原点はすごい。
ビートたけしが「いちばん面白かった映像」というのを以前見た。
それはたしか「元気が出るテレビ」で、素人のぽっちゃりした少年が芝生の坂を転げ落ちる、というものだった。
まるでホームビデオのハプニングシーンみたいなそれに、たけしは大爆笑していた。
その道を極めた人だからといって、高度で小難しいものがいちばんだというわけではないんだな。
物事の本質、原点みたいなところが結局、すごいところなんじゃないか。
たとえば蕎麦を食べるとき、麺をちょっとだけしか付けないで食べるのが通だ、というのも聞いたことがある。
でもそれは、まだ通の途中かもしれない。それもやってみて、やっぱり全部付けたほうが美味しい、そう思ったらそれは原点に帰ったってこと。
歌もギターも全然上手くないのに、なぜか楽しいと感じさせてしまえるならそれは、本人が本気で楽しんでいるのがわかるから。
それもきっと何かを表現する原点。
やっぱり原点はすごい。
ちなみにぼくは、あんまり笑えてないとき、中学生のときのスキー学校を思い出す。
ボーゲンを習っている最中、突然視界にクラスメイトが直滑降で降りてくるのが見えた。
そのクラスメイトが「止まらねえー!」と声をあげている。
視界に入ったその一瞬の光景を思い出すと、笑いがこみ上げてくる(クラスメイトは、たぶん転んで止まった)。
それ以上に面白い出来事とか、思い出深いことはもちろんあるのだけど、あの光景ほど強烈に思い出し笑いしてしまうことはない。
別にそれにまつわるいい話もないのに、ただただその場面だけが笑える。
ビートたけしのホームビデオ感は、こういう感じか。
まあ、つまり原点とは、それだけ強烈だということだ。
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