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制作裏話:'op.5 Alisa -Irisjaponica-'

――「私は『かわいそう』なんかじゃない!」――
―I won't let anyone pity me!―

かざりゆい

こんばんは、かざりゆいです。
制作裏話第4話ということで、今夜は作者のお気に入り――「作者が一番のファンだ」と言って憚らないあの曲、'op5_Alisa-Irisjaponica-'について綴ろうと思います。
……思い入れと工夫が多すぎて書ききれる気がしません💦



制作過程の話

経緯

この曲は、澤野弘之作曲の"RX-0"という曲にインスピレーションを受けて制作したものです。
好きな曲を聴いている時、無意識にオリジナルの対旋律をつけて鼻歌する癖がありまして。即興で色々歌ってハーモニーを楽しんでいます。
今回は正にそれで、"Alisa"のメインメロディはそこで生まれました。曲として完成させようと決めた理由は、「原曲とは全く違うメロディで、しかも主旋律として使える強い旋律」だったからです。
着想を得た後も、曲の展開に楽器の掛け合いにと、"RX-0"には沢山勉強させていただきました。


コンセプト

「『自分自身を見てもらえない』と鬱屈していた主人公が、苦難を乗り越え成長し、遂に自分だけの武器を手にして戦場へと向かう」――そんな若さと爽やかさを前面に押し出したワンシーンを思い浮かべたものです。
"RX-0"自体が、ロボットアニメの主人公(機)のテーマ曲になっていて、自ずとこちらも似た雰囲気になりました。

……まさか、本当にロボットアニメ風出撃シーンのイメージ曲にすることになるとは、当時は想像もしていませんでしたが。


コード進行

Gメジャースケールで、

C,D,Em,Bm C,D,Em,Em

の繰り返し。
ディグリー・ネームで書くと、

Ⅳ,Ⅴ,Ⅵm,Ⅲm Ⅳ,Ⅴ,Ⅵm,Ⅵm

というわけで、「Ⅳ→Ⅴ→Ⅵ」つまり「S→D→T代理」の流れをずっと繰り返してます。
大部分が順次進行なのもあって、勇ましく前進していく印象をつけられたかなと。途中でⅢmを挟んでいるので、ただ真っ直ぐ進むだけではなく行く手を阻む障害を乗り越えていかなければならない――というドラマ。


楽器編成

他の曲だと10トラックいかないものも多いのですが……改めて数えてみたら、まさかの24トラックありました。私にしては多い。
実際、編成はこんな感じです。
(パン振りのために分割してるので楽器数自体は20程度)

和太鼓 →C
ドラムス →C
マラカス
トライアングル
シンバル →R
シンセ1(ベル →R
シンセ2(キーボード →中音L
シンセ3(キーボード →高音R
ピアノ →R
グロッケンシュピール →L

低音ストリングス →C
中低音ストリングス →C
高音ストリングス →LR(split)

低音ブラス →CR
ホルン →C
高音ブラス →CL

バスーン →R
クラリネット →CR
フルート →L

※CとかLとかRとかはパン振りのメモ。

Garagebandでどうにかオーケストラ編成っぽくしようとした感じです。
何度かGaragebandのトラック上限にぶつかってましたね。


旋律

様々な楽器が代わる代わる表に出てきてメロディを奏でる構成がとても好きです。なので、打楽器、木管、金管、弦楽器、と代わる代わる演奏するようにしてみました。
最初のベルっぽい伴奏(実はシンセ)とか、金管のサビ、クラリネット&フルートの独奏やハモリ、終盤フルートのハモリとか、最後のバスーンによる伴奏……等々。
コード進行がずっと一定なので、「どれだけ多く主旋律&対旋律のバリエーションを増やせるか?」が試されていた気がします。前述の趣味を遺憾なく発揮できたので、打ち込んでる間ずっと楽しかったです。
眠る直前に、「ラスサビをもう一回繰り返してクラリネット&フルートをハモらせる」のを思いついたのはミラクルでした……。

とにかく楽器数が(私にしては)多いので、よく使い分けたものだなぁと。ここは特に"RX-0"に学んだ部分が大きかったように思います。
0からここまで重層的な曲を作るのは、今の実力だと足りないかな……。


パーカッション

まさかの和太鼓。Garagebandで良い感じのベースドラムを見つけられなかったので代わりに使ってみたんですが、存外良い味を出してくれてます。
ラスサビ直前のシンバルも、サスペンデッドシンバルが無かったため、クラッシュシンバルの音源を逆再生してます。どこかのブログ記事で拝見した知恵を活用させていただきました。ありがとうございます。
あとは、段階的にトライアングル、マラカスも足して、思いっきり華やかにしてみました。やっぱりパーカッションが充実すると、なんというか、豪華で楽しくなりますね。
「小物」と呼ばれる楽器群ですが、山椒は小粒でもぴりりと辛いと言うように、外せない役割を担ってくれてます。


ミックス&マスタリング

この曲から、ミックスとマスタリングをするようになりました。
まずは勉強ということでGaragebandの機能を使って、「音割れ調整」「パン振り/定位」「コンプレッサー」「リバーブ」、と基本的なものをそれぞれかじりました。
音割れについては、複数の楽器で音量が振り切れてたので、危ないところでした。
パン振りとリバーブは、立体感という点で、なるほど効果を実感しました。
コンプレッサーについては今ひとつピンときていなくて、サビの部分で音圧?が足りずにミュートがかったような感じになってしまったのが無念。今後の課題です。


タイトル

書いた後、この曲には視覚的なイメージが浮かんでいました。コミック「GODEATER2 the 2nd break」の、「アリサ」というキャラクター。シリーズの外伝になっていて、様々な困難を経て成長した彼女が、武器を片手にヘリコプターから降下する姿です。
ただ、あくまでインスピレーションであって、キャラクター自身の公式設定とはあまり関係ありませんし、彼女をイメージした曲ではありません。楽曲コンセプトの時点で違っています。
この楽曲の"Alisa"とは、「GODEATERの『アリサ』にインスピレーションを受けた、かざりゆいの妄想オリキャラの名前」だと思ってください……。

曲名について、もう一つの鍵が「シャガ/著莪」という花です。
5月に旅行先で見かけた花。林の中、やや日陰になった場所でひっそりと、けれど沢山、群れるように咲いていました。
その花言葉は「私を認めて」。
コンセプトの項で書いた「主人公」にぴったりだと思って、キーアイテムにすることにしました。


出来上がった曲

振り返り

――というわけで、‘op.5 Alisa -Iris japonica-’ について綴ってきました。
綴るというか、自分語りになってしまった気もします。好きすぎるのと、如何せん原曲が非常に巧みなため、分析しても余りある工夫の数々と。
課題としては、
・セクション構成の引き出しが足りない(ほぼ参考曲頼り)
・ミックス&マスタリング時に、音圧?がのっぺりしてしまう。
・寝食を忘れそうになった

今回、対旋律、楽器編成、ミックス等々、幅広く挑戦したように思います。書ききれない。
オリジナルの対旋律は、多分子供の頃からやってたんですが、一度も形にできたことはなくてもどかしく……今回は積年のリベンジを果たせたところで、その達成感もひとしおでした。
セクション構成としても、私が元々作りたかった「ドラマティックな劇伴」を作ることができました。一番嬉しいのはここですね。作曲を始めてから1ヶ月半……とても楽しくなってきました。


いつまでも語ってしまいそうなので、今回はこの辺にしたいと思います。
年内は次の更新が最後になるかな?

それでは、また。


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