背伸びした秋

「夜漢軍の四面皆楚歌するを聞き、項王乃ち大いに驚きて曰はく、」
鈴木は思い出していた。高校時代に漢文の授業で習ったこのパートを。

大学2年生で初めてできた彼女への、初めてのプレゼントを買いに、鈴木は今まで踏み入れたことのないアクセサリー店に立っていた。手練れのお姉さん販売員に囲まれていた時に、さっきの漢文を思い出した。彼女らの目線は
お金がない大学生が背伸びして、彼女にプレゼントを買いに来たんでしょとでも言っているようだった。

事前情報で4℃というブランドが若者に人気と聞いて、慣れない足取りでその店舗の前までたどり着いた。そこには、ネットで‘作り笑顔’と調べたら関連画像のトップに表示されるような、作り笑顔のお姉さんが立っていた。それで気後れしてしまい、無駄にお店の前をいったりきたりしてしまった。しかし、すでに買いたいネックレスは事前にネットで調査済み。あとは注文するだけ。

顔を下に向け、誰にも見られないように、静かに深呼吸をした。そして、お店に入る。

「いらっしゃいませ~。何かお探しですか~」

「こ、これ、、ください」と鈴木はスマホの画面を見せた。

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あしゅり

声溜め

世間体を気にして、世間に出ることがなかった"声"の溜め場です。
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