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アパレル(SPA)業界の決算資料から企業のビジネスモデルを読み解く #20代マーケピザ 養成所オンライン

9月の課題はこちら。
「決算書から企業のビジネスモデルを読み解く」

決算書を読むことは業務上たまにありますが、そんなにがっつり読み込んだ事は無い…。簿記の勉強していた知識も今やほぼ皆無…。
持っている知識をフル動員して、読み解いていきます!

0.アパレル業界を選んだ理由

理由は大きく2つあります。

①身近なのに意外と知らない
いつも身につける衣服を扱っているアパレル業界について、「どのブランドがどういう感じなのか?どういう価格帯なのか?」は分かっていますが、「どういう戦略になっているのか?」という観点で見たことがありませんでした。
なので、決算資料を通じてアパレル業界を見てみたいと思いました。

②携わったことがある業界
新卒で初めて入った会社で、アパレルのECサイト運用に携わっていました。
その際にとても魅力的な業界に感じたことと、クライアントの社員が本当に服が好きな思いが伝わってきて、一緒に働いていてとても楽しかったので、そんな業界はどういう業界なのか、今一度読み解いてみたいと感じたからです。

1.企業分析(ファーストリテイリング)

言わずもがな、業界国内No.1のファーストリテイリングから見ていきます。

ファーストリテイリングは現在、ユニクロ・GUをはじめとする7ブランドを運営しています。

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最新の通期決算資料が2018年8月期なので、その資料を基に見ていきます。
セグメント別の売上実績は下記の通りです。

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この期は、今までTOPの売上収益を誇ってきた国内ユニクロ事業が、海外ユニクロ事業に抜かされるという、象徴的な期でした。

セグメント毎に見ていくと、
・国内ユニクロ事業は引き続き好調傾向である一方で、成長鈍化の一端が見受けられます。
・海外ユニクロ事業は好調で、ここ数年は前年比150%前後の売り上げ増加で推移しています。
・ジーユー事業は需要の取り込みが上手くいかなかったことと、下期に人気商品の欠品が相次いだことで、下期に大幅な減益となり、通期も前年比13.1%減という結果になりました。
・グローバルブランド事業は、TheoryとPLSTは増益となっているものの、他ブランドで赤字が継続している影響で、大幅な赤字を計上しています。

今後の展望について、
・成長のエンジンとなるのは、海外ユニクロ事業になっていく予想です。

海外UQ

・国内ユニクロ事業も頭打ちであるものの、Eコマースや物流(有明プロジェクト)への投資と拡大を継続していくことで、オペレーションの工数削減に繋げていくこととしています。

国内UQ

・ジーユー事業は、商品構成の見直しとオペレーション改善・デジタル化の推進によって、大幅増収に繋げる構想です。

2.企業分析(しまむら)

東京都心部から外れると、幹線道路沿いに見えてくる「ファッションセンター しまむら」の看板。ピンク色の外観が印象的です。

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現在、しまむらが運営しているブランドは下記の7つ(国内:5つ、海外2つ)となっています。

名称未設定

※ブランドの内訳は下記の通りです。

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最新の通期決算資料が2019年2月期なので、その資料を基に見ていきます。
セグメント別の売上実績は下記の通りです。

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・しまむら事業について、上期に大型セールを行って低価格商品を前面に打ち出したものの、客数は伸びませんでした。また、客単価が低下したことにより、売上高は減少しました。ただ、下期から商品と売場の改善(改装など)を行った結果、売上高は前年比4.8%減となりました。
・しまむらの他に、アベイルなど国内ブランドだけで売り上げの約99%を占めており、海外ブランド(台湾と上海)は約1%となっています。

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その結果、国内における業績は当期純利益が前年比約45%減という結果になっています。
海外事業を含めた連結業績は、売上高が前年比3.4%/当期純利益は前年比46.2%の減少となっております。

2020年2月期においては、利益の創出のために顧客に対して、売り場の改善や店舗のスクラップアンドビルドを進めています。

これからのしまむらにおいて、大切なことは「店舗で買う体験」です。
ECが未だに導入されていない(2020年導入予定)しまむらにとって、まず顧客との接点は店舗に来店したお客様なので、その店舗における購買体験を変えようとしています。

3.企業分析(ワールド)

最後に、ワールドです。
この会社は上記2つとはちょっと異なった会社形態なので、確認してみます。

ワールドが運営するアパレルブランド数は非常に多く、アクセサリーブランドも含めると、ブランド数は63に及びます。

また、アパレルブランド事業だけではなく、デジタル事業とプラットフォーム事業にも積極的に進出していることも特色です。

これは、M&Aを積極的に進めていったことにより、保有するブランド数や事業セグメントが拡大していった事によるものと見受けられます。

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2019年3月期の決算が最新の通期決算となるので、そちらの資料を確認していきます。

アパレルブランド事業は売上が減少傾向にありますが、その落ち込みをデジタル事業とプラットフォーム事業の伸張によってカバーしている状況です。

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ただ、指標の数字は比較的好調で進んでいるようです。
(コア営業利益=全事業の利益なので、本業のアパレルが若干不調なことは反映されていません…)

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4.企業分析を通して

確認していったいずれの企業も、課題は共通しているように感じました。

●人口減や高年齢化によって、国内市場が縮小傾向にある。
●また、国内アパレルブランドは飽和状態になっている。
●企業を成長させるには、国内アパレル事業だけではなく、海外や他事業にもリソースを割き、伸張させていくことが大切。
●国内での伸張を目指す場合は、若年層〜壮年層だけではなく、今後増加が見込まれる高齢者層に対しても、しっかりとフォーカスさせる必要がある。

日本のものづくりは「高品質」のイメージを持たれることが多いことから、海外市場において品質の訴求を押し出していきつつ、ブランディング・ブランド浸透をしっかりと行っていくことによって、日本のアパレル企業はより成長するように思えます。
これは、ファーストリテイリングのユニクロが好例です。

これらの現状から、私がアパレル市場に参入するとなった場合は、下記のように戦略を練りたいと思います。

●ブランドを2つ立ち上げる。
 1.ベーシックでシンプルな、オールマイティなブランド
  →ECを中心に、都心部にショールーム的な店舗を設置。
  →店舗で実際に見てみて、ECで買うようなサイクルを形成する。
 2.高齢者向けのシックで着回しのできるブランド
  →郊外を中心に、小規模な店舗を設置。
  →カタログなどでセミオーダーなどにも対応。
●1のブランドは、積極的に広告を打たず、ファッション誌やデジタル広告などでブランドの確立を目指す。また、5年以内に海外(アジア中心)へ進出し、成長機会を獲得していく。
●2のブランドは、TV・ラジオを中心とするマスとのタイアップやスポットでの広告によって認知率の向上を目指しつつ、「身近なブランド」を目指していく。
●3年以内に黒字化する。そして、10年以内に国内販売網を確立させ、ECプラットフォームの“型”を他社に売っていく(デジタル部門の事業化)

(まだ会社も経営したことがないため、こうなるといいな、という妄想でしかないです…)

5.最後に

アパレルを決算資料から読み解くと、国内市場の頭打ち傾向から、各社三者三様の企業戦略を練っていることがわかりました。

これからも様々な企業の決算資料を読み込んでいき、参考図書を書かれているシバタさんのように決算資料を読んで企業の傾向が把握できるようになりたいと思います。

参考図書は以下です!


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