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ちいさな、ちいさな、みじかいお話。

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2017年8月の記事一覧

『短編』あなたが好きなあの人より、あなたが好き 第2回 /全7回

『短編』あなたが好きなあの人より、あなたが好き 第2回 /全7回

 深夜十二時。終電間際だったその時間。私たちは、渋谷で開かれていたサークルの飲み会に参加していた。人工知能研究サークルと銘打ったそのサークルは、割と真面目に人工知能の研究をしていると話題だったので、私は最初から興味を持っていた。
 元々理系だったし、簡単なプログラミング言語くらいは書けた。もちろん人工知能というのは雲の上の存在だったけど、どうせ暇な時間だし、少しでも身になることをしていたいと思って

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『短編』あなたが好きなあの人より、あなたが好き 第1回 /全7回

『短編』あなたが好きなあの人より、あなたが好き 第1回 /全7回

「いやー!ほんとっ!今日は飲み過ぎたわー!」

飲み過ぎたならさっさと帰ればいいのに、まだ帰らずにいるってことはそれなりの余裕があるか、もしくは誰かを当てにしているか……。あ、だめ。私はすぐそうやって冷静に物事を分析しようとする癖があって、ついこの間それを改めようと思ったばかりだった。

「奈々ちゃんは、今日楽しかった?」

ほとんど喋ったこともないのに、突然下の名前で呼ばれてなんだか少し嫌悪感。

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『短編小説』形なんて最初からないもの

 
「素晴らしい三角形を見ました」
はずる君は突然そう言い出しては、手でさんかくマークを作って僕に見せてきたのであった。
「素晴らしい三角形?それはどんなものです?」
「っとにかく、とにかく素晴らしいのです。……そうですね、言ってみれば富士山のようなものです」
「富士山?」
「富士山も、横から見れば素晴らしい三角形ですよね?」
そう言って少し興奮気味だ。
 ゆずる君はもうすぐ八歳になる。八歳だって

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『短編』再会 第3回 /全4回

『短編』再会 第3回 /全4回

 時計は十一時を指していた。さっきから頻繁にドリンクバーに立つ男性が気になる。何度も注いでは、またすぐに注ぎに来ていた。席に座ってひたすらノートパソコンに向かっているが、何をやっているのかは分からない。二十代半ばだろうか。少なくとも僕よりは若く見えた。あんまり変わらないけど。

「ちょっと、さっきからぼーっとしてるよ。眠いの?」

「……あ、いや、ごめん」

さっきから謝ってばかりだ。今僕は、なん

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『短編』再会 第2回 /全4回

『短編』再会 第2回 /全4回

 僕たちが付き合い始めたのは確か、六年前の夏だった。いやに暑い日で、しかも大勢がごった返す祭りになんて来ていたんだっけ。同じサークル内の仲の良い四人で行ったんだ。その中に僕と景が含まれている。僕らを除く二人は付き合い始めたばかりのカップルで、……まあその場に僕たちが参加したのもおかしな話だけど、当時はあまり何も思わなかった。普通に歩くのもままならない人ごみの中で、僕たちは何度もはぐれた。はぐれては

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『短編』再会 第1回 /全4回

『短編』再会 第1回 /全4回

「それで、説得しに来たんじゃないの」

景(けい)はそう言って、僕に厳しい目付きを向ける。……分かってるさ。こんな時間に呼び出したのは悪いと思っているけど、こんな時間でもなければ君を捕まえられないことを僕は知っていた。

「……そうだけど」

「はっきりしないのね」

「いや、どうやって言ったらいいのか……」

彼女は大きな溜息を吐いた。僕は何をしに来たんだっけ?自分から起こした行動のくせに、その

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『短編』スタディルーム 最終回 /全4回

『短編』スタディルーム 最終回 /全4回

「あんたはさ、なんか向いてなさそうだよね。結婚とか、家族とか」

ずっと昔、姉に言われた言葉だ。確か二十歳を過ぎてすぐの頃。俺自身そんなことを現実的に考えたことなんてなかったから「ああ、そうかもね」なんて適当に言ったが、自分は向いているというその姉の物言いに少しムッとしたことも覚えている。

「じゃあ何、姉貴は向いてるって言いたいの?」

「まあね、私はほら。証明しているから」

と言って大きくな

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『短編』スタディルーム 第3回 /全4回

『短編』スタディルーム 第3回 /全4回

 ああ、ダメだ。そんなことを考えに来たんじゃない。今は仕事に集中するためにわざわざ着替えてまでここに来ているのだから。

「ドリンクバーとシーザーサラダでよろしいですか?」

店員に確認をされ、俺は「はい。お願いします」と答える。

 深夜で空席もいくつかあったが、それなりに人は入っていた。平日の深夜時間にファミレスにいるなんて、普段どんな生活スタイルの人なのか気になってしまうが、それは自分も同じ

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『短編』スタディルーム 第2回 /全4回

『短編』スタディルーム 第2回 /全4回

 夜泣きが始まる頃も、俺は家で仕事をしていた。妻の衣江(きぬえ)は寝ていたが、夜泣きが始まるとすぐに目を覚ましあやしている。

「ごめんね、集中出来ないでしょ?」

「いや、大丈夫だよ。それに、これはあって然るべきことだよ」

「夜泣きが?」

「そう」

「うん、そうね」

 こんな会話はほとんど毎日のように行われていた。俺が集中出来なかったのは紛れもない事実だったし、そりゃ夜泣きはない方がよか

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