先月5月くらいから、神保町の劇場でもたまにチケットが手売りがされるようになった。
企画ライブだったり、単独ライブだったり。


噂には聞いていた「手売り」。
芸人さん自らが声をかけて、自ら公演チケットを売る。
場合によっては、サイン書いて貰えたり、写真撮っていただけたりするらしい。
また時間があれば、すでにチケット買っていても、サイン貰えたりすることもあると聞いた。

先日、ちょうど自分が見に行く公演の前に、この手売りが行われている時間と重なった。

チケット窓口があって、トレカとかステッカー売ってるグッズ売り場があって、その右横のスペース。
小さなテーブルを出して、芸人さんが立って、フライヤーを持って、チケットを売っていた。

神保町よしもと漫才劇場に行ったことある人は分かると思うのだけど、神保町の劇場ロビーは、広くない。
多分、結構狭い。
（行ったことある吉本劇場、あとはルミネだけだから、他の劇場の様子、全く分からないんだけれど……）

いつも開場待ちするのにも立って待つスペース無くて、完売公演だと入退場にかなり混雑する。

まず、最初、神保町劇場で手売りが始まる（再開？）と聞いた時、「行ってみたい」の気持ちと同時に、「えっ……場所ある？混乱しない？」と心配になった。

そして実際目の当たりにして、抱いた気持ちは、正直なところ結構複雑だった。

初めて遭遇したあと検索したりとか色々で、
手売りチケットについては、どうやらお客さんの間にも、芸人さん達の間にも、色々な意見があるらしい、というのは見聞きしている。
でも、今回は良いとか悪いとか意見云々というわけでは無く、単純に、私が初めて遭遇したその時思ったことについて書いてみようと思う。

私が手売りに遭遇したのは、まだ1回だけ。

その手売りされてる公演は、
私の中で「（理由は何であれ）チケット買えない もしくは 買わない」に該当する公演だった。

申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

チケット買えなくて、買わなくて、ごめんなさい。

近くで芸人さん見れて嬉しいとか、思う余裕はなかった。

とても積極的に声をかけてチケットを売っている芸人さんの前を、どうしても通らないと行けない。
そこを通らないと客席に入場できないし、お手洗い行く時なんて真横を通る事になる。

ロビーが広ければ、前を通らないようにするとか、何か方法があるだろうけど、神保町劇場はそうもいかなくて。

自分が見に来た公演の開場待つまでの間、ずっと手売りは行われてるその目の前で、ただ立って開場待つしか無くて。

時間はきっと5分もない短時間だったはず。
それがとても長く感じた。

手売りの声から逃げるように、目を伏せた。
何を見るでもなくスマホに目を落として。

これが「チケット買える、買う」公演だったり、既に持ってるチケットにサイン貰えるとかの手売りだったら、抱く感情はまた違うものだったと思う。

きっと、直接受け取ったチケットは嬉しかっただろうし、近くて芸人さん見れて嬉しいと思っただろう。大丈夫なら、発券したチケット片手に、サイン貰いに行ったかもしれない。

ちなみに、言い訳にしかならないが、
私は基本1人で劇場観に行くタイプで、お笑い以外の普段も1人を満喫しすぎていて、そこでチケット買って誰か友人に配るとか、そういう発想は一切思いつかなかった。

配らないにしても、チケット買って売上には貢献する（あるいはサイン・写真代だと考える）けど、行けない公演だからそのまま空席にする、という発想も無かった。

その時の自分の中に
「自分が行く公演のチケットを、自分で1枚買う」
という考えしか、無かった。

これが、いつもよく観に行ってる、特に応援している芸人さんだったら？？

その芸人さんが手売りしている時に、どんな顔して、どんな気持ちでそこを通ればいい？

チケット買えない時、買わない時、
その場でただ開場を待っていられないかもしれないと思った。

（じゃあチケット買って友人とかに配れば悩む必要ないでしょと思われるかもしれないけど、それができたら悩んでないです……）

狭い、神保町の劇場ロビーで、
形容しがたい、妙に複雑な感情を抱いてしまって。

手売りで検索した時、色々な意見を見聞きした事と相待って、複雑としか言いようがない気持ちになった。

今、手売りでチケットが売られているという事実はあって。
きっとこれも、正しいとか正しくないとか、良い悪いとか、お客さん側・芸人さん側・劇場側とか、色々難しい事なんだろう。

手売りがあってもなくても、私が行きたいと思うお笑いライブに、今まで通り観に行けば良いんだろうけれど。


きっとまた手売りに遭遇することはあるし、でも神保町の劇場ロビーがいきなり広くなることは無いわけで。

どうしたものかなぁ……と、また無駄に自分の中に考え事を増やしてしまっている。