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「あなた」と「君」

僕の一番好きなバンド、UNISON SQUARE GARDEN(以下、ユニゾン)がまた新たな企みを始めた。「fun time HOLIDAY 8」と命名された全国7か所をめぐる対バンツアーである。

昨年の年越しライブで対バンした女王蜂や同じ事務所の後輩であるマカロニえんぴつ、盟友のsumika、Base Ball Bear、TK from凛として時雨、My Hair is Badと錚々たる顔ぶれが並ぶ中、僕の住む広島での公演の相手はSUPER BEAVER (以下、ビーバー)だった。

ビーバーは元々音楽好きの間では絶対的な実力、パフォーマンス力を持つバンドとして不動の人気を誇っていたが、劇場版東京卍リベンジャーズの主題歌、「名前を呼ぶよ」のリリース以降はその名をお茶の間にも轟かせるようになってきている。

 ビーバーのヴォーカルである渋谷龍太は、自身たちのライブを「演者とあなたの心の往来」と形容することが往々にしてある。ここでいう「あなた」はもちろんビーバーの音楽に触れた一人ひとりのことであり、ステージ上での演奏だけではライブは成立せず、聴衆一人ひとりがビーバーの音楽を聴いて感じた思いをステージ上で届けようとすることで初めてライブが成立すると考えており、MCでは聴衆の一人ひとりに訴えかけるように言葉を紡いでいく。

そういったスタイルを取っているため、彼らの曲には青臭いと感じるほどに真っ直ぐな詞が多い。作詞作曲を務める柳沢亮太(Gt.)が生み出す普通の人間、ただのヴォーカルが歌えばむず痒くなってしまうような言葉を、渋谷が真っ直ぐな声で歌いあげていく。そういった曲をMCで自身の想いや考えを伝えながら演奏していくことで、渋谷の言葉を借りるならば、「あなた」が目の前の現実から目を背けずに立ち向かっていく勇気を与えることが彼らのライブの最大の特徴といえるだろう。


一方、この対戦の首謀者であるユニゾンはライブに関する考え方が真逆だといって差し支えないだろう。ステージ上では3人が気の向くまま、思うがままに演奏を楽しみ、煽り文句やMCで観客とコンタクトを取ろうとすることは全くない。

インタビュー等でも作詞作曲を務める田淵智也(Ba.)は自身の書いた曲に込めた感情やメッセージについて言及することはほぼなく、作詞の際は言葉の意味よりも耳当たりの良さや発語感の良さで言葉を当てはめていくことが多いと話している。

そんな彼が書いた詞の一つに「オーディエンスはいたっていなくてもいい」というフレーズがある。繰り返しになってしまうが、彼らにとっては3人で大きな音を出して演奏するという行為自体がライブなのであり、そこに観客を取り込もうとすることは決してないのだ。


長々と双方のライブの定義について書いてきたが、そんなほぼ真逆の考えを持つ2つのバンドはどのような形でぶつかりあっていくのか、今回のツアーの中でも屈指の好カードである。

(以降、ネタバレ注意 また、僕の持ちうる知識量の関係でどうしてもユニゾンについて書かれた部分が多くなってしまっている。ご了承いただきたい)



4月5日、会場は広島県JMSアステールプラザ。広島市内の市街地からは少しそれて、原爆ドームを横目に平和記念公園を潜り抜けていったところに佇んでいる。陳腐な言葉になってしまうが、この場所が近づくとどうしても身が締まるような思いになる。僕も一人の日本人だし、えもいわれぬ感情で胸がいっぱいになる。

今の世界情勢を見る限り、軽々しく「平和」というワードを口に出すことは憚られるようになってしまったが、少なくとも眼を背けて良い問題ではないと思っているし、感染症が蔓延っているといった意味でも今日のライブが滞りなく開催されていることに感謝しなければならないとふと考えた。


会場内はほぼ100%のキャパシティで開放されていたものの、少々の空席も確認できた。(この対バンで当日券が出るとは、数年前なら信じられない状況である)聴衆の持つグッズを見る限り、ビーバーとユニゾンの客層はほぼ半々、気持ちユニゾンの方が多いと感じるくらいであった。開演時間が迫る程に、会場中に両者への期待感が充満していた。


定刻の18時半に暗転し、ボルテージを一気に上げるSEが流れ始める。先攻はSUPER BEAVER。先に上杉研太(Ba.)、藤原広明(Dr.)、タオルを掲げた柳沢が入場し、SEを切り裂くようにキメを合わせて音を鳴らす。その中から今日は長い髪を下ろしたままで渋谷が入ってくる。

いつも通り、「レぺゼンポップミュージック from Tokyo Japan SUPER BEAVER と申します!」と挨拶してから楽器隊の音を止めて始まったのは、「閃光」。渋谷のアカペラ部分で持っていたタオルを落としてしまい、客席から笑いが起こるというハプニングもありながらも、会場を温めるには十分すぎる選曲だった。

後にも書くが、サビで「あっという間に終わってしまうよ」と歌う彼らからは、先のことなんて考えていない、それこそ3日後に自身のツアーの福岡公演を控えているにも関わらず、この一瞬に全てを出し切ろうとしているような鬼気迫る激情を感じる。そんな彼らに応答するように、聴衆もその一瞬を逃さぬよう、ステージに視線と意識を100%持っていかれるのだ。

その後は赤と緑の照明の対比が美しい「正攻法」。2曲目にも関わらず、柳沢の「広島、手ぇ上げろ!!」の煽りに会場中が応える様は圧巻である。

その後には「ただ年上なだけでは先輩ではなく、ちゃんと尊敬できて、かっこいい人達だけが先輩と思う、そういった意味でもユニゾンはかっこいい先輩です」と後輩バンドとして先輩へのリスペクトを見せた一方で、「今日呼ばれたのは自分達がかっこいいからだと思っています!」と、自分達のパフォーマンスに自信を見せ、万雷の拍手を浴びる。

その言葉が嘘でないことを証明するように、聞きなれたセッションから「予感」に流れ込む。以前なら聴衆が言葉で想いを飛ばしていた部分も、今では歌うことができない分、マスク越しの表情と腕の振りで想いを飛ばしていく。ステージ上での彼らの表情を見ると、どうも聴衆の想いはきちんと彼らに伝わっているようだった。

そこから曲間なしで「名前を呼ぶよ」へ。もうすでに何度も耳にしている楽曲だが、それでも毎度鳥肌が立たされる。誰もが持っている「名前」を「僕らの意味」、「命の意味」と解釈した柳沢には脱帽であり、この曲をきっかけとして今後も多くの人がビーバーの音楽に心揺さぶられるのだろうと確信した。

ここまでは言わばビーバーの「正攻法」のようなセトリだったが、ここにきて渋谷は「宏介くんに負けたくないから俺も楽器できるところをアピールします」とタンバリンを持って歌いだしたのは「赤を塗って」。イントロで歓喜のあまり飛び跳ねていた僕の前にいたビーバーのファンクラブ会員が印象的だったが、ゆらゆらと歌い上げる渋谷同様、客席にもやや穏やかな空気が広がっていく。そこから希望を歌う「歓びの明日に」へつながり、会場中が多幸感に包まれていった。

その多幸感からライブの終焉を予感せざるを得なかったが、「俺達は一分一秒に懸けている」との口上で始まった「突破口」でライブの終わりを考えていた僕は再び今、この瞬間に引き戻された。先述した通り、いくら口で一瞬の尊さを説いてもその立ち振る舞い、パフォーマンスが伴っていなければその言説は説得力を失ってしまう。ビーバーの曲に込められた数々の力強いメッセージは、ビーバー自身が人間としてかっこよく生きていこうとしているからこそ強烈な言葉となって「あなた」の胸に飛び込んでくるのだと感じる。

この「突破口」の、

正々堂々 「今」と今向き合って 
堪能するよ現実 酸いも甘いも全部
威風堂々 正面突破がしたいな
面白そうだ 歓べそうだよな
今をやめない 味わい尽くして笑おう
笑ってやろうぜ

という歌詞も、一度メジャーレーベルから戦力外通告を喰らうという経験をしたビーバーが歌うことでただの歌手、バンドが歌うよりもより強く刺さるものになる。ビーバーが「かっこいい生き方」に拘るのは自身で伝えたメッセージに責任を持つためでもあるのかと考えた。

そして最後は最新アルバムより、「東京」をプレイ。この曲に出てくる「愛されていてほしい人」のフレーズを聞いて、僕が思い浮かべた人、隣にいた主婦の方が思い浮かべた人、前にいたビーバーのファンクラブ会員が思い浮かべた人(多分隣にいた彼女だと思うが)はそれぞれ違っているはずだ。

ビーバーは分かりやすいパブリックイメージを持った言葉を並べて歌うことはしない。「東京」でも各々が思い浮かべた「愛されていてほしい人」の想いをビーバーに伝えようとしていた。これはビーバーが「あなた達」に向けてライブを行っていると起こらない現象だと思う。「あなた達」に向けて歌を歌い、同じ会場中から同じような思いを届けてもらうことよりも、「あなた」に向けて歌い、それぞれの想いを受け取り、また返していくことがビーバーにとってのライブであり、彼らなりの美学なのだと思う。

45分の持ち時間で8曲と、曲数は控えめではあったが、確かに会場中の「あなた」の心に爪痕を残したビーバー。「かっこいい後輩」として、確かに先輩にプレッシャーを与えると共に、最大級のリスペクトを感じさせる45分間であった。

セットリスト

1 閃光

2 正攻法

3 予感

4 名前を呼ぶよ

5 赤を塗って

6 歓びの明日に

7 突破口

8 東京


そして舞台転換を挟み、今回の首謀者、UNISON SQUARE GARDENの登場である。

少し話はそれてしまうが、このツアーが始まる前の2月13日のユニゾン公式のブログにて、田淵は新曲の必要性について疑問を投げかける文章を公開している。

彼は1月まで行っていたアルバムツアーでアルバムの全曲を演奏しなかったことに触れ、「今回はたまたまセットリストにフィットする部分がなかったから演奏しなかった」と述べると共に、「音楽ってそんなに最新が最高なのか?」、「100曲好きになった後の10曲がそんなすんなり大事なものになってくれるか?」と疑問を呈している。

ちなみにこのブログが投稿された日に僕は別バンドのライブに参戦しており、全18曲中14曲がアルバム曲であったライブを見た直後にこのブログを見たため、激しく共感してしまった。(もちろんそのライブは最高だったし、その回に関してはアルバム曲を全てやるのが正解だったように思える)

余談が長くなったが、その考えを世に出してから初めて回る全国ツアーで、一体どんなセットリストを組んでくるのかといった部分もかなり注目した中で今回のライブに参戦した。


いつも通りSE「絵の具」が流れ、鈴木貴雄(Dr.)、田淵、斎藤宏介(Gt.Vo.)の順に3人が入場してくる。固唾を飲んで見守る中、最初に鳴った音からは曲を判別できなかったが、各自の短いソロを回していくセッションでスタートさせた。いきなり超絶技巧を見せつけてビーバーが作った空気を一変させて繰り出したのは、「23:25」という何とも絶妙な選曲。特徴的なギターリフが鳴り響く中、観客は飛び跳ねたり、手を振ったり、聞き入ったりと各々で楽しんでいる。

「ようこそ!」と一言添えて次に奏でたのは全国ツアーでは久々感のある「リニアブルーを聴きながら」。この曲のAメロにある「無我夢中に理由は毛頭無い」というフレーズには、田淵が普段から話している、「音楽は、なにこれすげぇ 終わり。 でいい」という考え方が滲み出ていて、言葉にせずとも自身が直感的に感じた感覚を肯定する考えが表れていると読み取れる。

さらにそこから曲間なしで「何かが変わりそう」をプレイし、一度暗転。(僕はイントロで危うく叫びかけた)この時点でこのツアーはとんでもないセットリストが組まれていることを察し、声にはならずとも騒然とした雰囲気が漂っていたように思えた。


「fun time HORIDAY 8にようこそ。最後までよろしく!」と斎藤が一言挨拶してはじまったのは、「アトラクションがはじまる(they call it No.6)」。「君が満足そうに抱える常識を徹底的に壊して」と歌う通り、初めてユニゾンを見たビーバー目当てのファンはユニゾンに抱いていたイメージを、大きく取るとロックバンドのライブに対するイメージを大きく覆されたのではないだろうか。僕の近隣にいたファンの方はぽかんとしている時間が長かったように思えたが、(無理もない)楽しんでもらえていたら嬉しい。

その後に全人類に愛とチョコレートを与える「メカトル時空探検隊」と来てもう情緒がどうにかなってしまいそうである。この曲もそうだが、ユニゾンの曲は平たく言うと「ノリにくい」曲が多い。リズムやキメが変則的な曲も多く、こういった曲を意図的に作っているとなると「一体感」や「全員で作るステージ」こそが重要とされる昨今のロック界の風潮へのアンチテーゼのように思えてくる。

それから、「Catch up, latency」を挟んでやっと普段のユニゾンっぽさ(これも解釈がかなり曖昧になってしまうが)を取り戻したと思えば、その後は何年ぶりの披露かと思える「MR.アンディ」と来たものだからもう笑うしかない。田淵の言葉を借りるなら「ライブ見て爆笑する」状態である。こういったリリースされた時期が大きくことなる楽曲同士でもいざつなげてみると意外な調和を生み出すこともあるし、こういったことを田淵はブログで伝えたいのかと、普段は全く理解できない彼の思考が少しだけ分かった気がした。

ここで暗転を挟むかと思いきや、またもや曲間ゼロで斎藤が歌い始めたのは「夢が覚めたら(at that river)」。ここに関してはもう爆笑を超えて絶句してしまった。

この曲が収録されている「MODE MOOD MODE」というアルバムは、そのリリースツアーの中で唯一披露されなかった楽曲がある。それこそがこの曲であり、当時は「きっとこれから先の大事な場面で演奏するんだろうな」と漫然と思っていた。(当時は「CIDER ROAD」収録の「お人好しカメレオン」もまだ披露されていなかった。この曲はリリースから6年後の結成15周年記念ライブの1曲目に初披露されたこともこう考える要因となった)

その曲を口は悪いが、4年前にリリースされた楽曲をこの対バンツアーを構成する1曲として平然と投げ入れてくる感性はもう僕には理解ができないし、いくらブログで「演奏されていない曲もマッチする機会があれば全然これからも演奏する」と書かれたといってこのタイミングで初披露の場を作るのか、、、とただそれだけしか考えられなかった。さっきこのバンドのブレーンの田淵の思考が少しだけ分かった気がすると書いたが、やはりまた全く分からないままに戻ってしまった。

ただ、その分からなさ、何をしてくるかが読めないところがこのバンドを好きでい続けている要因であるとも思うし、これからも分からないままでいいとも思っている。


いよいよライブも終わりへ近づいていく。暗転の後、セッションを挟んで繰り出したのはこの時点での最新曲、「Nihil Pip Viper」。

あーレディージェントルメンも仲良しこよしでは
断じてないですので気安く喋るな
あいさつ代わりにワンツーアッパー放って
即座ラブリーアウトサイドステップ、たまらない!
運命共同体ってオーバーオーバー過ぎるので
耳からスパゲッティで肘で茶沸かすわ
Nihil PiP Viper が君を狙っている 逃げ切れるのかな

と、もう歌詞に意味を見出す方が難しいくらいの遊びまくった1曲。さっきまでのビーバーのメッセージ性の強い楽曲を聞いてきた後だと余計に意味が分からないし、何なら逆に深い意味があるようにすら思えてくるが、やはり、言葉を借りるならば理屈や意味合いはよく分からなくても、「何かすげぇ」のだ。それでユニゾンのライブは十分なのだ。

そして、定番の「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」。こんな変な曲が定番曲なのも可笑しい話だが、「東の空から夜な夜なドライブ」という生きている内に聞くことがあまりないであろうフレーズで踊り狂う聴衆もどうかしている。でもそれでいいのだ。投げ出しているように聞こえるかもしれないが、その一言に尽きる。

その後は「kid,I like quartet」と「君の瞳に恋してない」と会場中を幸せで包み込むようなポップな楽曲でフィニッシュ。ギターソロ中に斎藤と田淵がじゃれあういつもの光景も見られ、もう完全に普段通り、「平常運転」のユニゾンだった。

「君の瞳に恋してない」の前に斎藤は「ラスト!」と言い放ち、終わった後は「UNISON SQUARE GARDENでした。バイバイ!」とだけ話してステージを去った。45分間MCは全くなく、数十秒間の小休止を2回挟んだだけで他の時間は常に音が鳴っていた。歌詞以外に発したのは2つの単語と2つの文章だけである。

これこそがユニゾンの普段のライブであり、ユニゾンの美学である。初めにも書いた通り、彼らにとってライブとは3人がただ楽しく曲を矢継ぎ早に演奏することだ。そこに客とのコミュニケーションは存在しないけれど、一体感や全体でのノリを強要しない以上、「俺らはこうやってライブ楽しんでるけど、君はどうすんの?」と個人単位で楽しむことを要求してくる。手を上げてノッてもいいし、黙って曲を聴いててもいい。人の邪魔にならなければ、周りと違うノリ方をしたっていい。

そういった意味では、SUPER BEAVERとUNISON SQUARE GARDENが対バンすることは必然だったように思える。渋谷が毎度口にする「あなた」からも、田淵が度々口にする「君」からも見て取れるように、決して彼らは会場全体を相手取ってライブをすることはなく、一人ひとりを相手取って音楽をぶつけてくる。「あなた達」とも「君達」とも発さないのである。

アステールプラザのキャパはだいたい1200だが、1200対ビーバー、1200対ユニゾンではなく、1対ビーバー、1対ユニゾンがたまたま1200通りのパターンを以て広島で繰り広げられた、ただそれだけのことなのだ。きっと今日のライブで持った感想を来場者にインタビューしたとしたら、1200通りの全然違う答えが返ってくるのだろう。それを肯定してくれる両者のライブは、いつも背伸びもせず、緊張もせず、等身大の自分のままで臨むことができる貴重なライブだし、こういったバンドに人気が集まるのも必然だと感じた。


アンコールでは斎藤がビーバーのライブを宣伝するとともに、自身のツアーも9月に同じ会場で行うことをちゃっかり宣伝する。来週リリース(4月13日)のシングルを引っ提げて行うこのツアーまで封印しておくと思われていた今回の表題曲、「kaleido proud fiesta」をここでプレイ。久しぶりに派手なストリングスを取り入れたこの楽曲からは、タイアップ先のアニメへのリスペクトも、アニメを知らないバンドのファンが納得する要素も両方盛り込まれているように感じる。

まだ発売前の新曲で、多くのファンはこの曲に馴染むことができていないし、最近の運営の変化に戸惑っているファンも多いが、それすらもユニゾンは肯定する。「他にもいいバンドは沢山いるから、気が向いたらユニゾンの楽曲を聴いてほしい。無理に追ってもらう必要はない」(意)と以前インタビューで話していたが、そういった束縛しない姿勢が逆にこのバンドをずっと追いかけさせたくなる一因ともいえるだろう。

そして正真正銘ラスト1曲はこれまた久々感のある「桜のあと(all quartets lead to the?)」。大サビでは客電も点けられ、多幸感、大団円感を醸し出すと共に、3人の表情も本当に晴れやかだった。

斎藤は「おじいちゃんになってもビーバーとお互い舞台袖からライブを見あえる関係でいたい」と話していたが、彼らの表情を見ると本当に音楽が、ライブが、バンドが好きで仕方ないというような、何歳になってもバンドを続けたいという言葉がより強い説得力を持ったものになっているように感じた。

また、結局このセットリストを振り返ってみると、今までにリリースされた8枚のアルバムの中で、すべてのアルバムから最低1曲は披露されており、新曲と合わせても何の遜色もないほどに輝きを放っていた。新曲の必要性に疑問を呈し、過去曲の輝きを再確認するという田淵の思考が十二分に伝わるセットリストではなかっただろうか。

これからもこのバンドは自分たちの思いのままに、好き勝手活動を続けていくと思うが、それこそがファンが最も望んでいることだと彼らは分かっている。そんな彼らの次の企みは、如何に。


セットリスト

1 23:25

2 リニアブルーを聴きながら

3 何かが変わりそう

4 アトラクションがはじまる (they call it "No.6")

5 メカトル時空探検隊

6 Catch up, latency

7 MR.アンディ

8 夢が覚めたら(at that river)

9 Nihil Pip Viper

10 徹頭徹尾夜な夜なドライブ

11 kid, I like quartet

12 君の瞳に恋してない

En1 kaleido proud fiesta

En2 桜のあと (all quartets lead to the?)