"新FCハリウッド"、ドルトムントの行方

 “ドルトムントは新たなFCハリウッドだ”―――ブンデスリーガの放送権を持つスカイスポーツのトーク番組で、ドイツの高級紙『Welt』の記者を務めるユリエン・ヴォルフはそう指摘しました。”FCハリウッド”という言葉はドイツ最大のスター軍団であるバイエルンの代名詞として使われてきたものですが、もともとは1990年代にスター選手たちがピッチ上だけでなくゴシップでも話題を振りまくことの多かったチームをメディアが揶揄したものです。
 ヴォルフ記者がドルトムントを”新たなFCハリウッド”と呼んだのは、かつてのバイエルンがピッチ外の言動で騒ぎを起こしたように、このところのドルトムントもピッチ外の騒動が話題になることが多かったから。同番組内では、コメンテーターを務める元ドイツ代表MFディトマー・ハマンも「ドルトムントの問題はすべて自家製だ」と賛同しました。
 この冬に移籍騒動を起こしたオバメヤンは規律違反、昨夏のデンベレによるストライキ、昨季末のトゥヘル前監督とヴァツケCEOの対立。タイトルレースの行方が早々に決する近年の”退屈な”ブンデスリーガにおいて、ドルトムントはネタ探しに奔走するメディアの餌食になってきました。焚き付けたのがメディアとはいえ、結局はクラブがそうした事態をコントロールしきれなかったことも否定できません。

「自分たちのチーム対してブーイングを浴びせるためにスタジアムへ来たメインスタンド、バックスタンドの人たちは家にいた方がよかった。あれはサポートではなかった。彼らはサッカーをよく分かっていない。(ブーイングは)状況を改善させないんだ」

 これは、2-2の引き分けに終わったホームでのフライブルク戦後、GKビュルキが放送局スカイのインタビューで、チームにブーイングを浴びせたメイン・バックスタンドの観客を批判したものです。この発言がさらなる騒動を生むことになりました。
 前回のホームゲーム同様、ドルトムントは引いた相手の攻略に苦しみ、後半戦開幕から3試合連続のドローに。なかなか相手を崩せず、攻撃を組み立てなおすためのバックパスを繰り返すチームにしびれを切らして前半からブーイングを浴びせていた一部のドルトムントファンたちに対して、ビュルキが苦言を呈した形です。苦しいチーム状態に自ら煙を立ててしまった形ですが、ビュルキの気持ちも分からなくはありません。
 下位チーム相手とは言え、引いた相手を崩すのは簡単ではありません。波紋を呼ぶことを覚悟しつつ、少しでも状況を変えようと思っての発言だったのかもしれません。試合直後で感情的になっていたこともあり、ビュルキはその後自身のSNSで改めてファンに対してブーイングではなくサポートを求めました。
 この火種に油を注いだのが、ツォルクSD(スポーツディレクター・競技面の最高責任者)です。ビュルキの発言についてメディアから問われた同氏は、「その発言は場違いであり、内容的にも間違っている。選手たちにはもう一度試合を見直すことを勧めたい。そうすれば彼らも自分たちにブーイングを浴びせるだろう」と選手を批判し、ファンを擁護しました。本来はチームと一緒に戦うべき競技面の最高責任者が、選手の側ではなくファンの側に立って選手たちを批判したのです。“ドルトムントは新たなFCハリウッドだ”というヴォルフ記者の指摘は、この騒動を受けてのものでした。

 しかし、なぜドルトムントだけがこのような事態に巻き込まれているのでしょう?

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山口裕平

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