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『短編』再会はどこか不安定 第3回 /全5回

〝よう!啓介!久し振り!元気か?〟

突然将から連絡が来たのは一ヵ月前のことだ。大学に行っていた時はそれなりに仲が良かったが、そういえば卒業してからは一度も会っていなかったことを思い出した。

 卒業してすぐの頃は、それこそ大学の愚痴なんかをお互いメールで言い合ったりし、時間が合えば飲みに行こうと行ってはいたものの、互いの時間はすれ違ったまま、いつの間にかその話自体がなくなってしまった。

 そんな中での久し振りの連絡に僕は少しテンションが上がったし、そのメールを見て話したいと思うことが山のように溢れてきた。自分では平凡な人生を送ってると思っていたが、話すネタくらいはいくらでも見つかった。あれを話そうか、これを話そうかと思いを巡らせ、いざ合流してみれば知らない女子二人組と相まって、結局最初に考えていたことのほとんどを話していなかった。さて、ファミレスに入った。

やっと僕は僕たちの話を出来るのだと思っていたが、席に着いてみればさっきの女の子の話ばかりを将はしていた。たまたま隣の席に座った女の子。彼女たちがどういった人なのかも知らないってのに、よくこんなにも話していられるものだと、僕は少し感心さえしてしまう。

……違う。ただ僕は忘れていただけだ。大学時代だってそうだったはずだ。彼はいつも女の子の話ばかりをして、何かを発散していたように見えた。それなのに決まった彼女はいない。「作らないのか?」と聞けば「出来ないんだよ」と答えた。実際どうなのか、深堀りはしていない。深く話を聞こうとする前にいつも将は自分から話していたように見えたから。

大学二年の時、彼には美恵(みえ)という彼女がいた。同じ大学に通う同い年の女の子だった。僕たちとは学部も違ったし、僕は数える程度しかその子と会ったことはない。いつだって賑やかな将とは対照的に、なんだかのんびりとした空気を持った女の子だという印象がある。不釣り合いに見えたし、相反する空気はむしろ合っているんじゃないかとも思ったりした。

僕が彼の口から直接「彼女」という表現を聞いたのは、後にも先にもその美恵が最後だった。別れたのかどうかも知らない。別れたとしたら、いつ別れたのかも分からない。大学生の時に、段々と将の口から美恵という言葉がなくなっていった時、ああ別れたのか、と勝手に解釈をした。普段べらべらと喋るくせにそういうこととなると全く言わないというのもどうかと思う。

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