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彼女 : 独り言



彼女はそれを私に手渡した

それは私を喜ばせようとしたもので

自分の喜びを私に手渡した


「自分のモノを差し出さなくても
 私はあなたをきらいになんかならないよ。」


そう思ったのに、
私はそれを黙って受け取ってしまった。

受け取った瞬間、
二人のかすかな不協和音の振動が流れて行く。

人は、
このかすかな不協和音を
気付かずに積み重ねて行く。
この世界には、
このかすかな不協和音が溢れて、
そのうちに、
誰ともハーモニーが生み出せないと確信してしまう。


私にそれを手渡した彼女は

自分のモノを手渡すのが癖になり

自分の居場所さえ極小だ

この世界に存在することさえ遠慮してしまう


彼女のパズルは入り組んで、
無理に解こうとすれば崩壊するだろう。
だけど、
彼女は難解なパズルを解いてくれる人を、諦めたふりをしながら、心の底では待っている。

…そんな場所に、立ち入る人はいるのだろうか?

人は自分のことで精一杯で、自分に振り向いてくれる人などいないと諦めながら、それでも、心の底では何かを待っている。
諦めてなどいないと、気付くだけなのに。

…自分の本心が一番痛いよね。

人は、
なりたい自分を思い描いて、受け入れる事でしか抜け出すことはできないのに。
だから人は、
本来の自分の望みを望んでいいんだ。
いや、
望むべき。


「あなたを助けに来てくれる人なんかいないよ。」

と、私が言っても、

「そんなの知っている。」

と、言うだろう。

知っているその先を覗くまでもなく、彼女は、その現実を味わっている。

でもね。
その先はちゃんとあるんだよ。

願うのでも祈るでもなく
望むこと

わがままで
図々しくても
望むこと

外にいる神様に祈るのじゃなくて
自分の中にいる自分が望むこと



…難解なパズルほど
溶けた時は楽しいよね。

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