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「直感」文学 *”ミナミトウヤ”*

 ”ミナミトウヤ”は、僕が中学生だった時の同級生だ。

 僕はたまに”ミナミトウヤ”という人間が、みんなの目にはどのように映っていたのだろうかと気になることがある。

 彼は、僕の同級生であると同時に、僕の”隠れた憧れ”でもあったのだった。

 当時、僕と”ミナミトウヤ”は仲が良く、暇な時間さえあれば、そのほとんどを共有していた。というか、中学生の時なんて、ほとんどが暇な時間であり、僕はいつだって時間を持て余していたといえる。だからそのほとんどの時間を”ミナミトウヤ”と過ごしていたことになるのだ。

 彼の何が僕を”憧れ”に思わせるのか、それを僕はほんの少しだけだけど考えてみたことがあった。

 彼は中学生にしては大人びていたし、決まった彼女もいた。休みの日はオシャレな洋服を着て、友達も多かったのではないかと思う。(少なくとも学校にいる時はそのように見えた。)
 
 だけど彼は僕とその”暇を持て余したほとんどの時間”を過ごしていたのだ。

 そのように彼は確かに僕から憧れるような要素をいくつも持っていたように思うけれど、そんな安易な理由で僕は憧れを抱くだろうかと、疑心暗鬼だった。

 僕は”ミナミトウヤ”に惹かれる理由はなんなのだろうか。

 それは僕が40歳になった今でも分からないままだったのだ。

 「おーい、ミナミ!」

 今日は、中学時代の同窓会に呼ばれていた。僕は友人に指定されていた場所で待っていると友人は僕の名前を呼んだ。

 名前を呼ばれると、ゆっくりと自分の中から”ミナミトウヤ”が目を覚ます感覚を覚えた。

 「おー!ミナミ!久しぶりだな!」

 友人にそう言われ、”ミナミトウヤ”は一度笑顔を返し、ゆっくりと話し始めたのだった。

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