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暮らすこと

電車が来るのを待っていた。別の電車が到着して、客を降ろす。足元のおぼつかなさそうなおじいちゃんがちょうど電車に乗り込むところだった。見ると手元には家電量販店の大きな紙袋。中から顔をだすのは、くるくると筒状に巻かれたカレンダー。

おじいちゃんは毎年12月が近づくと、カレンダーを買いに行く。リビングに掛ける大きくて見やすいカレンダー。そして、大晦日。掃除をして、おせち料理をつくって、忙しく動き回るおばあちゃんの脇で、おじいちゃんはせっせとカレンダーを取り替える。壁に残った日焼けの跡に合わせて丁寧に。そして、年が明けて1月1日。ゆっくりと目覚めたおじいちゃんは、食卓いっぱいのお雑煮の香りを吸い込みつつ、カレンダーの表紙を破るのだ。

まあ、完全に妄想である。ただ、きっとカレンダーを買ってきて取り付ける、そしてめくるという役割をおじいちゃんは毎年毎年ずっと担ってきていて、そうやって同じ暮らしを丁寧に続けているんだろうなと、妄想させる1コマだった。

1人で暮らすようになって、「毎日普通に暮らす」を続けることがいかに難しいかを痛感させられた。同じ時間に起きて、顔を洗って、歯を磨いて、朝ごはんを食べて、着替えて、電気を消して、出勤する。帰って、着替えて、夜ごはんを作って、片付けて、少しテレビを見て、お風呂を掃除して、お風呂に入って、最低限のスキンケアをして、noteと日記と家計簿をつけて、目覚ましを5つセットして、同じ時間に眠りにつく。家事が大変とかじゃなくて、ただただ同じことを続けるという難しさ。すぐにどこかサボりたくなるし、ずっと同じに不安になる。

そんな、「毎日普通に暮らす」を異国の地・リヨンでも続けてみたというエッセイを読んだ。

人生はどこでもドア: リヨンの14日間 https://www.amazon.co.jp/dp/4492046372/ref=cm_sw_r_cp_api_qGr.BbSD8B3S4

筆者の稲垣さんは、今まで海外旅行が苦手だったという。それは、「せっかくだから」大して興味のない美術館にいったり、現地ブランドのショッピングを楽しもうとしていたから。そこで、自分が最も心を砕けるのは何かと考えた結果「生活」に行き着いた。そんなわけで、「リヨンで日本と同じように暮らす」という海外旅行がスタートする。
日々の出来事が日記のように綴られていくのだが、異国で同じように暮らすってすごく難しい。暮らしを遂行すること自体に加えて、自分の精神衛生を保つこと。つまり元気に暮らすって、そう簡単に手に入るものではないんだなと。

以前1週間ほどメキシコに留学している友人を訪ねて行ったことがあった。文化や価値感の違いに触れることは、とても刺激的で二度と忘れられない経験になったけど、暮らしやすいかと言われればそんなことは決してなかった。後半は早く日本に帰りたい気持ちでいっぱいだった。
自分の暮らしを立ち上げるって難しい。だけど、アウェイで自分の場所を作れたらそれは財産になるだろうな。自分は何が譲れなくて、思っていたよりもこれは大丈夫で、という気づき。自分を知ることができそう。

それにしてもヨーロッパ圏で暮らすってどうしてこんなに魅力的なんでしょうね。ロンドンにひとり旅したい欲がむくむくと。

#毎日更新 #毎日note #人生はどこでもドア #稲垣えみ子

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