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「一瞬」書評 永い言い訳

 元々は、西川美和さんのファンである。だからこそ読んだし、それ以外の理由はない。しかも映画方面の話であって、彼女の作品を本として読んだことは正直一度もなかった。

 西川美和さんの何が好きなのか?と聞かれても、僕は容易に答えられそうにない、しいて言えば、バランス感覚なんじゃないかと思っている。マイノリティとマジョリティのあいだっこら辺をなんだかウヨウヨとしている感じ。そんな定まらない定位置から創られる、曖昧な空気感。

 僕は何よりも、そんな彼女の作風が好きなのである。

 前置きがしばし長くなったような気もするがしかし、これで全て語ってしまったような気もする。

 だけどこれでは物足りないからあらすじを…。

 「愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」
 長年連れ添った妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。
 悲しさを“演じる”ことしかできなかった津村は、同じ事故で母親を失った一家と出会い、はじめて夏子と向き合い始めるが…。
 突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。人間の関係の幸福と不確かさを描いた感動の物語。
 ※amazonより転載

 物語として、突出したものはなかった。元々映画ファンの僕としては、これを映像で見たいと思ってしまうのだけど、それはイケないことかもしれない。

 文章として存在する以上、文章と向き合って楽しまなくてはイケない。だから文章として楽しもうとした時に残るのは、ただ一つ、「情景」であった。

 活字を追っかけているのに、「情景」が残ってしまうなんて皮肉な話だが、やはり僕は著者のそんな雰囲気に惹かれてしまうのだと、改め実感させられる。

 そして個人的には、主人公の幸夫が何度も僕と重なったのである。

 ちなみに2016年10月辺りに映画化されるそうである。楽しみだ。


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