別に誰の得にもならなくていいから、あなたの言葉を聞かせてよ(LITALICOアドベントカレンダーあとがき)

「なんだか、大変な時代だなぁ…」

「自分」を仕事にするだとか
個人の時代だとか
これからの○○は△△ができないと生き残れないとか

そういう、「時代を語る」系のコンテンツと言いますか…なんだか、希望を語っているのか不安を煽っているのかわからないような言説を目にすると、ちょっとため息をつきたくなることがある。

「個人の発信力」が重要視される流れは、編集者やライター界隈にもそこそこ前から来ていまして、昨今ますますその盛り上がりを見せるばかりだ。

編集者もライターも自分のSNSアカウントを持って価値あることを一生懸命発信したりセルフプロデュースしたりしないといけないみたいに言われて、そのためのセミナーなんかも開催されたりして(ゴールドラッシュではつるはしを売った人が一番儲かったみたいな話を思い出します)、編集者とかライターが"主役"としてコンテンツ論・メディア論を語る、みたいなイベントも増えてきているし、僕も1回や2回そういうのに呼ばれてお話したこともある身でだからその片棒を担いでいるのかもしれないけれど、そういうのを目にするたびに、

「大変な時代だなぁ…」
と、ちょっと他人事みたいに距離を開けて、独りつぶやいてみたくなるのである。


飲み込まれないように抵抗しているのかもしれない。



インターネット上で、個人がフラットに発信できる環境がこんなにも整ってきたことは、基本的にはいいことだと思っているし、自分もその恩恵を受けたひとりだろう。

個人の発信が反響を呼び、仲間や支持者を集め、ひいては顧客や仕事にもつながり…という構造の中では、個人の「キャラ化」「タレント化」「ブランド化」というのは必然の流れなのかもしれない。

で、別にその選択肢を取らないということも、当然一個人の自由なのだけど、モノをつくって届けるということが仕事の中核であるライターや編集者という職業にあっては、そういう産業構造や情報流通構造の変化に敏感にならざるを得ない。

新聞や雑誌の凋落というのは言われて久しいなか、ネットでメディアをやる私たちは自分たちで「届ける」ところまでコミットしないと食っていけないわけで、しかも職業的発信者でない人たちの無料の投稿と読者のアテンションや時間の取り合いをしなければならないという厳しい環境にいる。

いずれにせよ、「プロ」としてお金をもらってやっていくんだったら、その時代の産業構造や自分が携わる事業のマーケットに合わせて、求められる成果は出さなきゃいけないし、そのための「手段」の一つとして個人の発信力強化とかセルフプロデュースが有効かつ必要なんだったら、それは「やる」の一択でしょうよと言われるかもしれない。

そうかもしれないのだけど。

ちょっと、あまりにも生産と消費のスピードが速すぎるものだから、ときおり食傷気味になる。


「仕事」なので当然制約がある。期限とか予算とか。
ときには、基準に満たないものがあれば、ボツも出す。
記事がどれだけ読まれたか、どんな成果につながったか、毎週、毎月レビューもする。
だけどこれらは、ずいぶんと短い時間軸の話だ。

そうではなくて、長い時間軸の目線や身体感覚も持っておかないと、何か大事なものを見落としてしまうんじゃないかという不安が、常にある。

そしてそこには、わたしやあなたの人生にとって、あるいは集合体としてのメディアや事業にとっても、大事なものが残されているんじゃないかと思うのだ。


みんな年末で忙しいことを知っていながら、事業部横断でこの「LITALICOアドベントカレンダー」やろうよと言い出したのはそこら辺に理由があるのかもしれない。

上で書いた話と一見同じような、「個人」の名前での発信で、このnoteというプラットフォームを使っての企画ではあるのだけれど、むしろブランディングとかPRとかそういうのと真逆の意図というか、そういう意識で書いたら出てこないような言葉が沁みだしてくるといいなという気持ちで声をかけた。

〆切と順番だけを決めて、特段目標も定めず、「別に誰の得にもならなくていいから、あなたの言葉を聞かせてよ」ぐらいのノリで。

僕のその勝手な願いは、見事に叶ったなという感じです。


お隣のメディア事業部、Conobieでは「Conobieサロン」という試みがあって、そこに参加するお母さんたちは「○○ちゃんママ」ではなく「わたし」に立ち戻って、「わたし」を主語にしてお話しようということを大事にしているらしくて、僕はそれをとても素敵だなと思って遠巻きに眺めている。

サロン運営メンバーであるひかちゃんの投稿はとても温かい気持ちになった。

そこに「あなたへ」という想いはあるのか。


当然のことながら、私たちも「ライターさん」や「編集さん」という人間ではない。そういう仮面、立場で仕事に臨むのだけど、全体としての<わたし>の暮らしがあることがまず大前提だと思う。

誰もが、24時間365日編集者であるわけではなくて、それぞれに家庭があり暮らしがあり、仕事以外の時間もある。
また、仕事だけを見たとしても、職業人生の中でずーっとライターや編集者の仕事”だけ”をするという人ばかりでは当然ない。

発達ナビの学生ライターインターンのほとんどは、きっと卒業後、ライターや編集者とは違う仕事に就く子の方が多いだろう。

しかも、担当する記事のほとんどは、「個人」のクレジットの出ない記事だ(いわゆる公式アカウントの中の人)。

それでもライターとしてひとつのテーマや記事、読者と向き合うという行為が、彼らのこれからの人生にとって、何かの糧になったら嬉しいと思って眺めている。

・伝えたくば空を見るな、地を這うんだ
・こじらせ系男子が悩んだ"伝え方"〜きょうだい児の経験を添えて〜
・エセ登山者を脱して、伴走者になろうと試行錯誤しているライターの話
・ひとり大反省会の一部始終をあますところなくお伝えします。
・作文嫌いだったぼくが、いま「書くこと」にハマったわけ
・どこにでもいる学生が、”まだどこにもない”記事を書くことに本気で情熱を注いでたんだってば。


一方で、やっぱりこの仕事って楽しいなぁと思うのは、ライターや編集者としての立場で、仕事を通しての出会いや関わりが、<わたし>の人生にも何かしらの豊かさをもたらしてくれているのも確かで。

「人見知り」を自認する橋本さんが、Conobieの編集者になって、ライターさんを「好き」になっていく過程で、他人との関わり方が変わっていったという話とか、

人見知り編集者が、ライターさんを「好き」になって変わったこと。

記事に出せなくかった、語れなかったこともいっぱいある一方で、「書けなかったこと」こそが自分の糧になると言ってくれたウエノさんの話とか、いいなぁって思う。

・「伝わらないこと」こそ、糧にしろ


仕事の場面で表に出ない、残らないものは短い時間軸で見るとたくさんある。

だけど、長い時間軸でみた時に、こぼれ落ちたものこそが大事だったりすることは、やっぱりあると思う。


そもそも私たちは、日常的に他人と関わり、「伝える」ためのコミュニケーションを取っている。うまくいうことばかりではなくて「伝わらないな」と悩むことがあったり、言ったこと、言えなかったことに悶々としたり。

だけどそのたびに、「伝えたい」「伝えよう」と思って諦めずに試行錯誤をしてみたりする。

それは別にライターや編集者の仕事じゃなくたって同じことだろうし、「売れるための」コミュニケーションばかりじゃないはずだ。

そんなわけで、今回のアドベントカレンダーでは、しれっと営業マンやCS担当や広報担当の人にも書いてもらった。

・「正直、俺には全然分かんねぇよ。」
・鍛えた筋肉がちがったという事実
・自己満足から抜け出したくて(ショートインタビュー)

あと、卒業生枠で、かつての同僚にも書いてもらった。

・「言葉を揃えさせる」ってパワフルだよね?という話


そんなことをやっているから、結局エントリー者は25人を超えて、もはやアドベントカレンダーとは何かみたいな状況になったのだけど、はみ出したって書きたいことがあるならいいじゃん、どうぞというノリで、強引に継続した次第です。で、これが正真正銘の最後、言い出しっぺの僕のあとがき。

最後のくせにまとまらないね。「うまくまとめまい」と思って書き出したから当然か。ちょっともう日付変わっちゃったし


…僕は別に、ライターとか編集者になりたかったわけじゃないし、たぶん今もそうでもないのだと思う笑

でも僕にとって書くことは生きることに直結するぐらいにずっと自分の傍らにあって、それは言葉を通して誰かの物語に触れることが好きだからなのだと思う。
(仕事でも、記事を出すよりスタッフとあーだこーだ面談してる時間が一番好きだったりするね笑)


そんなわけで、ノリと勢いで始めたこのアドベントカレンダーは、普段は見えにくいみんなの<わたし>成分がじんわり染み出したとってもエモいマガジンになりました。

卒業アルバムを戸棚にしまうように、みんなが寝た頃のこんな時間にこっそりと紐を綴じて僕の小さな宝物にしてしまおうと思う。


みなさま良いお年を。

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「LITALICO アドベントカレンダー」
12/1〜12/25の間、LITALICOで働く編集者・ライター・広報・マーケター・ディレクター等のメンバーが、日替わりでnoteを投稿していきます。
(と、言いつつ延長線で12/29まで続きましたw)

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LITALICO Engineers Advent Calendar 2017

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鈴木悠平

文筆家/インターミディエイター® 閒-あわい-を掬って書いたり編んだりしています。 LITALICO 社長室チーフ・エディター/ウェブマガジン「アパートメント」管理人/NPO法人「soar」理事

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「障害のない社会をつくる」をビジョンに就労支援・学習支援、ネットサービス等を展開する(株)LITALICOの編集者・ライター・広報・マーケティングメンバーによるアドベントカレンダーです。 年末進行に追われながら、一人ひとりがわがことに立ち返って「書くこと、伝えること」につい...
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