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「直感」文学 *傷心と言葉*

 「そんなに落ち込むことなんてないじゃないか?たかが一人の女に振られたくらいで。女はいくらだっているだろう?なあ?そう思わないか?そのうちのたった一人との恋仲が終わったくらいでなんになるって言うんだよ。そんなの考えるだけ無駄。落ち込むなんて正真正銘の馬鹿だよ。それなら早く次の相手を探すために街へ出ろよ。それでナンパだってなんだって、とにかく新しい繋がりを作ればいいんだよ。ほら、よく言うだろ?女を忘れるには女だって。だから新しい女が見つかれば、別にお前の今のその気持ちだってどうでもよくなるだろうし、なんて自分は馬鹿なことで悩んでたんだろう、なんて思うはずだよ。なあ、ほら、とにかくさ。今は街に行こう。そして新しい出会いを見つけようじゃないか」

 居酒屋の隣の人の声が聞こえた。

 彼は一人で、それらの言葉を口にしながらたまに酒を飲む。飲み終えたかと思うと、また誰に言っているのか分からないその言葉を発した。

 「きっと、自分に言っているのよ」

 隣に座っていた僕の彼女は耳元でそう囁く。

 何がどうであれ、今僕が言う言葉の数々ではないことくらいは、僕にだって分かった。

 ただ、それだけだ。


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