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声溜め

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世間体を気にして、世間に出ることがなかった"声"の溜め場です。
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大人になりきれない、未完成な私。

大人になりきれない、未完成な私。

世の中のことが全てわかる、それが大人。と思っていた小学生の私。

気づいたら人生の四分の一を終えていた。

二十歳の時は、私もとうとう大人になるんだと、勝手に、そして無責任に思っていた。けど、その日を迎えてみても、日常と私は変わることはなかった。それから5年。 大人になりきれない私がまだいる。

皮肉にも社会は私を大人として扱う。 でも年をとればとるほど、わからないことは増えていく。不安が日に日に

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am神頼み

am神頼み

am6:45

果歩は最悪な目覚めだった。

昨日の彼氏との些細な喧嘩。その際に、頭に血が上り「付き合わなければよかった」と口まかせに言ってしまったことを悔いていた。その言葉を聞いた彼の弱々しい顔が、じゅくじゅくと罪悪感を感じさせていた。そして、そんなことがあったにも関わらず、いつもの時間に目が覚めてしまう、自分に嫌気がさす。

仲直りに運が味方してくれるかも、と見た朝の占いは、

「今日の牡羊座

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成仏できないわたし

成仏できないわたし

あの時の辛い思い出が、夢の中でも私を苦しめる。

その辛さは、当時嫌というほど味わっているのにも関わらず、
10年経っても、成仏できないでまだ私の中にいる。

それでも、当時のことを笑い話のネタとして話すことができるようになった。
でもそれは、ただ強がっているだけなのかもしれない。
過去の弱さを引きずる、弱い自分を見せたくないから。

「忘れないで、あなたはまだ、弱い。」
弱さを偽るなと、成仏でき

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背伸びした秋

背伸びした秋

「夜漢軍の四面皆楚歌するを聞き、項王乃ち大いに驚きて曰はく、」
鈴木は思い出していた。高校時代に漢文の授業で習ったこのパートを。

大学2年生で初めてできた彼女への、初めてのプレゼントを買いに、鈴木は今まで踏み入れたことのないアクセサリー店に立っていた。手練れのお姉さん販売員に囲まれていた時に、さっきの漢文を思い出した。彼女らの目線は
お金がない大学生が背伸びして、彼女にプレゼントを買いに来たんで

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こっちとあっち

人のつめたさって。

初めて体験したのは3年前。左手で彼の頬を触った瞬間にわかった。彼はここにいるけど、ここにいない。つめたさが何を意味するのか、理解よりも感情に、胸が苦しくなるほど強く訴えてきた。

「お疲れ様、よく頑張ったな」

こっちの彼に投げ掛けた言葉は、あっちの彼には届かず、涙という形で静かに返ってきた。

果糖な期待

「駆け込み乗車はおやめください。」

朝7時。曇りのうち晴れ。今日もぎしぎしに詰め込まれた弁当箱のような電車に乗る。そして、お気に入りの邦楽の音楽をイヤホンから垂れ流しながら、ひたすら満員電車を耐えている。

「人生なんてあいまいだ。」

歌手が耳元でそう囁いた。人生に期待はしていない。でも生きていたら自然と何かに期待してしまう。そういう風に、私たちはできている。人生酸いも甘いもあるというが、実際

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