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QAエンジニア の 年収が高い企業はどんな企業か?

対象読者

・     QAエンジニアとしてのキャリアを検討している人
・     QAエンジニアのとして、どのような企業に行くべきか悩んでいる人
・     QAエンジニアのキャリアを歩んでいるが、年収を上げたい人

この記事を読んで得られる情報

・     QAエンジニアの、将来的な需要についての考察を得られる
・     QAエンジニアとして年収を上げたい場合に行くべき企業の特徴が分かる

書いてる人

 元々アクセンチュアでSAPコンサルや戦略策定 Tech系スタートアップの事業開発支援をしている人です
(主なフェーズはシードからPMF超えたくらいの会社様たち)

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(最近特に読まれている記事は: アクセンチュアで入社半年で昇格した事例を整理してみた

ITエンジニアの需給予測から見るQAエンジニアの需給予測

 まずは、ITエンジニアの受給予測から全体の傾向を確認します。

 経済産業省の予測によれば、IT人材は既に25~30万人程度不足していると言われています。定義としてはQAエンジニアもこの中のIT人材に含まれており、IT人材の全体傾向を踏まえれば、同様に需要過多の状況が続いていくと考えられます。(アプリケーションをリリースするまでに必須の工程であり、リリースされるアプリケーションの数は増え続けているので)

IT人材の需給予測

 さらに付け加えると、「QAエンジニア」 になりたいという人は多くはないように思えます。(実際にプログラマや、私が協業しているスタートアップ複数社のCTOや開発部長、人材紹介会社のコメント。QAエンジニアの方々と話した実感値やテスト専門会社の㈱SHIFTの発言から)


 つまり需要サイドの傾向としては、ITエンジニア全体の流れと同様に増え続けるが、一方で供給サイドを見ると、全体の中でも平均以上に供給が少ないということが言えそうです。この意味で、IT人材の全体の中でも逼迫している職種であり、かつ、この傾向は更に悪化する可能性があると考えています。


 ここ数年で、TechCampなどのプログラミング・スクールは相当増え、ITエンジニアを目指す人は増えできていると思いますが、一方でQAエンジニアを志す人はあまり見かけません。


 この傾向は、日本経済全体や企業側目線で言えば好ましい状況ではありませんが、求職者目線でいえば需給バランスが悪く希少性が高いほうが年収を上げやすくなるので、好ましい状況であるともいえます。

 最近では、フリーランスのQAエンジニアも増えてきており複数社のQA工程やQAチームの立ち上げを行い月収120万円を稼いでいる人も見るようになりました。


 プログラミング・スクールを出たけれど、結局 実務経験を求められプログラマになれない。スカウト媒体に登録したけれど、ようやく来たスカウトもQAエンジニア だった という人もいらっしゃると思いますが、仕事をピュアに 「稼ぐ手段」 と捉えると、QAエンジニアも一考に値すると考えています。


 求職者目線で見た、QAエンジニア需給の将来像は悪くなさそうだ、ということを見てきました。


 次は、その上で、QAエンジニアとして年収を上げるのであればどのような会社であれば年収を上げやすいのかを見ていきます。

非上場・上場企業ITエンジニアの需給予測から見るQAエンジニアの需給予測

知り合いのエージェントの力も借りて、QAエンジニアの年収と従業員数をマッピングしてみました。

QAエンジニア 年収×従業員数

出所:各社 求人情報の 最低年収と最高年収を基にした平均値と従業員人数で作成。どのポジションもQAエンジニアのチームリーダー~リーダ候補。

なお、サンプルとしては22社、現在積極的に募集を出している会社を選んでもらっています。

(ちなみに、情報自体は公募情報でありここで記載しても問題はありません)


 このマッピングを使って、QAエンジニアの年収が高い企業がどのような会社なのかを見ていきます。


具体的には、


「企業規模が大きいほど / 従業員人数が多いほど 年収は高いか?」


「上場企業であれば年収は高いか?」


という点を見ていきます。

企業規模が大きいほど / 従業員人数が多いほど 年収は高いか?

 20社程度のサンプルですが、実際の数値を見てみると、企業規模が大きい / 従業員人数が多いからといって、年収が高いわけでもないことがわかります。


 横軸が従業員人数ですが、右に行くに従い、給与も伸びるのかと思いきや、特にそのような関係を見出すことはできません。


 逆に従業員人数が少なくとも、年収が高い企業も多いことがわかります。黒の破線より上に位置し、かつ、左上の象限に位置する会社群がそれです。


上場企業であれば年収は高いか?

次に、上場企業であれば年収は高いか?という点を見ていきます。


グラフを見ると、上場企業は、概ね年収600~650万円程度をだす企業が多いようです。


22社サンプルを取った中では


「平均の650万円よりも多少低い」


という結果であり、上場企業だから年収は高い とは言えなそうです。


それよりも、上場企業の年収帯は、概ね年収600~650万円 の範囲にとどまっていてバラツキは少ないほうという点が目立ちます。


なぜ上場企業のQAエンジニアの年収は似通っているのでしょうか?


この点を次は見ていきます。


上場企業の年収が概ね似通っている理由


上場企業の年収が概ね似通っている理由としては、以下が理由といえます:


①:上場企業になると、企業の知名度が上がり 年収だけで 魅力づけする必要がなくなる


②: 他社企業(特に有名・上場企業)意識して似たような給与レンジになる

(給与レンジはエージェントなどを通じてこの情報ははいってくる)


③:上場企業になると、等級・評価・報酬の制度が厳格に整備され思い切ったオファーができなくなる


④:以上の理由から、(元々は高かったかも知れない年収も)全社平均化される

 ③に関しては、部署・職種 をまたいで「全社 画一の等級」 が適用されているため、適切な給与のオファーを出すよりも、社内制度および事情を優先してしまうということがありそうです。


 これはなぜそう考えるかというと、僕がこのような相談を実際に受けているからです。

IPOを控えており 等級・評価・報酬 制度を整えた会社様からこのような相談を受けています。


 1~2ヶ月前に受けた相談でも、「等級・給与・報酬 制度を設定したが、給与レンジが硬直的になってしまい採用に悪影響がでている」 といったものでした。


 本来、等級・評価・報酬 制度とは、社員のモチベーションを高めたり、リテンションを下げるために適切な評価と報酬がなされることを目的として、制度を設計するためにあります。(つまり、目的→制度という流れ)


 しかしながら、このような事情に陥る場合は、ひとまず制度を作ることが先行してしまうなどもあります。まとめると以下のような要因が考えられます。


 ・全社 画一の等級を設定してしまう(職種別・部署別などで設定しない

 ・既存社員の全社平均的な給与レンジだけを参考にして制度を設定する
外の労働市場に目を向けない

 ・上記に至る背景としてそもそも給与制度を設定する ことが目的になっており、目的を見定めていない

 よって、一般的に考える 上場企業であれば、もしくは、従業員数が多ければ給与が高くなるのか? というと 「必ずしもそうではない」 というのが実態になります。(もちろん、逆に言えばしっかりと職種別の考慮と、外部労働子市場に目を向けて給与を考える企業も増えてきてはいますが)


従業員数が少ないが年収が高い企業の特徴

 最後に給与が高い企業群であり、このグラフの中で特徴を見いだしやすいグループ「従業員数が少ないが年収が高い企業」 を見ていきます。


 下の図のAに属するグループは、従業員数が少ないが年収が高い企業群です。


このグループの特徴は端的に言ってしまうと 「VCから資金調達をしている会社」 です。

出所:各社 求人情報の 最低年収と最高年収を基にした平均値と従業員人数で作成。どのポジションもQAエンジニアのチームリーダー~リーダ候補。

出所:各社 求人情報の 最低年収と最高年収を基にした平均値と従業員人数で作成。どのポジションもQAエンジニアのチームリーダー~リーダ候補。


先程、上場企業のグループに対して言ったことと逆になりますが、


企業の知名度が低いため 年収や条件をメインにして 魅力づけする必要がある


等級・評価・報酬の制度などが厳格に整備されていないため思い切ったオファーができる


 というのが、従業員人数が少ないにも関わらず、年収が高い企業の背景にあります。


 しかしながら、年収や条件をメインにして 魅力づけする というのは 資金に余裕がある企業でないとできません。実は、これらの企業群を見ると、どの企業も数億円~数十億円の資金調達をしていました


 言われてみれば当然かもしれませんが、採用は先行投資です。「即戦力」と言っても、採用した人材が企業としてお金を稼ぐために活躍しはじめるのは、実際には数ヶ月かかるでしょう。


そのような先行投資的な採用の性質にもかかわらず、他社よりも高い金額を出して積極的に採用している企業は、採用の喫緊性や重要性が他社よりも相当高く、かつ資金があるからこそからこのような行為をしているのです。


 つまり、具体的には、VCから資金調達をすれば、資金調達をする際に説明をした事業計画の達成を求められることになり、調達した資金を積極的に投資して組織の拡大をしていくわけです。

 各領域の人材が確保できなければ、計画に支障をきたすため、企業側としてはオファー金額を釣り上げてでも人材を採りにきます。


つい先日聞いた例も、

QAエンジニアが不足しており開発はできているが リリースまでもっていけない」 という話を聞きました。


このような状況の場合、採用の喫緊性は当然高くなり 「条件を積み増ししてでも採用する」という方針もでてきます。結果として、「従業員数が少ないが年収が高い企業」が誕生することになるのです。


従業員数も多くて年収が高い企業の特徴


最後に、従業員数も多くて年収が高い企業の特徴を見ていきます。


 全般的には、従業員人数 と 給与の相関を見出すことはできませんでした。


 しかしながら、従業員人数が多く、かつ、給与が高い企業もあります。以下の図のB の企業群がそのような企業群です。

出所:各社 求人情報の 最低年収と最高年収を基にした平均値と従業員人数で作成。どのポジションもQAエンジニアのチームリーダー~リーダ候補。

 この企業群の特徴はなんでしょうか。それは利益率の高さといえるでしょう。


 1社はコンサルティング・サービスを主体とする会社であり、もう1社は比較的歴史が長いグループ企業の関連するゲーム会社です。


 先行投資的なフェーズを除けば、給与は、売上から原価を取り除いた売上総利益 / 粗利から捻出する必要があります。その意味では、利益率が高いコンサルティング会社やゲーム会社、金融などは給与が高い傾向があります給与との相関でいえば、従業員規模よりも、これら業界や利益率のほうが相関は高いのではと考えます。


まとめ

まとめにはいります。

・ITエンジニアの需給予測と定性情報から見て、QAエンジニアの需給予測は良さそうだといえます

・QAエンジニアとして年収を上げていきたいのであれば:

 -資金調達をしている会社で、給与を出し惜しみしない会社を見てみる
 -もしくは利益率が高い業界の企業を見てみる
 -安定性は上場企業のほうが一般論として高いのは確かなので、安定性も手に入れたいなら、上場前に参与して、給与制度が画一化する前に入社する

 -学び: 特に会社規模や上場 / 非上場 と年収の高さは関係ないように見える(むしろ、上場企業のほうが、思い切った年収の提示はしにくい傾向にある)

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