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8/20 MONSTER baSH DAY1

8月20日、国営讃岐まんのう公園にて、3年ぶりに巨大野外フェス、MONSTER baSH、通称モンバスが開催された。

僕自身はモンバス初参戦だったが、会場には過去のモンバスのTシャツや、中止になった昨年の分のTシャツを着ている人も多くいて、どれだけこのフェスの開催が待ち遠しく思われていたかが伺える。

中国四国の最大級の野外フェスとして、止まっていた野外フェスの時間を再び動かすためにモンバスは動き出したのだ。​



9:55~ ハンブレッダーズ(STAGE龍神)

オープニングアクトとしてではあるが、3年ぶりのモンバスで初めに音を鳴らすのは大阪のハンブレッダーズ。ここ数年の人気の急増っぷりを見れば、納得の人選である。

いきなり木島(Dr.)がスティックを落とすというハプニングを見せながらも、1曲目に演奏された「再生」はオーディエンスのボルテージをあげるにはあまりにも完璧だった。音楽が鳴っている間は向かう所敵無し、そんな気持ちは会場中の全ての人間が共感し得るだろう。

続けて「ワールドイズマイン」の四つ打ちのリズムで客を踊らせ、さらなる熱狂を生むと、
「夏はフェスに行くのもいいし、海に行くのもいいけど、カラオケに行くのもいいと思うんです」
とムツムロ(Vo.Gt.)が伝えて最新曲「カラオケ・サマーバケーション」をプレイ。

そして、フェスが開催されることへの感謝をムツムロが伝えたあと、最後に演奏されたのはバンドを続ける決意表明の曲、「銀河高速」。ムツムロはかねてから地元、大阪の吹田で主催フェスを行うことが目標と話しているが、その日は近い内に来るのではないかと思わせるような今日の演奏だった。

それは演奏の正確さやメンバー本人が演奏を心から楽しんでいることもさることながら、それでも自己満足に終わらず、常にオーディエンスを楽しませるステージングになっていることから伺える。

ハンブレッダーズにとってオープニングアクトの20分は短すぎるようにも思えるし、吹田での主催フェスの前にこうした既存の野外フェスでもより大きなステージに立つ日も近いのではないかと思わせた。

セットリスト
1 再生
2 ワールドイズマイン
3 カラオケ・サマーバケーション
4 銀河高速


かなり早いが、ここで昼食、香川に来たのだからうどんを食べようと思ったが、10時過ぎでも長蛇の列を成しており、断念してそうめんを食べる。(おいしかった)


11:00~ 四星球 (STAGE龍神)

主催者から直々に3年ぶりのモンバスのトップバッターを託された四星球。今年で結成20周年を迎え、絶対的な信頼を得て、このモンバスに導火線を付ける役割を担った。

25分しか時間がないため、入場の時間も惜しいからSEは短くするという理由で「伯方の塩」で入場すると、いきなり代表曲、「クラーク博士と僕」でスタートし、いきなり会場のテンションはマックスに。打首獄門同好会のドラムセットを段ボールで作ってそれをぶつけあったり、次の「UMA WITH A MISSION」では馬に扮した北島康雄(Vo.)が立ち上がるまでみんなで応援したりと、あまりに自由すぎるステージングに会場一同爆笑が止まらない。

さらに火をつけたのは、今回の出演者の曲をつなげて即興でメドレーにするというある意味すごい「あつまれ!小さな米はRIVERをswim」とその日限りの演奏を披露。

モンバスの主催者である株式会社デュークの定家氏は、「音楽に最も真剣に向き合っているバンド」と彼らの事を称賛していたが、ここまでのパフォーマンスもこのメドレーも自分たちの演奏に自信がなければできないことであり、演奏に自信がないからふざけているのではなく、演奏をしっかりやり切った中でふざける面白さ、カッコよさを伝えてくれる。

さらにパフォーマンスは止まらず、スカパラに扮したエイリアンが登場したり、ORANGE RANGEの「ロコローション」をカバーしステージ上でローションを思いっきり浴びたりするなど、やりたい放題にやった25分だったが、確かに会場に火をつけるには十分すぎるほどだった。

定家氏は、「モンバスが四星球を日本一のライブバンドに育てる」と過去に宣言したそうだが、まだ四星球はその道のりの途中である。これからのモンバスと四星球の発展を願う、これ以上ないトップバッターだった。

セットリスト
1 クラーク博士と僕
2 UMA WITH A MISSION
3 あつまれ!小さな米はRIVERをswim(あつまれ!パーティーピーポー/ヤバイTシャツ屋さん・小さな恋のうた/MONGOL800・日本の米は世界一/打首獄門同好会・RIVER/10-FEET・swim/04 Limited Sazabys)
4 Mr.Cosmo
4.5 Paradise Has No Border/東京スカパラダイスオーケストラ
5 薬草
6 ロコローション/ORANGE RANGE


11:35~ 04 Limited Sazabys(STAGE空海)

四星球が作った流れを引き継ぐかのように、曇り空の午前中でも既に会場中にはうだるような熱気が充満していた。その熱気に応えきったのが、名古屋の雄、フォーリミだった。

STAGE空海の幕開けを任せたのは、まるで地平線から見える朝日を想像させてくれる、「Horizon」。毎日のように日本中を飛び回ってライブをするこのバンドが探しているのは、歌詞にもでてくる「希望の行方」であり、彼ら自身は更なる高みに向かってまだ新たなバンドシーンの希望を探しているのかもしれないが、少なくともオーディエンスにはこのバンドの存在は大きな希望になっているだろう。

さらに「swim」、「kitchen」、「MyHERO」とフェスでの定番曲を連発していく。客席でもピッタリ揃った手拍子や、手の上がり具合から、このバンドがいかに多くの人々に愛され、受け入れられてきたかが伺える。

時折GEN(Vo.Ba.)の高音が若干きつそうにも見えたのだが、本人は「香川にチューニングがバッチリ合っている」と話していた通り、豊富な経験値と確かな演奏力で尻上がりに調子を上げているようにも見える。

そうしたライブバンドとしての意地を感じたのは「monolith」、「fiction」の2曲。今まで何百回と演奏されてきたであろうこの曲たちも、一回一回のライブを経るごとに今なお少しずつ進化を重ねていることが分かる。

そんな過去を積み重ねたからこそ、こうして巨大野外フェスの最も大きなステージで演奏できるバンドになっているわけだし、過去にとらわれることもなく、「明日の自分はどうだ?」と「Grasshopper」からロックシーンの未来に目を向けていることも分かる。

ただそれでもGENは、あくまでも「一番大事なのは過去でも未来でもなくて、今」と話し、最後に「Just」を演奏する。過去に自分たちの実力で積み上げてきた実績を土台にして、今のライブを最善のものにするために尽力する。そうした積み重ねが未来につながるという理想的な流れをこのバンドは30代前半にして作り上げている。このバンドがいれば向こう数年のロックシーンは安泰だとすら思わせるような、充実のステージであった。

セットリスト
1 Horizon
2 swim
3 kitchen
4 MyHERO
5 monolith
6 fiction
7 Grasshopper
8 Just


12:15~ 女王蜂(STAGE龍神)

ここまで四星球とフォーリミが作った流れを一変させるような空気がリハーサルから漂わせていたのが、異色のロックバンド、女王蜂。リハーサルでは楽器隊全員がサングラスをかけていたが、それを取り払い、ステージで歌姫の登場を待つ。

ジングルが鳴り終わると、妖艶なギターリフと大気を震わせるほどの重低音に乗って青く煌びやかな衣装を纏い、アヴちゃん(Vo.)が入場し、「KING BITCH」を歌い上げる。歌詞には性的なワードも多いが、それでも目を奪われてしまうのはこのバンドが持つオーラが他の誰とも違う形で心を捕まえに来るからである。

「モンバス、いける?」と関西弁のトーンでアヴちゃんが問いかけ、不気味なギターが鳴る「BL」に。声の加工も巧みに使いこなしながら、ハイトーンやドスの効いた声と、授かった天恵を存分に発揮し、さらに「火炎」、「催眠術」と華麗に歌い上げていく。

他のどのバンドにもない雰囲気とは言葉では非常に形容し難いが、一言で言うと「非生物的な神聖さ」と言えると僕は思う。派手なメイクのせいもあるだろうが、メンバーがありのままの人間として生活する姿を僕は想像できないし、そのイメージを植え付けるための圧倒的なスキル、表情管理ができるからこその唯一無二の魅力につながっているのだと感じる。

ただそんな中でも、「HALF」ではひばりくん(Gt.)ややしちゃん(Ba.)が笑顔を見せながら演奏やコーラスを行っており、ようやく人間らしい一面を垣間見ることが出来、同時にこのバンドの根底にあるものも「音楽が楽しい」といったとてもシンプルなものだと想像することが出来、勝手に安心してしまった。

そして最後には「次はウチらの単独公演でお会いしましょう」と話し、「Introduction」で締める。再開の場所は女王蜂の単独公演と約束した通り、このバンドにはまだ隠し持っている毒針があるのだと痛感した。あくまでこのバンドの主戦場は単独公演であり、そこでは楽曲の他にも、視覚的なイメージも巧みに用いた女王蜂の真髄に踏み入ることが出来るだろう。

かつてアヴちゃんはフェスのことを「一目惚れの聖地」と形容したが、この25分で間違いなく女王蜂の虜になった人は大勢いるだろうし、そうした人々を今度は単独公演で刺しに行く、というのがこのバンドの企みだろう。まだまだ奥が知れない、実に恐ろしいバンドである。

セットリスト
1 KING BITCH
2 BL
3 火炎
4 催眠術
5 HALF
6 Introduction


12:50~ My Hair is Bad(STAGE空海)

午前中まんのう公園を覆っていた雲はどこかにそれ、太陽がギラギラと照り付ける中、雪国新潟上越を代表してマイヘアのステージが始まる。

椎木知仁(Gt.Vo.)の語りからライブはゆったりとスタート。自身の生い立ち、モンバスのメインステージに立つまでの道のりを「ドラマみたいだ」と表現し、ようやく演奏へ。少し大人しく始まった感があるものの、すぐさま
「ドキドキしようぜ!」
と叫んで「アフターアワー」に雪崩れ込み、激しいライブハウスで育てられ、数多の修羅場をくぐってきたことを我々にまざまざと見せつける。

先ほど語った道のりの中にはきっと苦い思い出も多々あっただろうが、椎木は
「嫌な思い出もいつかは必ず忘れられる」
と話し、「真赤」をプレイ。
「今は爽やかな気持ちでこの曲を演奏できる」
と話していたが、それも自分の苦い記憶と曲を通して何度も向き合い、乗り越えた強さがあるからこその言葉だと感じた。

「真赤」が終わると一転、激しさを増し、「クリサンセマム」、「ディアウェンディ」と感情の赴くままに各々の楽器を掻き鳴らしていく。その姿はかつて抱いていた苦い記憶と真っ向から立ち向かい、爆音でかき消そうとしているようにも見えた。

さっきの「真赤」を今は晴れやかな表情で歌うことが出来ているのも、かつてはこの曲が激情と隣り合わせのパフォーマンスだったように、こうした曲を通じた自分の記憶との戦いの軌跡が、椎木知仁というバンドマンの人生を、マイヘアというバンドの歴史を紡いできたのだと感じる。

そして、再び晴れやかな表情に戻って
「大事な人、ものを思い浮かべながら聞いてください。俺もそうします」
と話し、「味方」を演奏する。

「味方」の最後のフレーズの、
「君がいれば僕は負けない」
を歌い終わると共に、
「勝てなくても、負けなければいい。ダメな自分を甘やかすんじゃなくて、愛せるようにすればいい」
と叫ぶ。

その後、最近のフェスのラストとして定番化しつつある、「歓声をさがして」でライブを締める。前の「味方」にしろ、自分の大事にしたい人やものがあるからこそ日々を強く生きることが出来るとのメッセージを伝える。

もしかしたら、さっき椎木が話した、「ダメな自分を愛する」ことはなかなか難しいことなのかもしれない。けれど、自分を認めてくれる人や、自分が自分らしくいられる場所があれば、そこで自分の存在価値や長所を再確認し、「ダメな自分を愛する」ことにもつながってくるのではないかと考えた。

「真赤」で「嫌な記憶も必ず忘れられる」と話していたが、それは椎木が
「戦争がどうとか感染症がどうとか生きづらいけど、今、モンバスだけは平和だろ!」
と叫んだように、彼自身も自分自身の存在価値をライブに見出し、そこで生きることが出来たからこそ、さっきのメッセージに繋がったのだと考えた。そしてそれは、日々の生活の苦しみから一時的にでも音楽を通じて解放されようとしているオーディエンスにとって、最大級の治療薬となりうる言葉と音楽だった。

セットリスト
1 ドラマみたいだ
2 アフターアワー
3 真赤
4 クリサンセマム
5 ディアウェンディ
6 味方
7 歓声をさがして


13:30~ ヤバイTシャツ屋さん(STAGE龍神)

完全に気温が上がり切り、過酷だとすら思うほどの状況で令和のロックシーンの太陽的な存在、ヤバTの登場である。

いつも通りの「ヤバイTシャツ屋さんが、はじまるよ~」の脱力SEで登場したかと思えば、こやまたくや(Vo.Gt.)が、
「龍神の持ち時間25分は確かに少ないけど、ヤバTには十分やから!1曲でも十分やから!!」と声高に叫んで繰り出したのは、「ハッピーウエディング前ソング」。オーディエンスが無言でキスを煽りまくるという文面にすると意味の分からない状況だが、こやまの言う通り、1曲目としてこれ以上ない最高のスタートダッシュを切った。

その後も、「無線LANばり便利」「ヤバみ」とキラーチューンを投下し、軽くMC。しばたありぼぼ(Ba.Vo.)の「正式名称は『モンスターバッシュ』なのになんで『モンバシュ』やなくて『モンバス』やねん」という主張は何となくそれは言わないお約束感があるが、持ち時間も少ないため、すぐに次の曲へ。

最新曲「ちらばれ!サマーピーポー」ではしばたのボーカルが余りにハイトーン過ぎて野外ではやや聞き取りにくいと感じたものの、「アンチ夏」の曲で夏フェスが盛り上がる様子は数日経った今考えてみてもなかなかカオスで面白い。

さらに続けて「NO MONEY DANCE」で金欠や税金の苦しみを笑い飛ばした後、あと一歩で流行語大賞になるはずだった「かわE」と、この日のヤバTは昔からあるキラーチューンと近年(コロナ禍以降)新しく得たキラーチューンを上手く融合させているように見えた。

過去に固執しすぎることなく、かといって新しいもののみを優遇するのではなく、双方のバランスをうまく取りながら前進し続けるこのバンドはきっとこれからも良い曲を出し続け、長く人々に愛されるバンドになるのだろうと感じた。

それはこのバンドが、時間が数十秒余ったからと爆速で「Universal Serial Bus」を演奏し、持ち時間あと十秒で走って退場する茶目っ気も含め、見ていて全く飽きないバンドだからなのだとも思う。先々の未来の話になってしまったが、まずは8月25日の初の日本武道館公演に向け、準備万端なのだと感じる25分だった。

セットリスト
1 ハッピーウエディング前ソング
2 無線LANばり便利
3 ヤバみ
4 ちらばれ!サマーピーポー
5 NO MONEY DANCE
6 かわE
7 Universal Serial Bus


ここで体力の限界を感じ、少し休憩。幸いにも太陽が雲に隠れ、風も出ていたため、何とかこの後のスケジュールにも参加することが出来た。


16:00~ ハルカミライ(STAGE龍神)

段々と雲が出てきて、雨の心配が強まる中、まずリハーサルで須藤俊(Ba.)・関大地(Gt.)・小松謙太(Dr.)の楽器隊が登場。リハーサルでも楽器を弾かずに暴れまわるなど自由奔放に過ごした後、バンド紹介のジングルの途中で橋本学(Vo.)がバンドロゴの入った巨大な旗を持って登場。

「一緒に駆け抜けようぜモンバス!!」
と叫んで繰り出したのは最強のショートチューン、「君にしか」。その後もお決まりのように「カントリーロード」、「ファイト!」と続く。

橋本と小松は早々に服を脱ぎ、須藤は時折ベースを弾かずに暴れ、関はステージを転げ回りながらギターソロを弾くなど、とにかく好き勝手に楽しんでいるのだが、
「初めて見る奴は適当に来い、見たことある奴はそれなりに来い、とにかく一緒に駆け抜けるぞ!!」
と、どれだけステージ上で勝手に過ごしていても、オーディエンスのことを気にかけ、共にライブを作り上げようとする姿勢があるから、客席も常に人で溢れかえるバンドになっているのだ。

それは次の「アストロビスタ」でも顕著に表れ、イントロで最前列で感動のあまり泣き出した女性に演奏を止めて話し掛け、
「ねーちゃんが泣いてるの見て俺もグッと来たよ。やっぱり音楽って俺達にとっては必要だよな」
と瞳を潤ませながら口にする。

今日の橋本は特にライブができる喜びや、久々にバンド仲間と会えた喜びを語っており、普段以上にその歌声に魂が込もっているっているかのようだった。

モンバスが3年間開催できなかったのはもちろんコロナのせいで、そのコロナのせいで世界は全く別のものに変わってしまった。かつてのライブで、
「こんなつまんねぇ世界、終わらせろ!」
と叫んでいたように、このバンドならルールを守りながらも本当に世界まるごと変えてくれるんじゃないかと思わせてくれる「世界を終わらせて」、そして今この瞬間から新しい世界を作っていく「春のテーマ」で「ここが世界の真ん中!!」と絶叫してライブは幕を閉じた。


かに見えたが、フェスでのハルカミライ名物、時間が余った時のショートチューン連発モードに突入。約2分弱で「ファイト!」をもう一回、「To Bring BACK MEMORIES」を2回演奏し、嵐のようにステージを後にした。

先ほどのヤバTもそうだが、オーディエンスが最も望んでいることは持ち時間の許す限り多くの曲を演奏することだということを熟知していて、常に客とのコミュニケーションを大事にする彼らだからこそのこの大サービスである。どこまでも優しいハルカミライは、僕にとって紛れもないロックのヒーローだ。

セットリスト
1 君にしか
2 カントリーロード
3 ファイト!
4 俺達が呼んでいる
5 アストロビスタ
6 世界を終わらせて
7 春のテーマ
8 To Bring BACK MEMORIES
9 ファイト!
10 To Bring BACK MEMORIES


17:15~ フレデリック(STAGE龍神)

そろそろ体力の限界も近く、フレデリックを最後にまんのう公園を後にしようと考えたため、自分にとっての実質のトリはフレデリックとなった。

タイムテーブルが10分押していることを理由に、リハーサル終了後、
「SE無しでこのままやっていいですか?フレデリックはSEが無くてもめちゃくちゃ格好いいライブができるので」
と三原健司(Vo.Gt.)が自信満々に発言し、大きな拍手が鳴り響いたすぐ後にステージがスタート。

「みんな今日は一番格好いいと思えるバンドに出会えた?残念だけど、そのバンドは2番目になります。俺達がここに居る全員フレデリックのファンにして帰ります」
と絶対的な自信を健司が口にして始めたのは、「オンリーワンダー」。

フェスに足しげく通う人々にとっては聞きなれた曲ではあるが、前のMCを受けて聞くと今日のモンバスの中でもフレデリックこそが一番で、最強のバンドだとアピールするかのような選曲に、オーディエンスはこの日屈指の熱狂で応える。
とはいえ、「みんな違ってみんな優勝」という歌詞にもある通り、どんな音楽の楽しみ方も価値観も否定しないからこそ、このバンドはフェスの運営からも信頼されて、STAGE龍神のトリを任されているのだ。

その後は和田アキ子に楽曲提供した「YONA YONA DANCE」で新しく会得した歌謡曲のようなこぶしの効いた歌唱を見せた後、定番の「KITAKU BEATS」でさらなる盛り上がりを見せる。

ここまではキラーチューンの連続だったが、健司がハンドマイクに持ち替えて歌うのはSNSで大きな反響を生んだ「ジャンキー」。跳び跳ねながらのボーカルや、動き回る楽器隊、手数が大幅に増えたドラム等、ここに来て無尽蔵とも思えるスタミナを見せつける。

フレデリックはどちらかと言えば鳴っている音が機械的で、かつ寸分も狂いのないリズムで音が鳴らされ、無機質なイメージを持つ人もいるだろうが、その反面、彼ら自身が音楽のジャンキー、フリークである以上、ライブや音楽に関する熱量は並々ならぬものがある。その相反する二面が複雑に絡み合い、このバンドにしか出せない独特の空気感を醸し出しているのだと感じる。

「まだまだ遊ぼうぜ!」
と叫んで最後に演奏されたのは「これを待っとったんやろ?」と口にしてからの「オドループ」。日本どころか、世界的な楽曲になりつつあるこの曲があったからこそフレデリックはここまで大きなバンドになったし、散見された自信満々な発言の裏付けにもなったのだ。

稀に見るほどのキラーチューン連発のセットリストを受け、自分も含め、踊りまくっていた自分の周りの人達も多少疲れの色が滲んでいたが、表情は非常に晴れやかだった。このフェスで常々言われていた、「音楽でひとつになる」という目的を達成するために、STAGE龍神のトリとしてフレデリックは最適なバンドだった。

セットリスト
1 オンリーワンダー
2 YONA YONA DANCE
3 KITAKU BEATS
4 ジャンキー
5 オドループ


同日にはサマソニが開催され、ルールを守る・破るで大きな議論が巻き起こっていたが、改めて音楽フェスを運営するということは本当に骨が折れる作業なのだとひしひしと感じた。

現代では音楽の楽しみ方は多様化しているし、人によって音楽がどのような存在なのかは人によってもちろん違う。自分とは違う音楽への価値観を持った人を否定する気はさらさらないけれど、少なくとも僕は音楽があるから日々を楽しく過ごすことが出来ているし、ある意味で生活必需品である。

そんな風に思っている人たちがきっとあの場には沢山いて、ルールの中で最大限一楽しもうとしている人たちが大勢いたことが嬉しかった。まだまだ夏フェスシーズンは続くが、音楽の発展を願う運営と参加者が協力し合い、素敵な空間を作ってほしいと強く願っている。