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レゾナンス・エンジン

モーツァルトが沈黙して250年、共鳴機関は後継を探し続けている。

大気を満たすエーテルを媒介に、人と人とを接続し生体CPUとして扱う技術。音楽により発生する人々の情動を原動力とする演算装置。会場に集う人々の興奮が一つになり夢見るディープラーニング。
多元宇宙の構造解明には天才一人の知性では到底及ばない。コンサートホールを埋め尽くす聴衆、その脳神経の交響的発火が必要不可欠だ。

路上でのスカウト、インディーズバンドの青田買い、SoundCloudでの直接交渉。機関のエージェントなんて肩書の割に、やることはどっかのレーベルと大差ない。今日もこうして音源を漁っては上への報告に頭を悩ませている。求めているのは圧倒的な才能。一等眩く輝く綺羅星。
「見つかってくれ綺羅星。科学の発展のためによ~」
軽口を叩きながらのネットサーフィン。YouTubeのオススメが正解をひいた試しなんてなかった。今日までは。【続く】

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