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「メディアとしての八百屋」旬八青果店 #マーケティングトレース

今回は、「メディアとしての八百屋」を標榜する旬八青果店のマーケティング戦略を紐解いていきたいと思います!

このキャッチコピー、個人的にすごく好きです。


旬八青果店とは?

・株式会社アグリゲート(2010年設立)が運営する青果店
・コンセプト:「地方と都市をつなぐ八百屋」
・2013年目黒で1店舗目を開業し、現在都内15店舗へ拡大中
・今後は都内を中心に更に拡大予定
・福岡・札幌・名古屋などの大都市にも出店したいとのこと

旬八青果店を知ったきっかけは冒頭ご紹介した記事なんですが、色々調べていくと、その取り組みというかビジネスモデルがほんと面白いなって感じました。

何が面白いのかというと、旬八青果店を運営する株式会社アグリゲートさんは、掲げるミッションに全ての事業戦略が紐づいているなと感じたからですね。しかも、その事業戦略がかなりイケてると個人的には思っています。

起業して、僕たちもいま事業創りしてるんですが、一番大事にしたいなって思っているのがこの、「事業がミッションにしっかり紐づいたものになっているか」という点なんです。なので、これを体現している株式会社アグリゲートさんの企業理念や事業戦略を見たときに、「やば、すごい」と率直に感じました。


同社が掲げる企業理念

Mission:未来に“おいしい”をつなぐインフラの創造

社是
:食農業界の常識を疑い、新しい経済を創造する

Vision(2021年〜)
:旬八青果店ブランドが、日本の都市の不本意な食生活を豊かにするインフラ、サービスとなっており、生産の基盤となる地方経済を活性化する1つの手段となっている。また、アグリゲートグループメンバーの生産性は高く、時間ではなく質にコミットメントしたワークスタイルで質の高い豊かな生活を実現している。持続的に成長をしさらに自走していくため、時価総額200億円、営業利益は10億円を達成している。稼いだ資金は、自社農場や地域商社を増やし、製造や販売の拠点を広げ、仕入れ拠点となるセンターを全国の主要地に増やす事に使う。

Vision(2027年〜)
:旬八青果店ブランドが、日本を含めた東南アジアの都市における不本意な食生活を豊かにするインフラ、サービスとなっており、生産の基盤となる世界の地方経済を活性化する1つの手段となっている。また、食農業界における様々なプレイヤーが高収益かつ持続的に豊かな食を届けるために必要となる基幹的な機能を提供するプラットホーム企業となっている。また、アグリゲートグループメンバーの生産性は高く、時間ではなく質にコミットメントしたワークスタイルで、世界各地で質の高い豊かな生活を実現している。時価総額1000億円、営業利益は50億円を達成し稼いだ資金は、アグリゲート自体が「未来においしいをつなぐインフラの創造」を行う食農ビジネスのプラットフォームとなり次々と起業家やビジネスを輩出するために使う。
※ 参照 https://agrigate.co.jp/about/

同社のミッションを達成する為に、どういったマーケティング戦略をとっているのか、紐解いていきたいと思います。


旬八青果店の4Pマーケティングミックスを整理

旬八青果店のマーケティングミックスがどうなっているのかを図解してみました。

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顧客起点の八百屋さん

旬八青果店はSPFモデル(Specialty store retailer of Private label Apparelの略。企画から製造、販売、までを一気通貫で行うビジネスモデル)を採用しており、商品を全国の農家さんから直接仕入れている為、店頭に並ぶ青果の値段は比較的低価格を実現出来ているとのこと。

ただ、こういったビジネスモデルであれば他でも聞いたことがありそうなんですが、個人的にすごいなと思ったのが、「地域で求められる商品を並べて販売している」という点です。

それを実現する為に超狭域ドミナント戦略を採用しているそうです。

「出店している地域で求められている商品を並べて販売している。お客さんの様子を観察し、会話をして、ニーズをつかんだ上で販売を行っている」代表・左今氏

恐らく、今後もこのコンセプトが継続されるようであれば、顧客ニーズの変化に合わせて商品群を変えて行くことが想像されるので、そうなればもはやSaaSプロダクトのようなイメージですね個人的には。店員さんはカスタマーサクセスといったところでしょうか。


旬八青果店の3C分析

上記の顧客起点の商品展開を可能にしているのが、インタラクティブで接客深度の深いコミュニケーションであると言えます。

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大手スーパーマーケット(全てではもちろんないと思います)ではセルフレジ化など生産効率化を進めていく一方で、旬八青果店はパーソナルな接客活動で顧客接触頻度を上げ、顧客ニーズを掘り起こし、それを商品群に生かすという循環を生んでいると言えます。

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この循環を実現する為に、超狭域ドミナント戦略やSPFモデルを採用し、自社農場(旬八農場)自社の配送センター(大田区)をも構えているのです。


社内の人材教育が農業領域全体へ広がり見せる

とは言え、顧客ニーズを商品展開にそのまま生かすというのは、口で言うほど簡単なことではないと思います。

そこで、同社が重要と位置付けているのが人材教育です。事業拡大もあって社内の人材教育に力を入れ始めたのが設立から6期目とのこと。

この社内教育は社外からの注目を集め、旬八大学と銘打って外部へ教育事業として展開しています。

・普段の食をもっと楽しみたいというカルチャー的な教育講座
・食や農業に関わったビジネスをしている人向けの講座

そして、旬八青果店も今後視野に入れているフランチャイズ展開(現在フランチャイズ1店)においての、教育のベースになるのではないかなと思います。


旬八青果店の成功要因

旬八青果店の成功要因は、顧客起点を徹底した商品展開を実現できるビジネスモデルを構築していることではないかと考えます。

・顧客ニーズを掘り起こすパーソナルな接客
・超狭域ドミナント戦略の採用
・直接農家さんから仕入れることでの高品質低価格な商品群
・SPFモデル採用による柔軟性の担保
・上記を可能にする人材教育

旬八青果店は、「これからの八百屋は「メディア」でなければ価値はない」と言います。そのメディアとしての役割を、価値ある情報を提供することと定義しています。価値ある情報が提供できれば、農産物に対する消費者のリテラシーが向上し、農家(農業)が守られ美味しい青果が消費者に届くという好循環が生まれる。

インターネットなどを通じて消費者と生産者とがダイレクトにつながることができる今の時代、八百屋を始め小売業は「メディア」として振る舞い、価値のある情報を提供していかなければ、その間に人がいる価値はないと考えています。それによって、結果的に農産物に対する消費者のリテラシーが向上すれば、農家を守ることにもつながり、美味しい青果が消費者の元に届くよい循環が作れると思っています。代表・左今氏

こういった、ビジョンに紐づいた事業展開をされている企業さんは本当に魅力的だなと感じます。ぜひ一度、実際にフィールドワークで旬八青果店に足を運ぼうと思います!

以上、旬八青果店のマーケティングトレースでした。最後までお読みいただき、ありがとうございました!


<参考記事>


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