家庭に「毒」が生まれる瞬間

最近、「妖怪ウォッチ」という作品が子供を主体に流行ってますよね。どんな作品なのかなーと思ってアニメを途中まで見てみたのですが、これがすっごくおもしろい。楽しいという面白さというより興味深いという面白さでした。…というのも、今私が色々考えている諸問題に当てはまるからなんです。

今回取り上げるのは、「毒親と呼ばれる存在はいつから毒を持っているのか」という問題です。



※「毒親は犯罪者と一緒!異質で異常な存在!ネイティブポイズン!!」等、親や犯罪者などいわゆる「加害者」への怒りが全く手放せない状況にある方はご覧にならないことをおすすめします。

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以前の記事でもチラッと書いたのですが、私はこれまでずっと「毒親」という存在は異質で異常な悪人で、善良な人には理解できない理解する必要もない、自分は全く理解できない種類の、元々思考が異常な人間だと思っていました。

「毒親」は「独裁者」とか「サイコパス」とか「凶悪犯罪者」と同じ括りで、きっと思考回路が生まれつきおかしい人間で、元来「悪」なんだと考え、この世には生まれつき異常な悪人と、善良な人しかいない。善と悪、この2種類は元々別れていると考えていたのです。子供向けアニメでよくみる構図ですね。(サイコパスは脳の問題とも言われていますので、一概には言えませんが)

しかし、心理学や親子・家庭や犯罪の本を読んだり、自分や周囲の方の経験を元に考察を進めていくと、実は「毒」や「悪」の原因が全て「一個人」にあるわけではなく、環境次第で「毒」にも「薬」にも、「悪」にも「善」にも変化してしまうという仮説に至りました。



この仮説とある種同じ発想なのが、冒頭で取り上げた「妖怪ウォッチ」です。

妖怪ウォッチでは「人」に「妖怪」が取り憑いて「悪いこと」をさせている。――つまり、「人」と「行為」を切り離して考える。「行為」に至る原因は、「人」ではなく「妖怪」にある。妖怪ウォッチにおける「妖怪」=家庭や世間や社会などさまざまな「抑圧される環境」だと私は考えています。



そう考えるに至った、知り合いのある家族について、以下に記します。

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その家は4人家族で、私は奥さんと知り合いの関係です。家族構成としては、旦那さん(会社員)、奥さん(パート)、お姉ちゃん(中1)、弟(小1)、どちらかといえば裕福な家庭です。奥さんは明るく活発、料理も得意な方で、おしゃれ好きでセンスの良い女性です。

旦那さんは激務で残業過多。本来は優しい方ですが、激務のせいか最近は精神的余裕がなく、奥さんにあたることが多くなっているそうです。奥さんも旦那さんの理不尽な言動に嫌気がさし始めて、ストレスで愚痴が多くなっている。このストレスの元となる「ストレス因子」は、旦那さんではなく、旦那さんの「仕事の激務」が原因です。

「ストレス因子」ストレスの原因、つまり旦那さんの激務さえ解消できれば、元々は明るく楽しく過ごせる家族なのですが、日本ではそう簡単に仕事の問題は解決できません。(なぜ解決しづらいのか、これについては後述します)


解決できない問題はストレスになります。解決できないジレンマは旦那さんの優しさや余裕を奪ってしまいます。そして旦那さんはストレスを解消しようと身近な存在である奥さんについ当たってしまう。奥さんもそのストレスから、解決できないジレンマを抱え、どうしても愚痴っぽくなってしまう。

旦那さんも奥さんも、そのストレスを他で解消できたら良いのですが、現実は残酷です。

こんな時、奥さんの愚痴のはけ口、怒りの矛先になってしまうのが、やはり「子供」なんですよね。



怒りの矛先になったのは、これまたテンプレのような展開かもしれませんが、小学生の弟ではなく、中学1年生のお姉ちゃんの方です。

私が見る限り、お姉ちゃんはとても良い子です。勉強も運動も頑張るし、弟の面倒もよく見ています。

私が「お姉ちゃんに怒りの矛先が向けられている」と感じたのは、お姉ちゃんの誕生日会が開かれた時のことでした。


「最近、あの子いよいよ反抗期なのよ」と奥さんは言いました。「出かける時なんて服が決まらないとすぐかんしゃくを起こすし、ヒステリーに怒るのよ」と続けます。「口答えもすごいし、弟にも意地悪したりして、嫌な子なの!」と、奥さんは少しムッとしながら言います。


私にはそうは思えませんでした。

どう見てもお姉ちゃんは反抗しているようには見えないし、弟の面倒だって嫌がらずに見ています。私から見ると、お姉ちゃんは反抗しているのではなく、奥さんの理不尽な言動を咎めているのです。弟に意地悪しているのではなく、弟の理不尽な行動を「良くないよ」と咎めているだけです。

お姉ちゃんが日常でかんしゃくを起こしたりヒステリーになってしまうのは、結局は環境に起因している。理不尽なことが続くと、子供はストレスを感じ、問題行動に走ってしまうのです。子供の問題行動には、必ず理由があります。これは、児童心理学でも取り上げられている問題です。「反抗期」「思春期」だけが原因ではないということです。

母親にそんな風に言われてもお姉ちゃんは健気です。「ママ準備ありがとう」と手紙を書いて渡していました。しかし奥さんは、「きっと裏があるのよ」と色眼鏡で見て、お姉ちゃんの純粋な気持ちを突っぱねてしまいました。

悲しい。悲しすぎる。つらすぎる。お姉ちゃんが感謝の気持ちを素直に伝えているのに、奥さんは素直に受容れられないのです。実はお姉ちゃんではなく、奥さんの方が反抗的で意地悪なんです。でも当の本人は全く気付いていない。無意識状態で、自覚できなくなってしまっているのです。


手紙にはさらに、「ママは最近イライラしてるけど、私はママが大好きです」と書いてありました。奥さんは、「なにこれ?嫌がらせ?」と一笑しました。


私はこの瞬間、ピン!ときました。「まさに今、ここに毒が生まれた!」と。


能天気なことを言ってないでさっさと母親を咎めろと思うかもしれませんが、こういう問題は第三者が口を挟むと状況を悪化させることがあるんですよね。奥さんが自覚をしていないですし、私にアドバイスを求めていない状況なので口下手で説明下手な私は、泣く泣くこの問題を持ち帰ってきてしまいました。


奥さんは本来、明るくて優しい子供思いな人です。ある意味、子供思い過ぎて無理をしてしまう。その無理をした頑張りがストレスになり、悪循環で子供に向かってしまっているように思います。

私の親のようにあからさまな「毒親」より、こういう「微毒」状態の家庭は、本人も周りも気付きにくく、無自覚なまま悪循環を繰り返してしまうのです。

この件もそうなのですが、自分がこれまで色々な方から話を聞いてみる限り、「どちらかといえば裕福で一見すると問題は無さそうな家庭」の方が、無自覚な毒が悪循環しやすいように感じています。「経済的な余裕」が問題の本質をくもらせ、世間も個人も全体が「経済的な余裕」=幸せな家庭、普通の家庭、と思い込んでしまうのかもしれません。



奥さんは、虐待で命を落とす子供のニュースを見ると「ひどい、許せない」とよく口にするので、それが私には印象的でした。「自分の子供によくもこんなひどいことができるわね!」と、よく怒っていました。

そんな風に子供をとても大事に思っているのに、自分がしている行動・言動が「ひどいこと」だとは全く結びついてないんですよね。自覚できないんです。



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では、何故自覚できないのか。

ぱっと見は奥さんだけが悪いように感じるかもしれません。しかし、奥さんは旦那さんから日常的に理不尽なストレスを受けている。その旦那さんは日常的に仕事で理不尽なストレスを受けています。

「誰が悪い」ではなく「抑圧され続ける環境」が原因だと私は感じています。


旦那さんが仕事の激務で理不尽な目に合い、そのストレスを理不尽にも奥さんに向けてしまう。そうすると、奥さんはその理不尽さを子供に向けてしまう。そうすると子供もストレスを抱え、問題行動に出てしまうというわけです。(ちなみ当人はほぼ無意識です。この恐ろしさについては後日別記します)

まとめると:仕事の激務→旦那さんのストレス→奥さんのストレス→子供



このようなことを言うと、「忙しいくらいでストレスを感じる方が悪い」とか「奥さんがもう少し我慢すればいい」、「環境のせいにするな!」といった、何でも自己責任の、「なすりつけ屋さん」が出て来るんですよね。

「つらいのはみな同じ」という同一視や、「我慢は美徳」みたいな根性論は、私に言わせると、悪しき日本の風習で、間違った価値観としか言えません。

「我慢して理不尽なことに耐えれば、人間の心は強くなる」と思っている方は多いと思うのですが、実際は逆です。

体に傷をつけると人は痛みを感じます。では、体に傷をつければつけるほど、人は強くなるでしょうか?ならないですよね。傷が増えるほど、体は衰弱し、最終的に死んでしまいます。「傷をつける」と「鍛える」は全く別なんです。

体と同様に、心だって傷をつければ死んでしまいます。「抑圧」することは「鍛える」ことではありません。「合理的な我慢」なら「鍛える」ことにもなりますが、「理不尽な我慢」は「心に傷をつける」ということだと思います。



非合理的な我慢や理不尽な要求は、人の心を抑圧します。心が抑圧されると、人の心は鈍くなります。鈍くなると何も考えたくなくなり「思考停止」したり「感情」を抑え込み、常に心は「憤り」や「憎しみ」や「怒り」でいっぱいになってしまいます。そうすると、「正しいこと」や「善いこと」がわからなくなってしまい、上記のような「毒」が生まれてしまったと私は考えます。

旦那さんは「仕事の状況が改善できないストレス」を奥さんへぶつけ、奥さんは「旦那さんの状況が改善できないストレス」を子供にぶつけているのです。問題の本質から目を背けて、ストレスを弱者に八つ当たりしてしまう悪循環が繰り返されているのです。


つまり「理不尽でも我慢しろ」、「みんなつらいから我慢しろ」と言う人は、自分を抑圧する原因から目を背けています。だいたいが無意識に。なぜ無意識かは、原因が解決できないと思い込んでいるからです。そんな怒りや憎しみを別の方向で発散しようとしているのです。私の親や、過去の私はそうでした。常に怒りや憎しみに支配されていて、つまらないことで怒って八つ当たりしていました。


しかし、それでは自分を抑圧し怒りや憎しみを生み出している「問題の本質」に向き合えず、負の連鎖や悪循環からいつまでも抜け出せないんですよね。



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抑圧された怒りを解放して、自分らしく生きる今になってこそ思うのですが、私は本来楽観的な人間でした。楽しいことが好きで楽しい人も好き。自分が「楽しい」と感じることが生きる喜びに繋がるのに、それがわからなかった。「つらい」と感じる真逆のことをして、ずっと生きづらさを感じていました。

それは成育環境や社会環境の影響による抑圧で、「生きることはつらいこと」とか、「世の中には自分よりもっとつらい人がいるから我慢すべき」という、わけのわからない同一視が世間に蔓延していますよね。抑圧、理不尽な我慢が当然になってしまっている。私もずっとそんな考えに囚われていました。

親には「産んでもらった感謝」会社には「働かせてもらってる感謝」をする。理不尽な我慢は当然、それが日本の美徳、常識だと思い込んでいたからです。でも本来、感謝は相手から求めるものじゃないし、理不尽な我慢だって誰かに要求されるものではないです。


「人間が生きる」ことって、本来自由で何物にもとらわれないはずなんです。誰かを傷つけたり、倫理に反することさえしなければ、何を楽しもうが自由。私は右でも左でもないですし、ただ「人間らしく生きたい」と思っているだけですが、どうも日本の現状は「自由」を嫌っているように思えてしまいます。

日本に所属して生きる上では課せられた義務も果たさなければいけませんが、「勤労の義務」も、本来の解釈では強制ではなく、健康で働ける状態にある人は働こう、というニュアンスです。(一応言っておきますが、私は働くことは好きですし、無職やニートの存在を手放しで正当化するつもりはありません)


今の日本は、「無理してでも働く」状態が普通になってしまっていますよね。体調不良でも災害時でも、絶対に何が何でも出社しないといけないって、よく考えたらおかしな風潮です。

「働かせて貰ってる立場なのだから、サービスでも残業しなければいけない」「お客様はお金を払ってくれる神様だから手厚くもてなさければならない」、この考えが、抑圧する縦社会を生んでいるように感じます。残業させるなとか無償のサービスを止めろと言うのではなく、「過剰な残業」「過剰サービス」という「過剰すぎるおもてなし心」を強制するのをやめて欲しいです。

「おもてなし」と言えば見栄えはいいですが、実際「奴隷」じゃないですか?だから「社畜」という言葉が自虐的に流行しているんだと思います。はっきり言って異常です。

この異常な例が、コンビニです。コンビニって、時給が異様に低いですよね。簡単な仕事なら時給が低くても納得しますが、コンビニの仕事はきついです。私は働いたことはありませんが、話を聞いたり、実際に見ているだけでも、「えっ、そんなことまでするの?この低い時給で?」と疑問に思います。

さらにコンビニは仕事内容だけでなく、色んな客層の人が来ます。つまり、客の質が問えないのです。先日、某所で土下座騒動がありましたが、ああいったDQNと言われる層も来ますし、強盗などの危険性も高く、とても最低賃金に近い時給に見合う仕事とは、私には思えないのです。

介護士や保育士もそうですよね。とても大変でキツイ仕事なのに、賃金は異様に低い。人の命を預かる、看護師とさして変わらない重要な仕事だと私個人は思っていますが、介護士や保育士だけ賃金が異様に低い。介護士は特に学卒の資格ではありませんから、必然的に門戸が広くなり、質が下がって、虐待問題に発展したりしてしまうんですよね。これも悪循環の1つだと感じています。

無職やニートが増えているのも、まともな仕事がないことに原因があります。日本は年功序列、学歴、新卒至上主義で、これを企業側が改めようとしない。仕事にあった賃金や、待遇の良い環境の仕事があれば、たいていの人は働こうと思います。でも現状はそうじゃない。地方の求人なんかを見るとひどいものですよ。実働8時間で残業有(もちろんサービス残業)、週休1日、ボーナスはもちろん無し、こんな待遇で月給13万円という求人が通ること自体、おかしなことです。このような求人が溢れてる現状では働きたくても働けません。

これは、決して甘えではないですし、解決できない問題でもありません。個人を抑圧して「解決できない問題」に見せかけているだけです。社会が、企業がこの状況を改めない限り、「社畜」を生み続け、悪循環が続きます。

まとめると:過剰なサービス→無償の労働→労働の質の低下、無職の発生



かと言えば、「それはそういう社会だから仕方がない」と間違った優越感から問題に向き合わない層もいます。この層が問題の解決を難しくさせています。

そういう層がやっかいにも高学歴だったり、親が権力者や裕福だったりして、縦社会の恩恵を受けていたりするんですよね。私もこの恩恵を受けて、一時的とはいえ間違った優越感を持っていた人間なのでわかってしまうんですが、「自分には関係ない」と高みの見物をしてしまっているのです。

間違った優越感があると、人を見下して、自身の心の安定を図ろうとします。「自分は恵まれてて良かった」と無意識に人と比較したり、不遇な人を見ては「生まれた環境は自分の前世を呪え」と心無いことを思ったり、自分基準で自己中心的な人格になってしまいます。こういうものは言葉にせずとも、にじみ出てしまうものなので、「理由はよくわからないけど嫌だな」と感じる人は、だいたい優越感に浸っている残念な人だったりします。

ぶっちゃけ、政治家や官僚にはこういう方が多いと思っています。もちろん、中にはまともな方もいらっしゃるでしょうが、世の中が良くなるどころかどんどん弱者に厳しくなるのは、こういった層がトップに居続けているからでは?と私は感じています。政治家は世襲制が多く、出馬にも大金がかかるため、元々弱者が入り込みにくい・改善しにくい環境になってしまっているんです。

ゆえに、問題は解決するどころか、悪化します。弱者や若者を抑圧し、政治への興味を削いでいます。「投票したところでどうにもならない」と思わせる。(前述のように、まともな考えを持つ人が出馬しづらい状況とも言えますが)

「一人一人が問題の本質を見極め、集団で立ち上がれば解決できる問題」を、「一人が足掻いたところで無駄だ」と、あらゆる抑圧環境を継続させることで思考停止させ、問題を考えさせないようにしていると私は思っています。


このようなことを言えば「妄想乙www」と煽ってくる不憫な方もいますが、恐らく上記に書いた内容を理解できない、歩み寄れない方だと思いますので、私はそういう方は現状、自分のためにならないのでスルーします。


結局は今の日本に「自分も人も尊重する」という対等関係が存在しないから、どちらか一方が抑圧され、社会でストレスを生んで、それが子供や女性や弱者にぶつけられているんですよね。ストレスをぶつけられた弱者は心を蝕まれ、適切な自尊心や自己肯定感が育たず、自己肯定感や自信のなさをつけこまれ、「社畜」や「毒親」が生まれてしまう、と推測しています。

社会規模の悪循環だと私は考えています。


なので、「毒」や「悪」といった原因は、本人ではなく環境に起因していると考えたのです。


「罪を憎んで人を憎まず」ということわざがありますよね。私はあれがずっと理解できませんでしたし、「加害者の人権」という存在も、意味不明でした。(特に日本は、被害者の人権が軽視されすぎているからかもしれませんが)

「犯罪者」も「毒親」も、環境次第では「善人」になる可能性もあったのに、成育環境と社会環境の悪影響で心のゆがみを増幅させ、「犯罪者」「毒親」に結果としてなってしまった。もちろん、いくら心がゆがんだとしても、本人がゆがみを矯正する努力をしなかったとも考えられます。環境があまりに劣悪で「矯正のための努力という存在を知り得なかった」という可能性もあります。



今回の奥さんの件や、過去の私を考えると、こういった悪循環に取り込まる人は「自分は自分、人は人」と思えていません。自分も人も尊重できない状況で「同一視」を無意識に、当たり前のようにナチュラルにしちゃってるんです。だからとても愚痴が多かったり、人に対してつい文句を言ったりしてしまう。

「自分を大事にする」ということができるようになれば、この負の連鎖はある程度おさえられると思うんですが、「心」という見えない問題だけに、自覚がしづらいのがやっかいなんですよね。

ゆくゆくは「同一視」や「完璧主義」をやめるワークブックなんかも作りたいなと思ってはいるのですが、まあいつになるやら…ということで、長くなったのでこのあたりで終わりにしたいと思います。








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