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Qu'est-ce que le 14 juillet ?

今日7月14日は何の日かご存知でしょうか?日本人にはピンと来ないかもしれませんが、フランスにとっては1年で最も大切な日、”la Fête Nationale française”(フランス国民祭)、1789年7月14日パリの民衆がバスティーユ牢獄を襲撃し、いわゆる”la prise de la Bastille”、フランス革命の発端となった日です。この革命により絶対王政が廃止され共和制(第一共和政)が誕生することとなります。「ベルサイユのばら」です。オスカルです。その後紆余曲折があり現在のフランスの政治体制は第五共和政なのですが、la République française(フランス共和国)にとって建国の原点と言える日がこの日なのです。日本ではパリ祭とも呼ばれていますが、これはルネ・クレールの映画”Quatorze Juillet “の邦題を『巴里祭』としたため。だからフランス人にパリ祭と言っても通じません。

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。この日に最もふさわしい歌は何でしょう?

フランス人に聞いたら100人中100人がこう答えます。

フランス国歌

**“La Marseillaise”(ラ・マルセイエーズ) **

Allons enfants de la Patrie,
さあ祖国の子供たちよ、
Le jour de gloire est arrivé ! 栄光の日が到来した!
Contre nous de la tyrannie,
我らに対し圧政の
L'étendard sanglant est levé,
血に染まった旗がひらめく
L'étendard sanglant est levé,
血に染まった旗がひらめく
Entendez-vous dans les campagnes 
聞こえるか?戦場の
Mugir ces féroces soldats ? 
残忍な兵士たちの雄叫びが
Ils viennent jusque dans nos bras
奴らは我らの腕の中までやって来て、
Égorger nos fils, nos compagnes !
我らの息子や妻の喉を掻っ切り殺すのだ!
<Refrain>
Aux armes, citoyens
武器を持て、市民たちよ
Formez vos bataillons
隊列を組め
Marchons, marchons !
進もう、進もう!
Qu'un sang impur
穢れた血が
Abreuve nos sillons !
我らの田畑を濡らすまで!
Français, en guerriers magnanimes,
高潔な戦士たるフランス人よ、
Portez ou retenez vos coups !
打撃を与えよ、また制止せよ
Épargnez ces tristes victimes,
惨めな犠牲者たちは許してやれ、
À regret s'armant contre nous.
心ならず我らに武器を向けている者に対しては
À regret s'armant contre nous.
心ならず我らに武器を向けている者に対しては
Mais ces despotes sanguinaires,
しかし血を好む暴君どもと、
Mais ces complices de Bouillé,
ブイエ(将軍)の共謀者どもは別だ
Tous ces tigres qui, sans pitié,
この虎どもに情けは無用、
Déchirent le sein de leur mère !
母の子宮を引き裂きし奴らには
<Refrain>
Amour sacré de la Patrie,
祖国への聖なる愛よ、
Conduis, soutiens nos bras vengeurs
我らの復讐の手を導き支えよ
Liberté, Liberté chérie,
自由よ、愛しき自由よ、
Combats avec tes défenseurs !
汝を守る人々と共に戦え!
Combats avec tes défenseurs !
汝を守る人々と共に戦え!
Sous nos drapeaux que la victoire
我らの旗の下に勝利が
Accoure à tes mâles accents,
汝の雄々しき声に応え駆け寄らんことを
Que tes ennemis expirants
汝の瀕死の敵どもは
Voient ton triomphe et notre gloire !
汝の勝利と我らの栄光を見んことを!
<Refrain>

歌うはフランスの国民的歌手Mireille Mathieu(ミレイユ・マチュー)。1番5番6番を歌っています。本来7番まであるのですが、歌詞全部を暗記している人はフランス人でもまれ。1番と6番が最も有名です。1番の”nos bras,nos fils, nos compagnes”は”vos bras,vos fils, vos compagnes”(vos=あなたの)としているものもありますが、ミレイユは”nos=我らの”で歌っています。また"Marchons, marchons !"部分は"Marchez, marchez !"と二人称命令形の時もあります。彼女の”r”は独特の巻き舌、普通のフランス語ではこのようには発音しません。でもこの歌には相応しい歌唱だと思います。自分で和訳しましたが、あえて直訳調にしてみました。

フランス革命時マルセイユ義勇兵が隊歌として歌い始めたことからこの名が与えられ、その後民衆とマルセイユ義勇兵ら民兵がルイ16世とマリー・アントワネットを捕らえるためパリに入城した時にも口ずさみ、世に広まって国歌となりました。

この歌が劇中で印象的に使われている映画があります。一つ目はジャン・ルノワール『大いなる幻影』。舞台は第一次世界大戦。ドイツ軍捕虜となったフランス軍兵士たちによる演芸会の最中、もたらされたドーモン奪還のニュースに一致団結し「ラ・マルセイエーズ」を合唱します。

二つ目はマイケル・カーティス『カサブランカ』。こちらは第二次世界大戦中、ドイツの傀儡ヴィシー政権下フランス領モロッコのカサブランカでドイツ軍将校が歌う「ラインの守り」に対抗し酒場の皆で「ラ・マルセイエーズ」を合唱します。

どちらの場面もドイツの抑圧下にありながらもフランス人としての矜持を失わない象徴として「ラ・マルセイエーズ」が歌われます。とりわけ『カサブランカ』ではドイツ側であるヴィシー政権の役人たちやドイツ将校に色目を使う女性も合唱に加わり、心ならずもドイツに従っているだけだということを告げます。『カサブランカ』はOPやEDにも「ラ・マルセイエーズ」のモチーフが使われ、メロドラマであるこの映画のもう一つの主題が祖国への愛であるということを示しています。

全国民が愛着と誇りを持って歌える国歌を持つフランスは羨ましいですね。

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