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インターネットに興味はなかった。

ガラケーを使っていた。
SNSどころか、LINEもよく知らない。
Twitterは、聞いたことはある。

パソコンは持っている。
これでも元DTP屋さんだ。

それでも、インターネットは、
メールと調べものに使う程度だ。


ビジネスコンテスト。
そういうものがあることは知っているが、
どんなものかは、よく知らない。


どちらも、わたしには関係ない。
そう思っていた。


少しさかのぼって、2014年。
高尾山のふもとで、人との関わりを避けて、
そういう生活を送っていた。

貧困にあえぐ、日々の暮らしで、
どこかに出口がないものか考えていた。


そもそも、
どうしてこんなに、貧乏なのか。


それを考えるために、ここからしばらく、
縫製職人の所得構造の問題点を
できるだけ簡潔に抽出する。

なお、あくまでも、わたし個人の実態で、
一般論ではない。

関心が薄ければ、読み飛ばしてほしい。

縫製の仕事の問題は、2つあると思っている。

●工賃が安いことと、
●すぐに生産キャパがいっぱいになること。

 たぶんこの、両方だ。
工賃が高ければ、問題は解決する。
当然だ。

工賃を上げられたら、収入が上がる。
しかし、依頼元との交渉が必要だ。

商品を縫っているなら、
原価率や上代に直結する問題で、
なかなか簡単にはいかないだろう。

交渉して、仮に工賃を上げられたとしても、
果たして何%上げられるだろうか。
一方、
生産キャパシティはどうだろう。

単価の安い仕事でも、
量をこなせば、収入は上がる。
これも、当然だ。

量をこなすには、生産性を上げることだ。

生産性を上げるとは、
とにかく早く縫う、という根性論ではない。

仕組みだ。
もっとうまい仕組みが要る。
ふたりなので、
そもそもキャパは多くないものの、
考えてみたら1日に3万円分くらいは縫える
もっと縫えるかもしれない。

平日稼働して、毎日めいっぱい縫えたら、
本来なら、ふたりで月に70万円くらいは
稼げるはずだ。

それだけ稼げたら、
コストはかからないので、十分だ。
でも、1ヶ月通してみると、
3万円分の仕事がある日の方が少ない。

キャパが埋まっていないのだ。
そして、もっと大きな問題がある。

3万円分の仕事がない日があるのに、
1日で6万円分は縫えない。

これが問題だ。

つまり、手が空いてしまった日ができると、
別の日の売り上げでリカバリーする、
ということができない。


飲食店みたいに、平日の売上が少なくても、
土日の売上で補うようなことができない。

生産キャパは、すぐに上限に達するのだ。
こうして、キャパに届かない日を重ねて
ふたりで20万円も稼げない月ができてしまう。

さらに、打ち合わせに行っている間は、
縫えない。

手を止められると、お金にならない。
これがなければ、もっと縫える。

次に、その解決手段を考える。

同じく、関心が薄ければ、
読み飛ばしてほしい。

逆に考えると、
毎日キッチリ3万円分ずつ縫えたら、
わりと稼げるような気がする。
毎日3万円分の仕事を確保する。

それを実現するために、
必要なものはなんだろう。

①仕事を受注できる場所
②打ち合わせに行かなくて良い仕組み
③条件を自分で選べる権利

最低限、この3つが必要だと思う。
①まず、仕事がないと始まらない。

既存の仕事が空いた時に、
キャパを埋めるための、
仕事を受ける手段が必要だ。
②次に、コミュニケーションの手段が要る。

打ち合わせのための移動や会話、
電話に奪われる時間は、お金にならない。

スポットの仕事を受けるために
手が止まってしまっては、たまらない。

コミュニケーションは、
非同期の手段で完結するべきだ。
③割に合わない仕事は受けられない。

せっかく仕事があっても、
工数に対して工賃が安い
割に合わない仕事を受けてしまうと、
毎日3万円分の仕事の確保にはつながらない。

自分にとって、メリットのある仕事を
自由に選べないといけない。

最低限、この3つを実現できれば、
状況は大きく好転するはずだ。

どうしたら実現できるだろう。
ホームページでもつくればいいのか?


「ホームページ」「つくりかた」で
検索してみた。

「html」と「css」が要るらしい。
なるほど。


自分でつくるのは無理そうだ。
誰かにつくってもらうのも、
お金がかかりすぎそうだ。

さて、どうしたものか。

めずらしくパソコンでいろいろ調べてみると、
あるサイトにたどり着いた。


「400字からはじまる、
世界を変えるスタートアップコンテスト」
『TOKYO STARTUP GATEWAY』
と書かれている。

いわゆる「ビジネスコンテスト」だろうか。

どうやら、

●事業「アイデア」と、それへの「想い」を
●400字ほどにまとめて
●応募して
●良さそうだと思われると
●えらい人がブラッシュアップしてくれて
●立ち上げるのを手伝ってくれる

こういうことらしい。


応募資格は、こうだ。

15歳から39歳までの起業を目指す
アイデア・プラン段階の個人
(伊藤応募当時)

起業を目指しているわけではなく、
年齢もギリギリだが、
アイデア・プラン段階の個人だ。


なにより現時点で、
「手段」を求められていない。

「手段」はさっぱり思いつかないが、
「アイデア」と「想い」なら、書ける。

とくに「想い」なら、何万字でも書ける。


さっそく、応募してみよう。

もちろん、ダメ元だ。
ほんの少しも、期待はしていない。
ゴールがイメージできていないのだから、
あたり前だ。

むしろそれより、
「アイデア」と「思い」を見てもらって、
もしもフィードバックをもらえたら。

そこから「手段」のヒントに
たどり着けるかもしれない。

それを期待して、本当に応募した。


さあ、ここから、
何もなかったわたしに、奇跡が舞い降りる。


(つづく)

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