記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

朝ドラ「虎に翼」の弁護士考察・第4週(戦前の刑事訴訟法)

第4週は、寅子たちがいよいよ明律大学本科に進学し、男子学生との様々なドラマがありましたが、個人的に気になったのは、実父の勾留、家宅捜索シーンです。

NHK連続テレビ小説「虎に翼」を視聴して、弁護士目線で気になったことを、毎週noteにしたためています。


戦前の刑事訴訟法

戦前の刑事訴訟法は、現在のものとは全く異なるものでした。

現在の制度では、起訴・不起訴を決めるのは検察官ですが、戦前には、「予審」という制度がありました。

戦前には、現在でいう起訴・不起訴の判断を、「予審」という手続で、裁判所(予審判事)が判断するケースが多くありました。

被疑者を逮捕(勾引)・勾留したり、家宅捜索をしたりすることも、裁判所(予審判事)の命令によって行われていました。

予審制度の問題

ドラマで詳しい解説はありませんでしたが、予審制度には、冤罪のリスクを高める問題がありました。

現在の刑事訴訟法では、起訴されるまでの捜査には裁判所は(令状を出す以外は)関与せず、起訴された後に、検察官・弁護人(被告人)それぞれの主張を聞いて、公平な立場で判断する仕組みになっています。

一方で、予審制度のあった戦前の刑事訴訟法では、予審の証拠資料がそのまま公判に引き継がれ、公判を担当する裁判官が、予審の判断に引きずられやすい問題がありました。

帝人事件

ドラマ中の事件は、(史実との違いはありますが)おそらく「帝人事件」がモデルになっています。

「帝人事件」は、いまだに真相が謎に包まれており、何者かによる「でっち上げ説」も噂されています。

「帝人事件」が作中でどう描かれるのか、展開が楽しみです。

ドラマの法律監修の細かさ

ドラマの監修の細かさが、家宅捜索シーンに現れていました。

まず、家宅捜索に来たのが、警察官ではなく検察官であった点。戦前の刑事訴訟法では、警察官の権限が今よりも小さく、家宅捜索については、裁判所(予審判事)の命令により、検察官が行っていました。

次に、検察官が発したセリフ、「勾留した!」。ん?「逮捕」ではなく「勾留」という言葉に違和感を抱いた方もいらっしゃったかもしれません。現在は、逮捕・勾留は別の手続ですが、戦前は逮捕・拘禁が1つの勾留手続の中で行われていました。細かい用語の使い方も、よく監修されているなと感心しました。

その他、戦前の令状が再現されていたことも、個人的には感心ポイントでした。

次週は公判がスタートするようですので、どんな展開になるのか、楽しみです。穂高先生のご活躍にも期待です。

事務所サイトで執筆したコラムの紹介

所属する法律事務所のWebサイトで、法律に関するコラムを定期発信しています。ぜひ、こちらもご一読いただければ幸いです。noteでは、事務所サイトでは取り上げづらい個人的見解や、日々の業務とは離れた社会問題への考察を主に発信しています。

ITベンチャーなどビジネス向けの最新テーマを主に取り上げたサイト「Web Lawyers」はこちら

身近な日常の法律テーマを主に取り上げた事務所公式サイトはこちら

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?