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イチゴジャム : 「舞うイチゴ」


「舞うイチゴ」。
大きな段ボール箱に次々投げ込まれ、ぶつかって跳ねるイチゴは、元気に跳ねる子供みたいだ。

果肉が柔らかいんだから、もっと丁寧に扱えばいいのに…と、思うけれど、丁寧にやっていたら終わらない。摘果も1日じゃ終わらないし、ジャムにするにも1週間はかかる。

この作業は、母と私の梅雨前の定例行事で、全てのイチゴがジャムに変わるまで続く。
初めは2、3株だったイチゴが径をどんどん伸ばし、気が付けば至る所イチゴだらけになっていた。
間引くのもなんだか可哀想で、生きられそうな場所に移植するから、呆れる程にイチゴは増えていった。

イチゴを洗い、ヘタや傷んだところを取り除き、大鍋に入れて煮る。
大きなヘラで掻き回していると、魔女になった気分になる。
母は「ふぁふぁふぁ」と、自分で何か言って受けて、バルタン星人みたいに笑っている。

人間でない生き物は、とても自由な気がした。

イチゴを煮詰めていると、イチゴが跳ねて私の腕に飛んだ。
「あちっ。」
と、私が言うと、母はまた
「ふぁふぁふぁ」
と、バルタン星人笑いをする。
次にイチゴが母の腕に飛ぶと、
「熱いでしょ‼︎ 気を付けてよ。」
と、怒り出す。
そこはバルタン星人じゃないのか?…と、突っ込みたくもあるが面倒だ。

「こんなに沢山取れるんだから、売ればいいのに。」
と、母に言ってみた。
「な〜に言ってるの〜。
それだって、色々めんどくさいのよ。
そんなのやってられな〜い。」
そうなんだ。面倒なら仕方ない。

イチゴを誰かに渡したいだけなのに、
それさえめんどくささがある。
兎角、
全てのルールを面倒くさくして、身動きできない様にしてるんじゃない?
…なんて思えちゃう。

甘くて、酸っぱいイチゴジャム。
鍋の中で沸々と音を立て、
パチンッと、また跳ねる。

カフェオレボールとスプーンを準備して、カフェオレボール一杯分の味見と言う、つまみ食いをした。
やっぱり、クラッカーがとても合う。

今年のジャムも上出来上出来。



「舞うイチゴ」

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