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アルバイトの思い出


学生時代、ケーキ屋でアルバイトをしていた。
作る方ではなく販売する方。

このバイトがなかったら、多分、私は社会人になれなかったと思う。
そのくらい、私に大きな影響を与えたバイトだった。

そんなバイトをちょっと振り返ってみた。


選んだ理由

学業が落ち着いて、よしバイトをしよう、と思い立って、どうしてケーキ屋にしたのかあまり覚えていない。

とにかく、接客業にしてみようと、そこは頑張った。コミュ力が低くて、電話も出来なくて、笑顔も苦手で、このままじゃ就活なんて出来やしないと、苦手意識のあった接客業を選んだ。

山ほどある商品を覚えるのは無理だと思い、どーんとメイン商品があって、品数が少なそうなところにした。
これは結局、焼き菓子やら季節商品やらで、余り少なくはなかった。

あと、既にできてる関係の中に入るのは怖くて、オープニングスタッフ募集を探した。
これは功を奏して、色々苦労があったオープニングを乗り越えたおかげか、バイト同士はとても仲が良く、居心地はとても良かった。

結構キラキラした可愛いケーキ屋で、
店長はよくこんな地味な私を採用したなと、今でも不思議で仕方がない。
仕事のやる気もケーキへの情熱も無く、
むしろ消去法で選んだのに。

周りの友人からも、
「え?ケーキ屋でバイトしてるの意外! 本屋とか雑貨屋とかっぽいのに」とよく言われた。自分でも本当にそう思う。


仕事

ケーキや焼き菓子を販売する。
小さなカフェ併設だったので、コーヒーや紅茶を淹れたり運んだりするのも仕事だった。

小さいお店なので、ケーキを箱に詰めながら、レジ打って、オーダー取ってコーヒー淹れて、誕生日ケーキのプレートを書いて、焼き菓子ラッピングして、
ケーキ作る以外のことはなんでもやった。

目が回るほど忙しい土日に2人しかいなくて、長蛇の列に半泣きになりながら、販売とカフェを同時にこなしたりした。
かと思えば、平日は何時間もお客さんが来なくて、何度も備品を数えたり一度拭いたところをまた磨いてみたりすることもあった。

頭をフル回転させて、常に笑顔で、下手したら休憩ほぼなし10時間勤務とかあったが、アドレナリンでなんとかしていた。
あの頃の自分は、今考えると自分じゃないみたいだ。

思い返すと、ろくに研修もなくて、うん?と首を傾げる事も結構多い店だったが、
バイト仲間に恵まれて、なんとか働けていたのは奇跡だったと思う。


良かったこと

ゼロに近かったコミュ力は、ちょっとマシになったと思う。

バイト仲間は同年代ばかりで、気さくな人が多かったし、毎回少人数でお店を回すからチームワークがすごく良かった。
とても良い環境だったから、必然的にコミュニケーションをとることへのハードルが下がった。

苦手な電話応対も、数をこなしてなんとか前より慣れる事ができた。
(クレーム電話がトラウマになって、しばらく電話に出られない事はあったが……)

思い出深いのが、いい意味でなぜか私だけ常にあだ名で呼ばれていたこと。
(例えば私の苗字が山田なら、やまりん みたいな感じ)
主婦さんにも後輩にも「あだ名+さん付け」で呼ばれていて、みんな私の本名が分からなくなっていたのは面白かった。

あの馬鹿みたいに忙しい土日の、ほぼワンオペの目まぐるしさがあったから、
あれよりはマシ、と今が楽に思えたりする。


あと1番は、やっぱり、自分に接客業は向いてないと分かったこと。

笑顔でケーキを渡すのも、コーヒーを運ぶのも、予約の電話を受けるのも、たまにミスはするが人並みには働けていた(と自分では思う)。

ただ、常に頭の中はフル回転で、あふれるアドレナリンのおかげで働けないことはないのだが、1日働くと疲労がひどく、2連勤すら出来なかった。

ケーキを買って嬉しそうなお客さんの顔を見るのは好きだったが、
それよりも食器を洗ったり、備品を切らさないように補充したり、閉店後の締め作業している方が好きだと気がついた。

バイト仲間にも「譲葉がそうやって色々フォローしてくれるから、同じシフトだと動きやすい」と言われて、
私は接客業よりもっと裏方の仕事が向いてるのかもと気づいた。
どうしてもオールマイティな人が求められてるような気がしてしまうが、人にはやっぱり、向き不向きがある。

辛い事も多かったし、もし転職しても二度とあのケーキ屋に戻りたくはないと思っているけれど、
あのバイトでの経験と日々があったから、ちょっとはマシになって、社会人として会社勤め出来ている今の自分がいると思う。

結局、学生時代のバイトはこのケーキ屋1件だけなので、もっと色々な種類なバイトをしても良かったかなとは思ったりする。


終わりに

今はもう勤めていたお店もなくなって、
バイト仲間も学生ばかりだったので、進路と共にバラバラになり、連絡を取る事もない。

ただ、今に繋がる経験と、バイト終わりに食べたケーキの味だけが、
自分の中に残っている気がする。

そしてケーキを買った時には、
ふと、あのバイトの日々を思い出して懐かしんでみたりしている。

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