バリ島で知らない人の結婚式に参列して、眉間に米を塗りたくった話
こんにちは。弓達です。
普段は主にカフェについての話を呟いていますが、今日は関係ないお話を。
数ヶ月前のこと。
僕は異国の地、バリ島を歩いていた。
来たはいいものの、僕は予定を立てるのが大の苦手だ。
今日と明日は予定が一つもなかった。ので、ただ街を散歩していた。
道端で首輪のないごっつい犬に吠えて追いかけ回されたり(めっちゃいる)、タクシー呼んだら原付の後ろに乗せられたり(余裕で歩道を走る)、両替屋さんに行ったら手品みたいに詐欺られそうになったり(目の前で数えてくれるのに、僕の手に渡った瞬間少なくなってる)。
そんな最中に、人混みを見つけた。
すごく豪華に飾り付けがされている。
日本で言う夏祭りのようなものかな。
お祭り、好き。入ってみるか。
そんな感じで中に入ってみた。
美味しそうな食べ物が並んでいたので奥に進んでみる。
なんかすっごいみんな、僕の方を見てくるな。
そりゃそうか、半袖短パンの外国人がお祭りに参加してたら、見ちゃうよなぁ。
奥の方まで行ってみると、一人のおじちゃんが話しかけてきた。
「どこから来たんだい?」
「日本から来ました」
「そうか、そうか。日本は好きだ。それで、どうして今日はここに?」
「なんか歩いてて、お祭りかなと思って入ってみました!」
「あーー、なるほどね。でもこれお祭りじゃなくて、結婚式の準備してるんだ。だから、ここは新郎の家で、この100人くらいみんな親戚か、友達。」
あ、、、、、
僕はここでやらかしたことに気づいた。
ただの人の家に不法侵入してた、外国人だったのだ。
そりゃあみんな、やばいやついるって見るよね。
日本だったら捕まりかねないなと思いながら、もう少し話してみる。
「結婚式いいですね!いつ結婚式なんですか?」
「明日やるんだ。お前も来るかい?」
なんか、誘われた、、笑
え、結婚式に知らない人ってこんな簡単に誘っていい感じなんだっけ?
しかも、不法侵入外国人。
と、思いながらも、せっかくの機会だから行くことにした。
知らない土地で、知らない人の結婚式に行くことになった。
「明日は10時集合ね」
初めての体験への大きな期待感と小さな不安感を抱きながら帰路に着いた。
結婚式当日
9時55分。
会場に到着した。5分前に着いてしまうのは、日本人だからなのかなと、そんなどうでもいいことを考える。
会場に入ると、入り口で手みあげ品のような見たことないお菓子を3,4個もらった。御祝儀的なものを持ってこないといけなかったのかもと、このタイミングで気づく。
一人で気まずそうにしていると、何人かの若者が話しかけてきてくれた。
同い年くらいだろうか。
「どこから来たんだい?」
「日本から!」
「わお、ワンピースと進撃の巨人と地獄楽が好きだぜ」
やはりどこの国に行っても日本の"アニメ"は人気らしい。
小さい頃はドラえもんを見て育ったと。
「あれが、今日の新郎新婦だよ」
そこには、とても美しく着飾られた姿の2人がいた。
日本の結婚衣装はもちろん美しいが、それとはまた違った、なんというか神々しさを感じるような、そんな衣装だった。
後で、新婦のおばあちゃんに教えてもらったのだが、二人は僕と同じ年齢らしい。バリ島では22歳ごろに結婚するのが普通だそうだ。
ここでもまた日本との違いを感じた。
結婚の儀式が始まった。
日本の結婚式とは違い、まさに儀式と呼ぶのが相応しい雰囲気だった。
突然、みんながカメラを構え出した。
これはきっとシャッターチャンスが来るんだろうと、僕もおもむろにカメラを構えてみる。
あーん。
日本だと、付き合いたてのカップル(かなりアツアツの)でしか見ることのない、あの"あーん"が始まった。
多分、日本で言う誓いのキス的なことなのだろう。(多分違う)
「これは、バリの結婚式ではすごく大事な儀式なんだよ」と、彼らが教えてくれた。
新郎新婦両家の集合写真撮影タイムが終わり。
式が一段落した。
先ほど話していたワンピース好きの彼が言った。
「こっちに来い。俺が後ろに乗せてやる。」
どうやら別の場所に移動して、次の儀式を行うらしい。
けど、僕はヘルメットを持ってないよ。
と一瞬言いそうになったが、この土地ではヘルメットをつけずにバイクに乗るのは当たり前で、なんならどこからどう見ても小学生だろという少年がブンブンとバイクを走らせている。
文化の違いを感じながら、彼のバイクの後ろに乗せてもらった。
交通ルールなどは存在しないので少しの恐怖心と、それ以上に異国の地で風を切る気持ちよさを感じていた。
次の会場に到着した。
石でできた昔ながらのお寺のような場所だ。
「そういえば、お前、これを履いてないじゃないか。」
いきなり腰に布を巻き付けられた。
腰に布を巻くのが参列者の正装らしい。
びっくりしたが、この布を巻くことで、この場に少しだけでも受け入れてもらえたような気がして嬉しかった。
少しすると次の儀式が始まった。
一人目のおばちゃんが聖なる水をくれるのでそれを頭から被り、
二人目のおばちゃんがびちょびちょのお米をくれるので、それを眉間とこめかみに塗りたくる。
こめかみに米を塗る。
こんなダジャレが実現することがあるのかと、一人でにやけてしまった。
全員が米を塗りたくったところで、皆が歌い始めた。
僕には理解できない言語ではあったが、不思議と心が落ち着いた。
バリ島は神々の住む島と呼ばれているが、
本当にこの島には神がいるんじゃないかなと思うような、そんな神秘的で美しい光景だった。
歌が終わり、元の会場に戻り、夜の部が始まった。
夜ご飯もたくさん食べていきなと言っていただき、みんなとご飯を食べながら現地の暮らしや日本のことについてなどたくさん話した。
「バリ島の伝統的な踊りが始まるよ」
彼らがそういうと独特な音楽と共に、衣装を着た女性が踊り始めた。
ケチャダンスというバリ島の伝統的な踊りらしい。
気づいたら、僕は彼女に手を引かれていた。
なんか変なやつがいるからと、100人の前に引っ張り出されて一緒にケチャダンスの共演をさせられた。
伝統的な踊りでこんなふざけててもいいのか、と思ったが、皆楽しそうだったので、そんなことは考えないことにした。
知らない土地の、知らない人の結婚式で、知らない人たちの前で、知らない踊りをする。
日本で踊るとなると、かなり恥ずかしいが勝つのだろうが、なぜかこの空間だと楽しかった。
一緒に食べて、話して、歌って、踊って。
とっても温かい夜だった。
「じゃあな、またバリ島に来たら連絡くれよ」
「そういえば、最後にここにサインを書いて行ってくれ」
現地の方々の名前の中に、全く馴染んでいない「弓達太一」という漢字の文字を書いた。
「ありがとう、楽しかった、また来るよ」
そんなこんなで、僕の知らない土地で、知らない人の結婚式参列は終わった。
ホテルに戻り、余韻に浸りながらお風呂に入ろうと、鏡を見た。
そこに映るこめかみに塗りたくられた米が勲章のようで、なぜか少しだけ誇らしかった。
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