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モノづくりと生活者へ価値提案について考えさせられたこと

この週末は、All yoursさん主催の「LIFE SPEC CO-OP」に、木村石鹸として出店させて頂いてて、沢山の素晴らしい人たちとの出会いがあり、出させて頂いて本当に良かったなと実感していいます。

個人的にも、イベントの中で、All yoursの代表2人、木村さんと原さんの対談があって、その内容が自分たちのモノづくりを改めて考えてみるすごく良い切っ掛けになりました。

どれだけ穿いても真っ黒のまま ガングロチノパンツの開発の話がすごく面白かった

それは、All yoursが最初に商品化した「【どれだけ穿いても真っ黒のまま】ガングロ チノパンツ」の話でした。

開発時に、既存のファンション業界の例えば糸や綿を作ってる会社に「真っ黒なままで色落ちしないパンツを作りたい」と相談に行くと、誰もが「そんなのは絶対無理」とけんもほろろの対応だったそうです。

色落ちしないことが当たり前の業界

ところが、少し目線を変えて、違う業界を見てみると、色落ちしないことが当たり前の業界があるわけです。

例えば、水着。あるいはサッカー選手などが着るようなユニフォーム。こういったものは色落ちしないことが前提です。

そりゃプール入ってて水着が色落ちしたなんてことになると大変だし、どれだけ汗かこうが、雨に打たれようが、ユニフォームは色落ちしないのが普通です。

既存技術を別の切り口の価値提案に変換

なので、all yoursは、ユニフォームなどで使われる素材で、チノパンを作った。それを「どれだけ穿いても真っ黒のまま」という分かりやすい価値提案で訴求したわけです。

彼らがやったことは、もともとあった当たり前の技術を、別の業界に持ち込んで、見せ方や切り口を変えて、ということですね。

これに対しては、色んなところから批判の声があったそうです。「そんなの昔からある、当たり前のことじゃないか」とか。

それに対して、彼らは、「そうだ」と。「確かに、既存にある技術だし、当たり前のことだ。でも、それをファッションの切り口でやってないから、自分たちがやったんじゃないかと。君らが誰もそれをしないから、僕らがやったんだ」と。そんな風に返します。

実際、そのパンツは、生活者に圧倒的に受け入れられ、最初のクラウドファンディングも大成功するわけです。

この話を聞いて、これはどこの業界にもあることだし、僕ら自身も気をつけなければならないことだと気づいたんですね。

メーカーが考える洗剤と、生活者の欲しい洗剤

同じく、all yoursの木村さんが、こんなブログを書いてて、それがかなりバズってました。

簡単に言うと、おしゃれ着洗い用洗剤のエマールを使えば、どんなものでもこれ1本で済ませちゃえるよ、という提案です。いちいち素材のことを考えなくても、エマール使っておけば、だいたい大丈夫だ、というそういう話です。

これは、僕らみたいに洗剤開発側にいると、なかなか気づきにくい視点だったりするんですね。

この記事をこちらの業界の人が読むと、「確かにそうだけど、でも、エマールだとそんなに汚れが落ちないですよ」という感想になったりするんじゃないかと思うんです。

開発や技術なら特にそうで、衣類の洗浄なら、様々な汚れに対しての洗浄力のテストを日々行ってます。皮脂汚れから、たんぱく質汚れ、血液、ドロ汚れなど、衣類で想定される汚れについて、どこまで洗剤がカバーできるかに真剣なわけですね。

洗浄力を高めてしまうと、ウールやシルクとか天然繊維には対応できなくなっていくので、じゃぁ、そういう天然繊維系は、手洗い前提で洗浄力を弱く、phを調整したもので対応しよう。日常使いはしっかり洗浄力があるもので、、という、そういう開発脳に自然になってしまってるわけです。

でも、よくよく考えると、生活者としては、まとめて洗えるほうが楽だという人の方が多いでしょうし、ウールだからシルクだかどうというのは、知ったこっちゃないという感じですよね。きちんと洗えてて、衣類がダメにならなければ良いわけです。

勝手に自分たちで基準を決めて、その基準に縛られてないか?

そして、重要なのは、開発側や業界側が勝手に決める、こういう汚れが落ちないと洗剤としては不十分、みたいな思い込みというか固定観念は、生活者とは無関係だということですね。

子供やアウトドアを駆け回る人ならまだしも、普通の大人が日常生活を送っていくなかで考えると、衣類の汚れなんて実はたいしたレベルではないんじゃないかと思うのです。

一番メインは皮脂汚れですね。汗や皮脂が取れれば十分なのかもしれません。それ以上の汚れは、洗濯機よりも手洗いとか、部分洗いで対処したらいいことです。(というか、そっちで対処しないといけないことです)

それならおしゃれ着用洗剤でも洗浄力としては十分なのかもしれないわけですね。

近視眼になっちゃダメだな。気を付けよう。

エマールで全部洗えばいいじゃん、という提案は、その提案を聞いた後では、そりゃそうだよねという感じなのかもしれないけど、「そりゃそうだよね」という感想自体が、メーカー側の発想だなと。その感想に落ち着いてる限りは、イノベーションなんて起こせないんじゃないでしょうか。

これも先のガングロチノパンの話と重なるところがあるように思えます。自身の業界では当たり前になってる、あるいは非常識なことが、少し目線を変えると、別の業界では非常識だったり、当たり前だったりということがあるわけです。

あるいは、モノづくり側が定める基準やルールみたいながものが、生活者の実ニーズ&ウォンツとはえらく乖離してしまってる、みたいなことです。

モノづくりは、近視眼に陥りがちなのかもしれません。

どうしても競争や競合となると、同業界の他の商品とのベンチマークになっていくし、その中で、どう差別化するか、性能を上げるかみたいな競争に陥りがちです。

自分たちの業界や枠組みを取っ払って考えて見るとか、まったく別のレンジから自分たちのプロダクトやサービスを眺めてみるとかは、意識的にやらないといけないことなのかもなと感じました。

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