です。
「幸せカナコ〜」が生きることへの辛さに対する共感だとしたら、「パチン娘」はクズでいること、そしてクズを許すこと、そして一番大事な所は"他人を下に観ている自分を許す"という事です。
主人公はふとしたことからパチンコにハマるのですが…
パチンコすることに対して羞恥心や嫌悪感を感じている…もっと詳しく言えば「そうやって社会に教育されている」のです。
でも他のパチン娘たちは自分をクズと認め、全てを受け入れてパチンコを楽しんでるのに対して、そこまではいけない主人公は「でもさ…あなたもここにいる人たちと同じだよね?パチンカーって世間からみたらクズの集まりかもしれないけど、一人一人何か理由があってパチンコ打ってるし救われてる」「クズを見下してるあなたもクズなことしちゃってることあるよね?」ということを彼女たちや自身の体験から感じるようになっていくという話なのですが…

この説明じゃなんか面白く無いですよね(笑)
これらの主題をかわいいキャラとパチンコあるある、クズあるあるなどで飾りつけてあるし、ここが本当にすごいのですが、パチンコネタが分かる人もわからない人にもクズを笑えるようにチューンアップされているのです。
しかも珍しくパチンコの負けを肯定する話なのが良い。
この漫画を読むとクズは「そうだよねぇ」「わかってくれてありがとう(泣)」となり、まとも?な人は「こいつら本当クズだな(笑)でもかわいい」となり、たまにそれを見下してる自分にグサっと来て「まあやりすぎるのはあれだけど…それで生きてるならいいかな?」ってなるわけです。

…紹介するのって難しいなぁ(笑)
でも気楽に読めるし、絶対嫌な気持ちにはならないのでこの稀代の才能を持つ漫画家の作品をよろしければ是非読んでいただきたいと思います。

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